特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

最期に向かって(公開コメント版)

2023-05-31 08:11:52 | 遺品整理
“生”と“死”は常に隣り合わせ、表裏一体。
病気、事件、事故、戦争、天災などで、日本や世界のあちらこちらで、毎日毎日、多くの命が失われている。
そして、それを伝えるニュースも日常に溢れている。
しかし、生きている我々は、“死”を縁遠いもののように錯覚している。
それが生存本能というヤツなのかもしれないし、そうしないと前向きに生きられないのかもしれない。

そうは言っても、“死”は、病人や高齢者だけにかぎったことではなく誰にでも訪れる。
ある日突然か、自分が想像しているより早いか、自分が覚悟しているより遅いか、たったそれだけの違いがあるだけで否が応でも。
一般的には、健康長寿をまっとうし、終活をキチンと済ませた上で“コロリ”と逝くのが理想と言えようか。
ただ、多くの人が思い知らされているように、人生なんてものは、そんな生易しいものではない。
人生はもちろん、死期も死に方も、なかなか思い通りにはいかない。
そんな荒道を、どれだけ頑張って、どれだけ辛抱して歩いていくか、そして、どれだけ真剣に最期に向かっていくか、それが“生”の課題なのかもしれない。

遺品整理の相談が入った。
声から判断するに、電話の主は老年の女性。
「身内が亡くなったので、部屋の家財を処分したい」とのこと。
そうなると、まずは、現地調査が必要。
その上で、見積金額と作業内容を提案することになる。
私は、そのことを説明し、私と女性 双方の都合を突き合わせて、現地調査の日時を定めた。

約束の日・・・続きはこちら

笑顔の向こうに(公開コメント版)

2020-05-06 09:15:06 | 遺品整理
ぬけるような青空、心地よい春風、まぶしいくらいの新緑・・・
5月に入って、時折汗ばむくらいの、この時季らしい暖かさがやってきた。
このまま10日まで休暇の人もいるのかもしれないけど、とりあえず、今日はGWの最終日。
例年通りのGWなら、観光地・レジャー施設・繁華街は大賑わい。
連休とは薄縁の私でも、世の中の休暇気分のお裾分けをもらうことができて、少しはのんびりした気分が味わえる。

しかし、今年は一味も二味も違う。
今年は、GWならぬ“SHW”(ステイホームウィーク)。
緊急事態宣言も延長され、遊ぶ場所は軒並み休業で、外出自粛はもちろん他都道府県への移動も事実上制限されている。
こういう局面になっても自制できない連中のことはさておき、良識ある?私にはモラルをもった行動が求められる。
そうはいっても、自制心のある大多数の人の中にも、GWの過ごし方に悩み、“ステイホーム”しきれず、屋外の散策等に出かけた人も少なくないのではないだろうか。

“三密回避”の啓蒙がすすんだ反面、“密が三つ揃わなければ大丈夫”“屋外なら大丈夫”といった誤った認識も広がったのではないかと思う。
だから、人々は公園や海に出かけて平気で遊べるわけ。


見えない敵(公開コメント版)

2020-04-30 09:13:17 | 遺品整理
今日で4月も終わり。
本来なら穏やかなはずの春暖はどこへやら、今月も激動のひと月となった。
流れるのは厳しいニュースばかりで、世の中の空気は重い。
目に見えるほどの明るい兆しもなく、暗雲はどこまでも垂れこめている。
そこへもってきて、私は、安酒で誤魔化せるほど能天気な性格ではなく、なかなか明るい気持ちになれないでいる。

そんな今月中旬のこと。
私は、仲間4人と、とある民家に向かった。
現場は一般的な木造二階一戸建、築年数は50年くらいか。
空き家になってから、そう時間が経っていなかったにも関わらず、家屋は著しく劣化。
室内もまた、結構な傷みが出ていた。

頼まれた仕事は家財撤去、依頼者は亡くなった住人の遺族。
「遺族」といっても、子や孫ではなく、ちょっと複雑で薄い関係。
家財や家屋はもちろん、故人にも特段の思い入れはないようで、非情にも見えるくらい冷淡。


図々しいヤツ(公開コメント版)

2019-05-06 09:04:01 | 遺品整理
今日で大型連休もおしまい。
十連休となると、ただの大型連休じゃなく“超大型連休”だ。
とはいえ、やはり私には関係なかった。
特に多忙だったわけではないけど、何だかんだと仕事があり休んでいるヒマはなかった。
結局、この十日間、一日も休みをとらないまま終わってしまった。
やるべき仕事があるのに休暇をとるなんて図々しいマネはできない小心者なのである。

