令和書籍中学校歴史教科書の「検定合格」に対する抗議声明
2024年6月1日
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
4月22日、文部科学省は「決定未了」にしていた令和書籍の中学校歴史教科書を「検定合格」させた。令和書籍は毎年のように検定申請し、その都度「不合格」になった申請本を「不合格教科書」として市販していたが、とうとう「合格」したのである。令和書籍歴史は戦前の軍国主義時代の国定教科書「国史」にそっくりで、大日本帝国の皇国史観にもとづいて書かれている。侵略戦争への反省もまったくない時代錯誤で不誠実な歴史教科書である。このような「天皇の活躍物語」を子どもたちが学ぶ教科書として「合格」させた文科省の責任は重大であり、私たちは強く抗議する。私たちが抗議する理由はいくつもあるが、短くまとめると以下のとおりである。
(1)皇国史観
・神話と歴史を直結している。天皇を神の子孫とし、実在しない天皇も含めて、歴史を天皇の活躍物語
にしている。皇統はずっと男系と強調。
・明治天皇と昭和天皇を特に偉大な天皇として美化。これらの天皇はアジアへの侵略戦争を進めた天皇であるにもかかわらず、平和を望んだ天皇と描く。
・教育勅語を賛美。「特攻死」を国民のもっとも美しい自己犠牲の姿として「散華」と呼ぶ。
(2)侵略戦争と植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどない
・韓国の植民地化は韓国の皇帝から依頼されたから。近代化は日本のおかげと説明。
・南京大虐殺を否定。日本軍「慰安婦」が性奴隷だったことも否定。
このような歴史教科書たりえない「物語」を「検定合格」させたことに、検定官の質の劣化が如実にあらわれている。そもそも検定基準「1 基本的条件(5)」では、内容は「児童又は生徒の心身の発達段階に適応」していることが求められている。令和書籍歴史は縦書きで他社の倍近くのページ数があり、一般には知られていない天皇のことまで記述しているため難解で、中学生の「発達段階」にはまったくふさわしくない。内容の是非以前にこれだけでも不合格になるべき教科書なのである。
また「社会科の検定基準(6)」には「近隣諸国条項」があり、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」が明記されている。これにもとづくなら令和書籍の戦争・植民地記述は絶対に認められないはずである。ところが安倍政権によって「近隣諸国条項」が棚上げ、さらには完全無視されることが続き、検定官自身がアジア諸国のことなどどうでもよいかのような傲慢な感覚に陥っているのである。
しかし、問題の深刻さはそれだけではない。「事前に内容が漏れていた」ことにより「決定未了」となっていた令和書籍歴史を「合格」させた文科省の最終判断は、岸田政権の判断でもあるということだ。岸田首相は4月の日米会談で今後はアメリカのグローバルな戦争に全面的に協力することを表明した。兵器の爆買いだけでなく、世界各地でのアメリカの戦闘に自衛隊が参加する可能性を表明したのである。しかし、自衛隊が実際に戦死もありうる戦闘行為に参加するには、自衛官の数が圧倒的に不足しており、国民感情としても容易に受け入れられるものではない。災害救助で作られた人々の自衛隊への肯定的評価を利用して、自衛官募集を一生懸命やっても、自衛隊内のパワハラやセクハラは後をたたず、自殺者も出ている状況では応募者はなかなか増えない。このようななかで、岸田政権にとっては教育を通じた「愛国兵士」づくりは喫緊の課題である。そのためには育鵬社・自由社だけでなく、令和書籍のような極端な歴史教科書すら利用しようとしているのである。
しかし、私たちはこのような子どもたちを戦争に導く「軍国主義礼賛・愛国主義礼賛」の教科書を絶対に許さない。すでに各地の教科書センターには採択にかけられる令和書籍の見本本が届いている。私たちは教科書展示会で意見を書いて教育委員会に届けることをはじめ、採択会議の傍聴などできることはすべてやるつもりである。あぶない教科書の採択を阻止し、「平和・人権・共生」という日本国憲法の理念にのっとった教科書を子どもたちに届けるために努力することを表明する。
以上
賛同団体(7月15日現在)
オール東大阪市民の会、教科書問題を考える北摂市民ネットワーク、 (アイ)女性会議・京都、子どもと教科書 市民・保護者の会、子どもに『教育への権利』を!大阪教育研究会、香川の子どもと教科書ネット、高槻タチソ戦跡保存の会、ざざまる会、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、アイ女性会議ひょうご、「慰安婦」問題を考える会・神戸、サポートユニオンwithYOU、「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット、教職員なかまユニオン、全国労働組合連絡協議会大阪府協議会(大阪全労協)、子どもの教科書を読む会・北九州、「キリスト者・9条の会」北九州、草の根の会・中津、教科書問題を考える会・豊中
