せっかち散歩

ゆっくり急げ、時間がないから

ムクロジの果実

2014-01-04 | 日記
「ミラクル エリザベス・ヒューズとインスリン発見の物語」(シア・クーパー,アーサー・アインスバーグ著)を先週読んだ。

1918年アメリカ国務長官であったチャールズ・エヴァンス・ヒューズの娘エリザベス・ヒューズは11歳で1型糖尿病に罹患した。当時1型糖尿病はほとんどが1年以内に亡くなる不治の病だった。しかし彼女は当時唯一の延命治療であった飢餓療法により15歳の時体重21kgまで落ちたものの奇跡的に生き伸びて新しい治療法が発見されるのを待っていた。1921年夏トロント大学でバンティングとベストはイヌのすい臓からインスリンを抽出することに成功した。教授のマクラウドは生理学実験をしたこともない若い二人が大発見をするとは夢にも思っておらず、その時夏季休暇で海外にいた。その後この成果は学会で発表され、翌1922年からは臨床応用が始まる。インスリンの効果は絶大で死の淵にいた患者は次々と回復した。しかしインスリンは当時牛や豚のすい臓から抽出されておりインスリンの不足のため使用できる患者は限られていた。国務長官であったチャールズ・エヴァンス・ヒューズは娘に優先的にインスリンを投与することを依頼、娘の命は救われた。そして1923年にインスリンの発見の功績によりマクラウド教授とバンティングへのノーベル賞授与が決定されたが、バンティングはマクラウド教授が功績を横取りしたと感じ、ノーベル賞受賞者にベストが入っていないことに対しても憤り授賞式には出席しなかった。

アメリカ国務長官であったチャールズ・エヴァンス・ヒューズと娘エリザベス・ヒューズは死ぬまで1型糖尿病であることを秘密にした。チャールズ・エヴァンス・ヒューズは自分の伝記にも一言も書いていないという。権限を利用したことがやましかったのか、糖尿病に対する当時の偏見から逃れるためだったのか?

研究には成果が伴いその成果には名声が伴う。業績があれば地位が確保される。科学者、医者といえども人間であるから、研究に対する純粋な興味や使命感の後ろには、名誉欲や権力欲が眠っている。醜い泥沼の争いを未然に回避することが賢いことだとつくづく思う。 



ムクロジ ムクロジ科

近所を散歩。畑と道の境界付近で見上げると黄土色の果実がたくさんつけた樹木があった。センダンの果実とも似ている。


よく見るとムクロジだった。


ムクロジの果実は半透明で中の種子が何となく透けて見える。

 
種子は羽根つきの羽根の頭に使用されるというから、落ちていた果実を指で潰して中の種を取り出してみた。手は接着剤がついたようにベトベトになって少し発酵したような匂いがする。何年か前にこの種を植木鉢の土に埋めておいたら春に芽が出てあっという間に1mくらいに成長した。葉も大きいしとてもベランダで育てられるものではなかった。