でも、なかなか楽しい十日間だった。
世の中の のんびりした雰囲気は格別だった。
繁華街や行楽地付近では人々が休暇を楽しむ姿が多く見受けられ、心が和んだ。
また、郊外に行けば、車通りや人通りが少なく、慌ただしい日常にはない静けさがあって、これにも心が癒された。
連日、高速道路のレジャー渋滞もスゴいことになっていたけど、これもまた社会が平和であることの証でもあり、ほのぼのするものがあった。

ともあれ、やはり十連休は長い。
ひと月の三分の一なわけで、週休二日の場合、通常勤務日数の半分近い日数。
暑くなりはじめた気温も手伝って、休み明けで出勤する際の倦怠感はハンパなさそうだ。
気の合う者同士で笑顔の想い出がたくさんつくれた反面、楽しみにしていた休暇が終わった寂しさと、懐の寂しさが重なって、ちょっと元気をなくしている人も少なくないではないか。
想像すると、十連休できた人のことが羨ましくもあり、少し気の毒にも思える。

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桜と亀(公開コメント版)

2019-04-08 07:04:42 | 遺品整理
寒い冬が終わり、暖かな春がやってきた。
卒業・入学・転勤・就職等々、何かが終わり、何かが始まる・・・春は色んなことが新たになる。
そしてまた、今年も、桜が咲き、また、散ろうとしている。
晴れ晴れとした気持ちであれば何よりだけど、後悔と不安を胸に、曇り気味の気分で桜を見上げている人も少なくないのではないだろうか。
私の場合、永年、新年も新年度も関係ない仕事をしているので、その辺のところはかなりのっぺりしていて、フレッシュな気分も湧いてこない。
ただただ、極寒の冬を越えた安堵感と暖かな春に迎えられた安心感に、小さな幸せを覚えている。

人の気分を落とす大きな要因は「過去に対する後悔」と「未来に対する不安」だという。
かくいう私自身、充分に思い当たる。
後悔と不安は、想えば想うほど気分を落としていく。
「考えても仕方がない」とわかっていても、壁に突き当たったとき 何かにつまずいたとき 思い通りにならないとき等、その想いは、自分の弱さにつけこんで頭をもたげてくる。

ただ、幸いなことに、例年 見舞われる冬鬱は軽症で済んだ。
相変わらず、休暇らしい休暇はとれていないけど、何だかんだとやるべき仕事があり、知らず知らずのうちに気が紛れていたのかもしれない。
もちろん、そんな生活は疲れるけど、鬱々とふさぎ込んでいるよりはよっぽどマシ。
身体は楽じゃないけど、その方が精神は楽。
そうは言っても、歳のせいだろう、時間がなくなってきたこともあり、“モタモタしているヒマはない”と焦って空回りしてしまうことも少なくない。

どちらにしろ、過去は変えられない。
で、後悔も消せない。
しかし、未来は変えられる。
不安を小さくすることはできる。

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人生上々(公開コメント版)

2017-11-30 09:00:47 | 遺品整理
出向いた現場は、郊外の住宅地に建つ有料老人ホーム。
特別養護老人ホーム等とは違い、そこに入所するにも そこで暮らすにも ある程度のお金がかかる。
高級ではなくても、軽費型であっても、相応の費用がかかる。
つまり、ある程度の経済力がないと、入所することはできない。
満額の年金+αが必要。
となると、それが叶わない人もいるわけで・・・
立派な造りの建物を見ながら、私の脳裏には、自分の将来に対して一抹の不安が過った。

まだ少し先のことだけど、私も、“五十”という節目の歳が近くなっている。
「俺が五十!?・・・五十って・・・若くないどころか、もうじき爺さんじゃん・・・」
頭では年齢を受け入れていても、心のどこかでそれを拒否している私。
まだ充分に若いつもりでいる自分がどこかにいるからだろう、四十代を迎えたときよりも、大きなショックと重い悲壮感を抱えている。
同時に、常々、“死”を意識して生きてきた私だけど、そのリアルさが増し、より身近に感じるようになってきている。
「俺の人生、もうじき終わるんだなぁ・・・」
「俺、もうじき死ぬんだなぁ・・・」

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Enjoy life(公開コメント版)

2017-05-07 09:00:19 | 遺品整理
楽しかったGWも今日でお終い。
長い人は九連休だったらしい。
連休なんて私には縁がないけど、それでもGWっていいもの。
休暇やレジャーを楽しむ人々の笑顔に、平和・平穏な世の中を見ることができるから。
自分が労苦していたとしても、それだけで心は和む。
しかし、楽しい時間って過ぎるのがはやい。
アッという間に、いつもの日常に戻ってしまう。

