特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

探しもの(公開コメント版)

2014-01-31 09:19:54 | 特殊清掃 消臭消毒
一月も今日で終わりか・・・
私にとって、この一月はえらく長く感じるものだった。
正月を祝ったのはたった一月前のことなのに、だいぶ前のことのよう・・・
精神状態がよろしくないせいで、一日一日を噛みしめながら・味わいながら過ごしたものだから、長く感じたのだろうと思う。
ま、一日一日をそうして過ごすのは、悪いことではない。
むしろ、いいことだと思う。
心地いいのか悪いのかわからない疲労感をともなうけど、時間の有限性を意識しながら過ごすのは、なかなか乙なものである。

悪いことといえば、気持ちに余裕がないこと。
そのせいかどうか定かではないけど、日常の生活で、探しているモノが目の前にあるのに視界に入らないことがたまにある。
例えば、カバンの中のボールペンとか、冷蔵庫の中の調味料とか、下駄箱の上の鍵とか。
完全に視界の中にあるのに、自分ではそれに気づかない。
冷静に探せばすぐに見つかるはずなのに、目がそれに気づかないのである。

それでも、
「ここにあったはずなのに・・・」
「おかしいなぁ・・・」
と怪訝に思いながら探し続ける。
そうすると、大方のものは見つかる。
しかも、自分の視界の中から。
そうすると、視界の中にあったのにそれが完全に見えてなかったことに気づく。
そして、「俺、どうかしてるな・・・」と、何かのトリックにひっかかったような、キツネにつままれたような奇妙な気分になるのである。


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空(公開コメント版)

2014-01-25 09:22:10 | 特殊清掃
冬の空気は、冷たく乾燥している。
けれども、他の季節にはないほど澄んでいる。
猥雑な地上にいると、空を見上げる気力さえ失うことがあるけど、それでも空は万民をその下に置いてくれる。
そんな空を見上げると、一時的だけど心の空気が入れ替わる。

最近、特に気に入っているのが晴天の夜空。
満天の星空を仰ぐと、気持ちが癒される。
外はモノ凄く寒いけど、何か、あたたかい慈愛のようなものを感じる。
そして、命の儚さと、抱えている苦悩の小ささを確認する。

この空は、子供の頃に見上げた空と変わらない。
私が、この地上に生まれるずっと前から、空は変わらないのだろう。
そして、私がこの地上からいなくなっても、変わらないのだろう。
空にも“永久”はないのかもしれないけど、それでも、人間の時間をはるかに超えた時間、空は変わらないままだろう。

対象的に、地上の景色と自分は変わる。
地上の時間は過ぎるスピードも速く、生かされる時間も短い。
かたちあるものは、たちまち風と消えゆく。
まるで夢のように。
しかし、苦しい人生は長く感じる。
時間は、過ぎてみれば“アッという間”に感じるけど、苦悩の中にあるときは永遠のように長く感じられてしまう。

私は、寝ていても、夢の中で何かを考えるような性質。
起きているときは尚更で、余計な思い煩いが私を苦しめる。
思い煩いが始まったら「考えるのはこれでやめ!」「これ以上は考えるな!」「頭を空にしろ!」と自分に言いきかせる。

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穴埋め(公開コメント版)

2014-01-20 08:38:42 | 遺品整理
遺品処理の依頼が入った。
依頼者は、中年の女性。
亡くなったのは、女性の母親。
現場は、古くて小さめのマンション。
もう長く誰も住んでいない部屋なのに、そういった雰囲気はなし。
リアルな生活感こそないものの、それなりの生活感が残っていた。

部屋は、女性が故人から相続したもので、賃貸物件でなし。
したがって、家賃もなければ退去期日もなし。
リスクといえば、維持費や税金、築年数が増える分の不動産価値の下落だけ。
退去するもしないも、売却するもしないも、女性の自己裁量で自由にできる物件だった。

女性の住まいは、現場から目と鼻の先。
現場までは歩いて往来できる距離で、女性は、故人のもとを頻繁に訪れていた。
故人は晩年も足腰は達者で、大きな不自由もなく一人暮らしを続けていた。
が、女性は、一人で暮らす母親のことが心配で、こまめに世話を焼いていた。

