子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

日本教科書による中学校道徳教科書の不正な宣伝、採択依頼活動についての要望・質問書

2018-06-17 10:07:47 | 道徳教科書 中学校
日本教科書(株)が検定期間中(2017年4月~2018年3月)に、教育再生首長会議で不正な宣伝・営業活動をしていたことが、教育再生首長会議に参加している市への情報公開請求によって明らかになりました。
教科書検定期間中の宣伝・営業活動を、文科省は教科書会社に対して厳しく自粛を求めています。にもかかわらず日本教科書は教育委員を任命する権限をもち、総合教育会議で教科書採択方針を決める権限をもつ首長に営業を直接かけるという大胆さでした。

そこで私たちは緊急に、大阪府内の全ての自治体の長と教育委員会に対して日本教科書の不正な営業活動についての要望書・質問書を提出することにしました。

要望・質問書のひな形を下記に貼り付けます。
また、提出時の資料として「御案内」をつけます。
■2018年1月24日 教育再生会議の1月会議で配布された「御案内」PDF
https://www.data-box.jp/pdir/e6d373b76aec4caaac9a864fd2da1188

要望・質問書は自由にアレンジして、各地でもご活用ください。

********************************************

○○市  ○○市長様
○○市教育委員会 教育委員長(または教育長)    ○○様

                                      
提出団体名

日本教科書(株)による来年度使用中学校道徳教科書の不正な宣伝、採択依頼活動について要望と質問状

 日頃の市政と教育へのご尽力に敬意を表します。
  このたび、日本教科書(株)が検定期間中(2017年4月~2018年3月)に、教育再生首長会議で不正な宣伝・営業活動をしていたことが、教育再生首長会議に参加している市への情報公開請求によって明らかになりました。日本教科書関連の情報を整理しますと次のようになります。

2017年7月12日 教育再生首長会議の7月会議で日本教科書の「リーフレット」が配布された。
2017年11月15日 教育再生首長会議の11月会議で日本教科書の監修者である白木みどり氏の講演会が行われ、その時、「会社案内」が配布された。
2018年1月24日 教育再生首長会議の1月会議で「会社案内」と「御案内」という文書が配布された。

 教科書検定期間中の宣伝・営業活動を、文科省は教科書会社に対して厳しく自粛を求めています。にもかかわらず日本教科書は教育委員を任命する権限をもち、総合教育会議で教科書採択方針を決める権限をもつ首長に営業を直接かけるという大胆さでした。
 日本教科書が教育再生首長会議で宣伝・営業活動を行った証拠は、上記のように、「リーフレット」「会社案内」「御案内」の3種類ありますが、内容上、一番問題なのは1月24日に配布された「御案内」です(資料として添付いたしました)。
 顧問の八木秀次氏と代表取締役社長の武田義輝氏の名前で出されており、次のような文言があります。「市長が主催する総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができる」と、市長が教科書採択に影響を及ぼすことができるとしたうえで、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」とまで要請しています。
 現在、採択業務が全国で行われています。内容が人権侵害教科書であるにとどまらず、こんな不正なことまでやっていた会社の教科書が、しかも子どもたちに道徳を教える教科書が、他の7社と並んで堂々と採択候補として扱われているのは断じて許されることではありません。
 つきましては、私たちは貴市、および貴教育委員会に以下の要望と質問を提出しますので、誠意をもってお答えいただきますようによろしくお願いいたします。

<要望>
 公正・公平な教科書採択の原則をふみにじった日本教科書を採択対象からはずし、絶対に採択しないでください。
 
<質問>
(1)貴市の市長、教育長、教育委員に対して、検定期間中に日本教科書から何らかの接触・働きかけがありましたか?