春もまた短い。
穏やかに過ごせる季節も終わりが見えてきている。
ついこの前まで冬の寒さが残っていたのに、もう、このところは初夏が感じられるような陽気が続いている。
酷暑の夏がくるのも時間の問題。
だからこそ、この春を楽しみたい。
青い空、白い雲、新緑の樹々、色とりどりの花々を愛でては、灰色に覆われがちな心を楽しませている。

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無才凡人(公開コメント版)

2016-12-31 09:03:14 | 遺品整理
「怪しそうな人が来るんじゃないかと思ってました・・・」
依頼者の女性二人は、そう言って、気マズそうに笑った・・・・・


知人を介して、現場の調査依頼が入った。
依頼の内容は遺品処理の見積り。
訪れた現場は、郊外の住宅地に建つ古いマンション。
依頼者は、二人の初老女性。
二人は姉妹で、亡くなったのは二人の姉、三姉妹の長姉。
間取りは一般的な3LDK。
一人で暮すには広すぎるくらいの部屋だったが、夫に先立たれ子がなかった故の一人暮らしだった。

故人は老齢となった頃、癌を罹患。
ただ、高齢者特有の病状で、その進行はかなり遅く、病とは長い付き合いとなっていた。
そうは言っても、病状は少しずつ進み、晩年は、ほとんど病院生活。
そんな故人は、自分の死期を悟り、少しずつ家財を片付け始めた。
それは、“自分の後始末はできるだけ自分でしたい”との意志と、“残される親族の負担を少しでも軽くしておきたい”との配慮からくる故人なりのケジメだった。
だから、残された家財の量も多くはなく、室内は生活感がないくらい整然としていた。

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特別な日(公開コメント版)

2016-12-01 07:26:17 | 遺品整理
このところの私、色々と弱っているため体調を崩したネタが多い。
体調が悪くても頑張っていることを自慢しているみたい?だけど、無論、そんなつもりはなくない。
それはさておき、今度は風邪をひいてしまった話。
この前の日曜から喉が少し痛み始め、次第にその痛みはヒドくなっていき、翌月曜の夜になると唾を飲み込むのも躊躇われるほどのツラい痛みに。
そんな具合だから、夜中もしょっちゅう目が醒める。
おまけに、汗をかくくらいの熱がでてしまい、熱いやら寒気がするやら。
ただでさえ目眩でヨロヨロしてるのに、更に、倦怠感まで加わって、結構 大変。
それでも、体調不良にかこつけて、むやみやたらにゴロゴロ・ダラダラするのは、逆に、心身によくないから、“よく食べ よく動き よく寝る”の生活を心がけている。

何はともあれ、今日から12月、何かと慌ただしくなる師走に突入。
桜や新緑を愛でたのは、ついこの前のような気がするのに、もう冬。
それまでは寒暖を繰り返していた気温も、下降の一途をたどりはじめたよう。
先月24日、季節はずれの雪が降った日を境に、寒さも厳しくなってきているように感じる。

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椅子とりゲーム(公開コメント版)

2016-03-22 08:45:47 | 遺品整理
“椅子とりゲーム”
子供の頃、やったことがある人は多いと思う。
頭数より少ない椅子を並べ、その回りを音楽に合わせてグルグルまわり、合図とともに座るってヤツ。
競い争い、最後まで残るのが、このゲームの目的と娯楽性。

当然、ゲームの途中で、一人一人、脱落者が生まれる。
生き残るには、相手を押しのける必要がある。
時に強引に、時に乱暴に、そして、奪い取ることが必要なときもある。
そうして、最後まで座り続けることができた者が最終的な勝者となる。
私だけかもしれないけど、何故だか、この遊びは、負けたときに独特の寂しさを覚え、勝ったとしても独特の切なさを覚える。
結局のところ、独特の虚無感を覚えるため、私のとっては、あまり楽しい遊びではなかったように記憶している。

大人になって社会にでると、また別の“椅子とりゲーム”をやるハメになる。
そう・・・朝夕の満員電車だ。
多くの人が座りたいのに、限られた人しか座れない。
車内は、冷静を装った熱気と緊迫したムードに包まれる。

通勤時間帯、始発駅でもないかぎり、乗ってすぐ座れることなんてない。
何駅が通過して、先客が降りて席が空かないと座れない。
そのためには、まず、座席の前に立つ必要がある。
ドア付近や通路に立っていては、立つ客と入れ替わって座ることなんてできないから。

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