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小松市の育鵬社中学校歴史教科書再採択に抗議する

2020-09-25 20:53:52 | 2020年中学校教科書採択(全国)
小松市の育鵬社中学校歴史教科書再採択に抗議する

 小松市教育委員会教育長 石黒和彦殿

 いしかわ教育総合研究所は2015年以来小松市に対し、育鵬社の中学校歴史・公民教科書、日本教科書株式会社の中学校道徳教科書の劣悪性を指摘し、3教科書の再採択見送りを要望してきた。本2020年度の2021~2024年使用中学校教科書の採択において小松市は、公民において帝国書院、道徳において日本文教出版の教科書を採択し、問題2教科書の再採択を見送ったが、歴史においては育鵬社教科書を再採択した。

 すでに全国ニュースになっているが、神奈川県の横浜市と藤沢市、大阪市初め大阪府下の諸都市、愛媛県松山市、広島県呉市など、前回育鵬社教科書大手採択区のほとんどが再採択を見送り、育鵬社教科書の部数が10分の1ほどに激減する育鵬社採択の雪崩現象が今年度起こっている。これは育鵬社教科書の劣悪性が全国的に知られた結果と思われる。育鵬社の劣悪性は、直近の9月7日、同社公民教科書が滋賀県守山市の無料学習塾について当該団体に無断で掲載し、その記事も誤謬だらけなこと(「愛知県守山市」という間違いさえあった)を当該団体から抗議されたニュースなどによって、いまや日本の常識となりつつある。

 また日本教科書の道徳教科書も、差別に屈服することの奨励や、刑事訴追や社会的制裁などの脅迫に終始したいじめ防止の項など、あまりのひどさゆえであろうが、全国で採択区が栃木県大田原市、石川県の小松市と加賀市の3つだけだったことが話題になった。今年度においても大田原市と加賀市が再採択した他、千葉県の一部を除き新規採択区があったことをきかない。

 そのように貧しい知性が生んだ国家主義教科書が全国的に退潮する中で、小松市と金沢市が育鵬社歴史教科書を、加賀市が育鵬社歴史・公民教科書、日本教科書道徳教科書を再採したことは異様であり、全国から石川県3市の見識に対し奇異の眼差しが向けられている。当該教育委員会の見識と勇気の欠如を見越した、時代錯誤の国家主義教科書を採択させようとする勢力からの、懸命の働きかけが背後にあったことが推測できる。

 育鵬社が安倍前首相の肝いりで造られたことは周知のことだし、日本教科書も安倍前首相が推奨する「新しい教科書をつくる会」の流れで生まれた会社である。その安倍政権は先日、モリカケサクラカワイといった深刻なモラルハザードと、人口当たり新型コロナ死者数東アジアワースト上位、人口当たりPCR検査数世界159位、IT競争力世界23位(30年前1位)という「かつての先進国」状況を日本に残して終わった。このような日本の劣化は、ここ20数年にわたり(「新しい教科書をつくる会」発足は1997年)日本で時代錯誤の国家主義教科書を採択させることに、多大なエネルギーが費やされてきたことと無関係ではないであろう。

 国が劣化するときそれを是正するのは地域の義務であり、現実に全国多数の教育委員会は育鵬社教科書の再採択を見送ることで、その存在意義を示した。石川県の金沢、小松、加賀の3市は残念ながら時代錯誤の勢力に忖度し、人類の多難な未来を担う子どもたちへの神聖な義務を果たすことをしなかった。

 小松市が再採択した育鵬社歴史教科書の内容は、小松市が今回再採択を見送った育鵬社公民教科書や日本教科書道徳教科書と同様に劣悪なものである。

その劣悪性は、ネルーや孫文が日露戦争における日本の勝利に喜んだが、その後の日本に失望したと他社教科書が記述しているのに育鵬社教科書だけは触れないといった、植民地支配や侵略戦争を美化する近現代史部分に顕著である。のみならず、広隆寺弥勒菩薩像の紹介で、他社教科書が特筆する韓国国宝83号との酷似に触れないといったように、独善的日本讃美に充ちた古代中近世史部分にまで及んでいる。さらに育鵬社教科書の「目玉」神話部分にさえ、(神話と歴史と混同する愚かさとは別に)神武天皇を天孫ニニギの3代目(実は4代目、戦前なら不敬罪もの)とする無教養な間違いが見られる。

 小松市は育鵬社歴史教科書の採択理由に「我が国の歴史や伝統文化の特色について学ぶことができる」としているが、「我が国の歴史や伝統文化の特色について誤解することができる」の間違いではないかと反問せざるをえない。

 もちろん小松市教育委員会が育鵬社公民教科書と日本教科書道徳教科書の再採択を見送ったのは真っ当な判断であり、上に忖度するだけで何もできなかった金沢市や加賀市の教育委員会に比べればましだったことを認めるのにやぶさかではない。しかし、現にこれからの4年間この教科書を使わされる子どもたちのことを想うとき、残念ながら小松市の姿勢を評価することはできない。むしろ金沢市や加賀市の教育委員会に比べ多少の判断力を持つことが示せたわけだから、それを徹底する勇気を欠いたことが責められるべきであろう。

 いしかわ教育総合研究所は以上の観点にもとづき、育鵬社公民教科書と日本教科書道徳教科書の再採択を見送りながら、育鵬社歴史教科書の再採択見送りに踏み切れなかった小松市に抗議し、その見直しと採択のやり直しを強く求める。

2020年9月24日 いしかわ教育総合研究所共同代表 半沢英一


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