2024年6月1日
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
4月22日、文部科学省は「決定未了」にしていた令和書籍の中学校歴史教科書を「検定合格」させた。令和書籍は毎年のように検定申請し、その都度「不合格」になった申請本を「不合格教科書」として市販していたが、とうとう「合格」したのである。令和書籍歴史は戦前の軍国主義時代の国定教科書「国史」にそっくりで、大日本帝国の皇国史観にもとづいて書かれている。侵略戦争への反省もまったくない時代錯誤で不誠実な歴史教科書である。このような「天皇の活躍物語」を子どもたちが学ぶ教科書として「合格」させた文科省の責任は重大であり、私たちは強く抗議する。私たちが抗議する理由はいくつもあるが、短くまとめると以下のとおりである。
(1)皇国史観
・神話と歴史を直結している。天皇を神の子孫とし、実在しない天皇も含めて、歴史を天皇の活躍物語
にしている。皇統はずっと男系と強調。
・明治天皇と昭和天皇を特に偉大な天皇として美化。これらの天皇はアジアへの侵略戦争を進めた天皇であるにもかかわらず、平和を望んだ天皇と描く。
・教育勅語を賛美。「特攻死」を国民のもっとも美しい自己犠牲の姿として「散華」と呼ぶ。
(2)侵略戦争と植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどない
・韓国の植民地化は韓国の皇帝から依頼されたから。近代化は日本のおかげと説明。
・南京大虐殺を否定。日本軍「慰安婦」が性奴隷だったことも否定。
このような歴史教科書たりえない「物語」を「検定合格」させたことに、検定官の質の劣化が如実にあらわれている。そもそも検定基準「1 基本的条件(5)」では、内容は「児童又は生徒の心身の発達段階に適応」していることが求められている。令和書籍歴史は縦書きで他社の倍近くのページ数があり、一般には知られていない天皇のことまで記述しているため難解で、中学生の「発達段階」にはまったくふさわしくない。内容の是非以前にこれだけでも不合格になるべき教科書なのである。
また「社会科の検定基準(6)」には「近隣諸国条項」があり、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」が明記されている。これにもとづくなら令和書籍の戦争・植民地記述は絶対に認められないはずである。ところが安倍政権によって「近隣諸国条項」が棚上げ、さらには完全無視されることが続き、検定官自身がアジア諸国のことなどどうでもよいかのような傲慢な感覚に陥っているのである。
しかし、問題の深刻さはそれだけではない。「事前に内容が漏れていた」ことにより「決定未了」となっていた令和書籍歴史を「合格」させた文科省の最終判断は、岸田政権の判断でもあるということだ。岸田首相は4月の日米会談で今後はアメリカのグローバルな戦争に全面的に協力することを表明した。兵器の爆買いだけでなく、世界各地でのアメリカの戦闘に自衛隊が参加する可能性を表明したのである。しかし、自衛隊が実際に戦死もありうる戦闘行為に参加するには、自衛官の数が圧倒的に不足しており、国民感情としても容易に受け入れられるものではない。災害救助で作られた人々の自衛隊への肯定的評価を利用して、自衛官募集を一生懸命やっても、自衛隊内のパワハラやセクハラは後をたたず、自殺者も出ている状況では応募者はなかなか増えない。このようななかで、岸田政権にとっては教育を通じた「愛国兵士」づくりは喫緊の課題である。そのためには育鵬社・自由社だけでなく、令和書籍のような極端な歴史教科書すら利用しようとしているのである。
しかし、私たちはこのような子どもたちを戦争に導く「軍国主義礼賛・愛国主義礼賛」の教科書を絶対に許さない。すでに各地の教科書センターには採択にかけられる令和書籍の見本本が届いている。私たちは教科書展示会で意見を書いて教育委員会に届けることをはじめ、採択会議の傍聴などできることはすべてやるつもりである。あぶない教科書の採択を阻止し、「平和・人権・共生」という日本国憲法の理念にのっとった教科書を子どもたちに届けるために努力することを表明する。
以上
賛同団体(7月15日現在)
オール東大阪市民の会、教科書問題を考える北摂市民ネットワーク、 (アイ)女性会議・京都、子どもと教科書 市民・保護者の会、子どもに『教育への権利』を!大阪教育研究会、香川の子どもと教科書ネット、高槻タチソ戦跡保存の会、ざざまる会、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、アイ女性会議ひょうご、「慰安婦」問題を考える会・神戸、サポートユニオンwithYOU、「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット、教職員なかまユニオン、全国労働組合連絡協議会大阪府協議会(大阪全労協)、子どもの教科書を読む会・北九州、「キリスト者・9条の会」北九州、草の根の会・中津、教科書問題を考える会・豊中