子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

大阪市の教科書採択区の細分化が決定!

2018-12-27 16:31:25 | 大阪市の教科書問題
12月25日に開催された大阪市教育委員会会議で、来年度の小学校教科書採択区を4区に分けて採択することが決定されました。


1区から4区に変更する理由として挙げられたのは次の3点です。

(1)「ニア・イズ・ベター」の分権型教育行政を進めるために、教育委員会事務局の4ブロック化を進めているところである。

(2)より現場の意見に則した教科書採択事務ができる。

(3)教員がより近いまとまりの中で研究を深められる。

2点目と3点目は、より現場に近い採択ができることをメリットとして挙げているもので、私たちが求めてきたものでもあります。したがって大阪市がこれらの点を細分化のメリットとして挙げたことは、横浜市のような大規模採択区を採用している市への追及にも適用できます。

1点目も一見似たように受け取れますが、これは今問題になっている学テ・教員待遇問題との関係で、教育委員会事務局が学校教育によりいっそうコミットしブロック間の競争をさせて行くことと連動しており、かつこれが細分化の理由のトップに挙げられていることからして、やはり教育委員会は採択区の細分化も吉村・維新の教育行政に沿う形で位置づけたと言えます。

この提案を受けて教育委員たちの審議は次のように行われました。

まず森末委員がこの変更のきっかけになった陳情書についての説明を事務局に求めたのですが、事務局は2016年11月と2018年3月の2回の陳情書について詳しく説明しました。山本教育長も最後に2度の陳情書採択と第三者委員会報告に言及したことからして、この変更が彼らの内部からの「ニア・イズ・ベター」の考えから出たものではなく、外部からの圧力によってしかなされなかったことを如実に物語っていました。

そもそも2014年の小学校教科書採択の時に8区から1区に変更した際には、1区のメリットとして、転校の際に子どもの負担が少ない、採択事務・費用が簡素化できる、教員研修も効果的にできることなどが理由として挙げられていました。今回の細分化の理由に挙げられた「ニア・イズ・ベター」はまったく無視されていたわけです。真逆の変更をするには本来なら2014年の1区への変更を間違いだったと認めることから始めなければならないはずですが、そういうことは一切なく、政策変更にも間違いは認めないという行政的な態度が徹底的に貫かれていました。

前日に毎日新聞が4区への変更を「都構想への忖度か?」と指摘したことはかなり気にしたようで、大竹委員は「自分たちは都構想から考えたのではない」と強調しました。大竹委員は8区だと事務作業が大きくなるので2区か4区がいいと4区案を支持したうえで、転校問題というデメリットは残るので対策を取ってほしいと1区のメリットに未練を残すような発言もしていました。

巽委員は新聞で「教育的専門性」の観点から批判が出ていたことに触れ、「なぜこの4区なのか?」を質問しました。これに対して事務局は交通網から考えて教職員が移動しやすいこと、全市で400校程度あるが各区が小学校70校、中学校30校程度で平準化されることを理由として挙げました。巽委員は「学力差」についても言及しましたが、事務局は検定を通っている教科書なので対応できるという曖昧な返答しかできませんでした。事務局は今後はブロックごとの研修をする、採択教科書がブロックごとに異なり複数になる可能性があるので、大阪市としてサイトを作って支援するとも表明しました。

山本教育長はできるだけ細分化すべきだが事務局の現在の力量からして4区ぐらいが適当である、今後は区長や区担当者の役割が大きいと述べました。1区の時は春から夏にかけて教育委員の負担が大きかったが、今後はブロックで作業するので教育委員の負担は軽減できると最後に本音を漏らし、だからといってブロック任せではなく教育委員としてしっかり採択してほしいと要望しました。

ブロックごとの採択が決定したので、今後私たちとしてはこれに現場教員の意見をきちんと反映させるようにしなければなりません。すでに2015年の育鵬社採択時とは異なり、学校調査には教科書の長所と短所を記入できる形式に改善させ、選定委員会答申でも「配慮を要する点」として明確にされるようになりましたが、かってのように学校票という形で明確に示す方法を復活させることも含めて、採択過程を民主化していく追及が必要です。

添付の資料は事務局の提案です。

12.22学力テストの点数で教員・学校を査定!?子どもをテストで追いつめるな!大阪集会に参加してくださ い!