女性は、そんな暮らしが永遠に続くとは思っていなかった。
それでも、母親に対して、いつまでも元気でいてほしいという願いはやまなかった。
しかし、自然の摂理に逆らえる者はいない。
愛する母親は、晩春のある日、長寿をまっとうして先に逝ったのだった。

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暑熱寒冷

2014-01-16 10:14:34 | 特殊清掃
季節は真冬。
自然な話だが、極寒の日々が続いている。
早朝の最低気温は零下になることもざらで、昼間の最高気温が10℃に届かない日も珍しくなく、昨日なんて5℃にも届かなかった。
夜の睡眠は、安物の毛布と布団と自分の体温だけが頼り。
エアコンや電気毛布といった暖房器具は使わない。
私は寒さに弱いほうではないと思っているけど、夜中、寒すぎて目が醒めてしまうこともある。

春夏秋冬、季節に移ろいがあるのはすばらしい。
四季折々の景色、風情、情緒、食べ物、色々な恵みが味わえるから。
反面、それは過酷な環境をつくりだすものでもある。
真冬と真夏では、その気温に40℃もひらきがあるわけで、これに耐え、順応していくのはなかなか楽じゃない。
そんな環境では、道路・建物・車等々、かなりの耐久性が求められる。
急速に劣化してもおかしくないわけで、それがそうならないところに、日本の技術が生みだす品質の高さがうかがえる。

耐久性が求められるのは、人間も同じこと。
生きているかぎり、毎年、酷暑の夏、厳寒の冬を乗り越えなければならない。
暖房器具・冷房器具を使い、服の厚さを調節してそれをしのぐわけだけど、それでも、身体には堪えるものがある。
もちろん、大変なのは身体ばかりではない。
良くも悪くも、季節は精神にも影響を及ぼす。

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痩心(公開コメント版)

2014-01-11 08:43:32 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
ゴミの片付け依頼が入った。
電話の向こうは、中年女性の声。
現場は、女性が暮す賃貸アパート。
間取りは2DK。
床一面をゴミが覆い尽くし、更に、それが結構な厚さに堆積しているとのこと。
「どれくらいの費用がかかりそうですか?」
との問いに、私は、想定の概算費用を返答。
「やっぱり、それくらいかかりますか・・・」
女性は、その金額を聞いて、しばし沈黙。
声のトーンを落とし
「分割で払うことはできますか?」
と、言いにくそうに訊いてきた。
女性の資力が乏しいことは、聞かずとも明白だった。

代金の分割払いは原則として可能。
しかし、そこには、おのずと条件がつく。
頭金の金額、月々の支払金額、支払期間、安定収入の有無etc・・・当社にとって受忍できる範囲のリスクを超える場合は、契約することができない。
しかし、それも原則。
諸条件をクリアすることも大事だけど、最後は人物で判断する。
イザとなった場合、契約書も契約書も何の役にも立たないから。
(それが痛い思いをする原因にもなるわけだけど。)
そこで、私は、質問がプライベートなことに及ぶことをあらかじめ詫びて、女性の経済力を知るべく、色々と質問をしてみた。
すると・・・
職業は派遣スタッフ。
月の収入は十数万円、しかも不安定。
クレジットカードの与信はなし。
資産や預金類、担保になりそうなモノもなし。
お金を貸してくれそうな人も保証人になってくれそうな人もいない。
・・・とのこと。

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肉野菜(公開コメント版)

2014-01-06 09:49:59 | 特殊清掃
2014年 謹賀新年。

この正月、多くの人が、美味しいものをたくさん食べ、美味しい酒をたくさん飲んだことだろう。
一年間の無病息災を願いながらも、暴飲暴食をしてしまう。
しかし、これもまた、正月の楽しみ。
私も、いつもよりはいいモノを食べ、酒もいつもよりは多めに飲んだ。
体にしがみついて離れないメタ坊も、楽しい正月を過ごせたことだろう。
しかし、正月が過ぎたらそんなことしてられない。
腹八分を心がけ、酒もほどほどにバランスのとれた食事をするのが、自分のためである。

9連休明けで、今日が仕事始めの人も多いみたい。
私の場合、例年通り、仕事納めは12月31日。
そして、仕事始めは1月2日(いきなりの特掃)。
運よく?元日の一日は休むことができた。
いつ鳴るかわからないため携帯電話を離すことはできなかったけど、出社は免れた。

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