特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

人の器(公開コメント版)

2015-09-30 10:53:08 | 特殊清掃 消臭消毒
今回は、前回の関連。
前回は遺族に焦点をあてたものだったが、今回は階下の住人に焦点をあてる。


アパート二階の故人宅が極めて悲惨な状態であったことは前回記した通り。
悪臭は下の部屋にまで漏洩し、ウジもまた発生していた。
普通なら、そんな状態の部屋にいられるはずはない。
多くのケースでは大騒ぎしたうえ即座に部屋を出、ホテル・親戚宅・友人知人宅などに避難する。
しかし、この部屋の住人は違っていた。
住人は高齢の女性で、故人同様、もう長くこのアパートに暮していた。
女性は、悪臭やウジが発生して難儀していることを大家に伝えただけで、無用に騒ぐこともせず、どこかに避難するようなこともなかった。
そうして、遺体発見から特掃に着手するまで数日もの間が空いていたにもかかわらず、自室にとどまり続けていた。

大家は、この地域に何軒もアパートを持つちょっとした資産家。
そうはいっても、偉そうな態度をとることもなく、目下の私にも礼儀正しく接してくれた。
そんな大家は、下階の住人に、
「別のアパートに空室があるから、一時的にでもそこへ越したら?」
「かかる費用は私が負担するから」
と、一時避難をすすめた。
それでも住人は、
「しばらく我慢すれば悪臭もウジ・ハエもいなくなるわけだし・・・」

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ささやかな抵抗(公開コメント版)

2015-09-23 09:47:56 | 特殊清掃
現場は、木造の古い二階建アパート。
その二階の一室で住人が孤独死、腐乱。
周囲には異臭が漏洩し、窓の内側には無数のハエ。
更には、階下の部屋にまでウジが発生していた。

依頼してきたのは不動産管理会社。
「大至急!」と言われるものとばかり思っていた私は、気を高ぶらせた。
ただ、実際はそうではなかった。
不動産会社としては、一刻も早く部屋の始末に取り掛かりたかったのだが、遺族がそれを許可せず。
周囲に異臭や害虫が発生している状況にもかかわらず、遠方から来る遺族の都合で、現地訪問の予定はそれから数日後となった。

約束の日時。
現場ではなく不動産会社の事務所に来るように言われていた私は、まず、そこへ。
すると、通された応接間には、先に遺族らしき初老の男女がきていた。
そして、二人は私には目もくれず何かを力説。
何やら揉めているらしく、不穏な空気を察知した私は 黙って会釈をしながら示された椅子に腰掛けた。

そこに集ったのは、大家、不動産会社の担当者、遺族二人、そして私。
大方のケースだと、こういう現場では、大家・不動産会社が上手にでて遺族は平身低頭になる。
しかし、ここではそれが違っていた。
遺族のほうが上手にでて、大家・担当者は憮然。
私は、その様を妙に思ったのだが、黙って話を聞いていると、ほどなく揉め事の原因はつかめてきた。

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思い出(公開コメント版)

2015-09-10 08:56:40 | 特殊清掃 消臭消毒
8月後半から今日に至るまで、なんだか変な天気が続いている。
8月のうちは「このまま秋になるはずはない」「キツい残暑に襲われるはず」などと勝手に警戒していたけど、9月に入っても様子は変わらず。
酷暑・猛暑はどこへやら、曇天雨天が続き、まるで梅雨のよう・・・
・・・いや、梅雨時期よりも晴天が少ないくらい。
どうも、このまま秋が深まっていきそうな気配を感じる。
涼しくて過ごしやすいのはいいのだが、災害や農産物のことを考えると、やはり季節にあった陽はほしいと思う。

毎年、秋になると、“もの悲しさ”“もの淋しさ”を感じる人は多いみたい。
私にも少しはその気持ちがわかるが、どちらかというと私の場合は安堵感のほうが強い。
酷暑の重労働を乗り切った安堵感と、涼しくなっていくことへの安堵感だ。
ただ、安堵ばかりもしていられない。
私には恒例の?冬期欝が待っているからだ。
もちろん、今年、それに襲われるかどうかはまだわからないけど、考えると不安が過ぎる。
とにかく、つまらないことを考えないように努める必要がある。

幸か不幸か、昨季はチビ犬の死がそれを吹き飛ばした。
チビ犬との死別は、私にとって、かなりショックな出来事だったが、あれから明日で10ヶ月・・・
大袈裟でもなんでもなく、チビ犬のことを思い出さない日はない。
さすがに涙することはなくなったが、「あんなこともあった」「こんなこともあった」と、色々なことを思い出し、「楽しかったなぁ・・・」「可愛かったなぁ・・・」と微笑むことが日課みたいになっている。
死んだ直後は、どうしようもない寂しさと、怒りにも似た悲しみに苛まれていたけど、もうそれもおさまった。
このところは、どうしてだか自分でもわからないけど、チビ犬を思い出す度に何かに励まされるような気がして「頑張んなきゃな!」という思いが起こされ、自分に小さな気合を入れることができている。



特掃の依頼が入った。
依頼者はアパートの大家で、住人が孤独死したよう。
そして、異臭が外部に漏れ出し、近隣から苦情が入っている模様。
私は、依頼の現場を優先して予定を変更。
かかっていた作業をテキパキと片付け現場に急行した。

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