特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

Flight ~母の苦悩(後編)~ (公開コメント版)

2009-03-28 10:12:39 | Weblog
「なんで私が、こんな目に遭わされなきゃいけないんですか!?」
大家は、故人を罪人扱い。
母親のことも、共犯者のこどく思っているようだった。

「最後に、御祓いもキチンとやってもらった方がいいでしょ!?」
顔は担当者に向いていたが、その声は、母親と私にもシッカリ聞こえる大きさ。
明らかに、母親に対するあてつけだった。

「とにかく、今日中にニオイだけでも何とかして下さいよ!」
大家は、最後までハイテンション。
吐き捨てるようにそう言い残すと、後姿に肩を怒らせて立ち去った。

「じゃ、そういうことで・・・」
担当者は、みえみえの逃げ腰。
〝あとはヨロシク!〟とばかりに、自分の仕事を私に押しつけて去って行った。

残されたのは、私と母親と汚部屋・・・
そして、〝夏臭や、強者どもが夢のあと〟のような呆然とした空気・・・
私と母親は、何をどう話せばいいのか、何からどう手をつければいいのかわからず、しばし沈黙。
私は、気の利いた言葉が見つからず、ただ、母親が口を開くのを待つしかなかった。




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Flight ~母の苦悩(前編)~ (公開コメント版)   

2009-03-22 16:55:39 | Weblog
依頼者は、中年の女性。
固い表情に女性の緊張も察したが、私に対して愛想は一切なく、正直なところ第一印象はいまいち。
また、部屋の状況や故人に関することはほとんど話さず、とにかく、現場調査を急ぐよう促してきた。

現場は、小規模の1Rマンション。
私は、女性の要望を汲んで、そそくさと現場に入室。
玄関を開けると、目の前には靴を脱く必要がないことが明白な汚部屋。
土足に慣れた私は、抵抗なく靴のまま上がり込んだ。

「やば・・・」
室内には、嗅ぎ慣れた異臭が充満。
ただ、その濃度は極めて高く、素人が嗅いだら、何のニオイかも分からないまま卒倒するであろうレベル。
慣れたニオイと言っても鼻を塞がない訳にはいかず、私は、首にブラ下げていたマスクを急いで装着した。

「これかぁ・・・」



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Fight ~父の苦悩~(公開コメント版)

2009-03-17 14:44:41 | Weblog
依頼者は、中年の男性。
固い表情に、男性の緊張が伺えたが、私に対する物腰は柔らかく、印象は良好。
私も、第一印象を意識して、似合いもしない柔和な顔をつくった。

現場は、一般的な1Rアパート。
簡単な挨拶を交わして後、我々は現場に入室。
靴を脱いだ男性に習って、土禁に不慣れな私も靴を脱いだ。

室内は、嗅ぎ慣れた異臭が充満。
ただ、その濃度は極めて低く、素人が嗅いだら、生ゴミや排水等の生活悪臭と勘違いするであろうレベル。
鼻を塞がない男性に合わせて、私も、マスクを首にブラ下げたままにしておいた。



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知らぬが仏・知らぬは放っとけ ~続・バスタイム~ (公開コメント版)

2009-03-11 09:40:46 | Weblog
しばらくの時が経ち、その現場のことを忘れかけていた頃、依頼者の女性から会社に電話が入った。
例によって、事務所に不在がちな私は、その報を外で受けた。
そして、あの汚腐呂の画を頭に浮かべながら、〝今頃、何の用だろう・・・何かあったかな?〟と、少々不安な気持ちが湧いてきた。

「先日は、お世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ・・・」
「あれから、不動産屋さんに見てもらいまして・・・」
「はぃ・・・それで、何かありました?」
「えぇ・・・それで、ちょっとお願いがありまして・・・」
女性は、始めから低テンション。
その口はかなり重そうで、そこから、事後処理の難航が感じ取れた。

「何か、問題を指摘されましたか?」
「いえ・・・御陰様で、特に何も言われてはいないんですけども・・・」



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バスタイム(後編) (公開コメント版)

2009-03-05 17:45:39 | Weblog
「この件は、まだ不動産屋に言ってないんですよ・・・」
「え!?不動産会社は、知らないんですか?」
「はい・・・言わない方がいいですよね?」
「ん?」
「そうしよ・・・そうします!」
「え?」
「もちろん、黙っててくれますよね!?」
「は?」
それを聞いた私は、その突拍子もない考えに意表を突かれ、言葉を詰まらせた。



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バスタイム(前編) (公開コメント版)

2009-03-01 11:14:53 | Weblog
今日から三月。
東京では、ここ数日、曇雨が続いているが(一昨日は、雨混じりに初雪が降った)、今日もまた曇空。
私の気分を代弁するかのような空の下で、三月がスタートだ。

そんな年上旬・・・
〝一月は行く、二月は逃げる、三月は去る〟と言われているけど、今年に関してその感覚はない。
往々にして、充実して楽しい時間は短く感じるものたが、一月も二月も、充分な長さを感じたから。
ということは、私にとってこの二ヶ月は、いまいちなものだったのかもしれない。
ただ、その原因にコレといった心当たりはない。
しいて言えば、食欲不振と酒欲不振くらいか・・・
冬鬱は毎年のことだし、つまらないことに頭を悩ませたり・休暇不足で疲労困憊に陥るのは年中だし・・・
温度低めのぬるま湯にダラダラ浸かって、時を空費したような感じがしている。




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