特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

尻拭い(公開コメント版)

2020-05-30 08:35:01 | 孤独死
ある日の朝、見知らぬ番号で私の携帯が鳴った。
「“とても良心的な方”ってきいたものですから・・・」
「実際にお仕事を頼むことになるかどうかわからないんですけど・・・」
「相談だけでも大丈夫ですか?」
声の主は、年配の女性。
以前から懇意にしてくれている人の紹介での、仕事の問い合わせだった。

人には人それぞれの生き様があり、人生には人それぞれのドラマがある。
そして、それをじっくり聴くのが嫌いじゃない私。
下衆な野次馬根性もあるけど、それだけじゃなく、自分にとって糧になることも多いから。


自制の時世(公開コメント版)

2020-05-24 07:38:34 | その他
4月7日に緊急事態宣言がだされてから、はや一か月半余が経つ。
そして、5月14日には、多くの地域で宣言が解除された。
同じく、5月21日には関西圏でも。
苦境に喘いできた人々にとっては、「長いトンネルの出口が見えてきた」といった感じだろうか。
私がいる首都圏一都三県でも、解除が期待されていたが、結局、それもなし。
それを象徴するかのように、昨日午前中までの数日間、空も記録的な雨曇が続いていた。
しかし、判明している感染者数の明らかな減少が「遅くとも月内には解除されるだろう」といった憶測を呼び、14日を機に、何かよくないものに誘惑されているかのように、人々の気が緩みはじめたような気がする。
しかも、明日には宣言が解除される見込みだそうで、それ以降の人々のハジケぶりが心配になる。
 

隣人愛(公開コメント版)

2020-05-18 08:59:06 | 腐乱死体
「いや~・・・まいった!夜も眠れなくてね・・・」
時は真夏の昼下がり、場所はマンションの共用通路。
私の傍に立つ男性は、深い溜息とともに葉巻タバコの煙を吐き出した。


現場は街中に建つマンション。
ほとんどの間取りが1Rまたは1DK、ありがちな“投資用マンション”。
部屋ごとにオーナーがおり、住人のほとんどが独居の賃借人だった。

その一室で、住人が孤独死。
暑い季節も手伝って、遺体はヒドく腐敗。
ベランダから玄関から、隙間という隙間から異臭は漏洩し、どこからどう出たのか ウジやハエまで室外に進出しているような始末だった。

「まいった!眠れない!」


隣人哀(公開コメント版)

2020-05-12 08:57:18 | 腐乱死体
「誠意をみせろ!誠意を!!」
男性は、私に向かって大声をあげた。

ことの発端はこう・・・
とあるアパートの一室で、高齢の住人男性がひっそりと孤独死。
放置された日数は少なくはなかったが、冬の寒冷の中で腐敗速度は低速。
遺体は、膨張溶解ではなく乾燥収縮。
異臭は発生してはいたものの、それは「腐乱死体臭」というより、高齢者宅にありがちの“尿臭”にちかいもの。
私からすれば“ライト級”・・・いや、“ストロー級”、ホッとできるくらいの現場だった。

故人の部屋は独立した角部屋。
アパートの構造上、隣室との間には、共用階段が挟まれていた。
つまり、壁一枚で隔てられた隣室はないということ。
しかも、室内の異臭は軽度で外部漏洩はなく、近隣に迷惑がかかっているというようなことはなし。
それは、不動産管理会社の担当者も現場に来て確認していた。


笑顔の向こうに(公開コメント版)

2020-05-06 09:15:06 | 遺品整理
ぬけるような青空、心地よい春風、まぶしいくらいの新緑・・・
5月に入って、時折汗ばむくらいの、この時季らしい暖かさがやってきた。
このまま10日まで休暇の人もいるのかもしれないけど、とりあえず、今日はGWの最終日。
例年通りのGWなら、観光地・レジャー施設・繁華街は大賑わい。
連休とは薄縁の私でも、世の中の休暇気分のお裾分けをもらうことができて、少しはのんびりした気分が味わえる。

しかし、今年は一味も二味も違う。
今年は、GWならぬ“SHW”(ステイホームウィーク)。
緊急事態宣言も延長され、遊ぶ場所は軒並み休業で、外出自粛はもちろん他都道府県への移動も事実上制限されている。
こういう局面になっても自制できない連中のことはさておき、良識ある?私にはモラルをもった行動が求められる。
そうはいっても、自制心のある大多数の人の中にも、GWの過ごし方に悩み、“ステイホーム”しきれず、屋外の散策等に出かけた人も少なくないのではないだろうか。

“三密回避”の啓蒙がすすんだ反面、“密が三つ揃わなければ大丈夫”“屋外なら大丈夫”といった誤った認識も広がったのではないかと思う。
だから、人々は公園や海に出かけて平気で遊べるわけ。