2018-12-16 14:05:37 | 全国学力テスト
大阪市の教育が大きく変質しようとしています。
吉村市長と大阪市教委は、学学力テスト結果で教員・校長の給与格差付け、
学校予算の格差付けを行おうとしています。
この新制度は、教員・校長の評価と給与の問題にとどまらず、
学校教育全体をゆがめていく重大な問題に他なりません。
私たちは、保護者や子ども、市民、教職員など様々な立場の人々と繋がり、反対の声を大きくしていきたいと思っています。
年末に近づく時期ですが、ぜひ、多くの皆さんの参加を呼びかけます。

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学力テストの点数で教員・学校を査定!?
子どもをテストで追いつめるな!12.22大阪集会

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■日時 12月22日(土) 14:00 (会場13:30)
■場所 エルおおさか 大会議室(地下鉄・京阪「天満橋」下車)
■パネルディスカッション
  問題提起 濱元伸彦さん(市保護者・京都造形芸術大学) 
  パネラー 住友剛さん(京都精華大学)
       橋本智子さん(市保護者・弁護士)
       大阪市教員 
■発言
■資料代 800円(学生・障がい者無料)
■主催 子どもをテストで追いつめるな!12.22大阪集会実行委員会
■ブログ 
http://no-testhyouka.cocolog-nifty.com/blog/no-testhyouka.html
■問い合わせ iga@mue.biglobe.ne.jp

■呼びかけ
 現在、吉村市長と大阪市教委は、学力テストの点数によって教員・校長評価を行い、給与格差をつけていく新人事評価制度を具体化しようとしています。
 大阪市では、小3~小6まで「経年テスト」、中1~中3まで大阪府チャレンジテスト、中3は「統一テスト」を実施しています。「経年テスト」と「統一テスト」は大阪市独自のテストです。それらのテスト結果を大阪市教委にビッグデータとして集積し、教員や校長の人事評価、ボーナス、さらには学校予算に反映し、格差付けをする新制度です。これに加えて校長には全国学力テスト(学テ)の結果も活用するとしています。
 これらは、吉村市長が全国学テ結果を人事評価に活用するとした当初の提案よりも、より広くより深く学校教育全体をテスト漬けにしていくものです。全国的にも例が全くありません。

学力テストが支配する学校のいびつな姿

 すでに大阪市では、橋下市長(当時)の圧力で学テの学校別正答率を学校HPで公開しています。中学校では進学高校名と人数の公開もするようになりました。全ての区で学校選択制を導入し、学テの結果を選択基準にするように奨励もしています。「チャレンジテスト」や「統一テスト」は、高校入試の内申書に反映しています。このことに加えて今回の新制度が導入されると学校現場はどうなるのでしょうか。
 教員はテストの点数を上げるためにこれまで以上に競争をさせられます。学校の授業は、テスト対策と過去問題の練習に力を入れ、テスト直前には子どもたちに強いプレッシャーとストレスを与えることは必至です。テスト対策が重視されていくと、音楽や図工、体育などのテストのない教科や運動会・文化祭等の学校行事も軽視されていくでしょう。
 最も弊害を受けるのは、障がいのある子どもや「テストの点数が低い」子ども、生活背景の厳しい子どもたちです。今でさえこれらの子どもたちと保護者にテストからの排除圧力が強められているからです。
 学校は、学力の向上だけでなく、社会性や人権感覚を学び、様々な行事を通して感性を豊かにしていき、多面的な成長を促していく場所です。様々な環境に置かれている子どもたちが共に学ぶ「居場所」そのものです。しかし、新制度は、このような学校教育の重要な役割を喪失させてしまいます。

行政が行うべきは子どもの生活基盤の安定

 行政は、子どもを育てる環境整備にこそ力を注ぐべきであり、困難な学校にこそ予算をつけて教員を配置し、少人数学級を実現するなど、子どもが落ち着いて学習できるように条件を整えるべきです。大阪市内の教員不足は深刻です。精神疾患による病気休職も他府県に比べても多いです。しかし、大阪市では、代替講師が派遣されていない学校が30校以上存在しています。これらの学校条件を整えることが先決ではないでしょうか。
 さらに、大阪市は生活保護率、就学援助率が全国的にも最も高い地域です。貧困な家庭でも生活保護や就学援助を受けていない家庭も多く存在しています。しかし、吉村市長と市教委は、大阪の貧困を放置してきただけでなく、就学援助基準の引き下げを行ってきました。その結果、2015年度から2年間で就学援助を受けられなくなった子どもが約5000人も出ています。

保護者、子ども、市民、教職員がつながり、教育の危機を食い止めよう!

 8月2日に吉村市長が新方針を表明して以降、急速に反対運動が広がり始めています。吉村市長の新方針の撤回を求める要求書が85団体の賛同を得て市教委に提出されたり、1万5000筆のネット署名が提出されたりしています。大阪市教委交渉や街頭でのスタンディングなども行われてきました。
 吉村市長と大阪市教委が進めようとしている新制度は、教員・校長の評価と給与の問題にとどまらず、学校教育全体をゆがめていく重大な問題に他なりません。そのような危機感から私たちは、保護者や子ども、市民、教職員など様々な立場の人々と繋がり、新制度に反対していくために実行委員会を結成しました。
 今日の集会は運動の出発点です。すでに大阪市教委は制度設計を始めています。2019年度から試行実施し、2020年度には本格実施、2021年度には給与反映すると表明しています。今日の集会を成功させ、これからの制度の具体化に反対する声を強めていきたいと思っています。