(2)教育再生首長会議に参加している市長から日本教科書の紹介・働きかけ、日本教科書に関する資料の提供などはありましたか?
 それぞれあった場合は年月日、具体的な事実を詳細にお答えください。なかった場合は「なかった」旨をご回答ください。締め切りは、7月20日です。
 
 お忙しいとは存じますが、教科書採択の公正・公平を確保するために非常に重要なことですので、どうかよろしくお願いいたします。
 
 

1月24日、教育再生首長会議で日本教科書の宣伝

2018-06-16 20:36:51 | 道徳教科書 中学校
2018年1月24日に開催された教育再生首長会で配布された中学校道徳教科書「日本教科書」の「御案内」の全文です。
明らかに、検定期間中の不公正な営業活動です。

**************************


市長各位

                     御案内
                            日本教科書株式会社
                               顧間 八木 秀次
                          代表取締役社長 武田 義輝

謹啓 時下益々ご清祥の、こととお慶び申し上げます。

弊社は来年度から始まる道徳の教科化に伴い、新たに設立した教科書会社です(平成28年4月設立)。道徳の教科化を真に子供たちにとって義あるものにするためには、「主たる教材」である教科書の内容が充実したものでなければなりません。この戦後はじめての機会に、自分たちで最高の道徳教科書を作り、 多くの子供たちに届けたい一一こうした強い思いから立ち上げた次第です。

市長が主催をする総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができるとされています。つきましては、弊社に関する資料を同封致しましたのでぜひご覧ください。

あわせて、市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたいと存じております。
ご多用のところ誠に恐縮ですが、何卒宜しくお願い申し上げます。

謹白



日本教科書の不正な宣伝活動の証拠を発見!

2018-06-14 19:23:58 | 道徳教科書 中学校
日本教科書が教育再生首長会議で不正な宣伝活動をしていたことが、和泉市の辻市長と泉佐野市の千代松市長への情報公開請求によって明らかになりました。この証拠は東大阪市の野田市長からの情報公開によっては出てこなかったものです。野田市長は隠蔽した可能性があるので、今後東大阪市では追及する必要があります。

日本教科書関連の情報を整理しますと次のようになります。

■2017年7月12日 教育再生首長会議の7月会議で日本教科書の「リーフレット」が配布された。
*リーフレットのPDF 
https://www.data-box.jp/pdir/f7aa25e66ce3436aaecde1ddbe1d3e52

■2017年11月15日 教育再生首長会議の11月会議で日本教科書の監修者である白木みどり氏の講演会が行われ、その時、「会社案内」が配布された。
*「会社案内」PDF
https://www.data-box.jp/pdir/917f9991c766419d9b4c518f4d3ca21f

■2018年正月明け(日にちは不明)日本教科書がHPを開設し、日本教科書の宣伝を開始した。

■2018年1月24日 教育再生会議の1月会議で「会社案内」と「御案内」という文書が配布された。
*「御案内」PDF
https://www.data-box.jp/pdir/e6d373b76aec4caaac9a864fd2da1188


教科書検定中の宣伝活動を文科省は教科書会社に厳しく自粛を求めています。昨年、育鵬社に中学校道徳教科書の作成の有無を問い合わせた時、育鵬社は「静謐な環境を保つためそれは言えない」と答えました。文科省は教科書作成の有無も含め公開してはならないと規制しているので、育鵬社もこのように答えたと思われます。

にもかかわらず日本教科書は教育委員を選出する権限をもち、総合教育会議で教科書採択方針を決める権限をもつ首長に営業を直接かけるという大胆さでした。2015年の時の育鵬社の失敗を教訓にしてか、検定中の白表紙本こそ見せてはいませんが、教育再生首長会議を利用していました。

6月13日、文科省に検定期間中とは2017年4月から2018年3月までの期間をさすことを確認したうえで、日本教科書の不正事実を伝え、対応を求めました。文科省の教科書課の担当者はHPについては知っていましたが、他社もHPがあるので、特に問題はないと考えているとのことでした。教育再生首長会議での日本教科書の営業活動については知らなかったとのことで、とりあえず担当部署内で報告するということでした。こちらからは資料を提供できると申し出ましたが、それは受け入れませんでした。

日本教科書が教育再生首長会議で営業活動を行った証拠は3種類(添付)あります。2017年11月15日には白木みどり氏の講演会が行われており、このときに白木氏が会社案内を配布した可能性があります。社員がついてきて配布したとか、首長の誰かが依頼されて持ち込んだ可能性もあります。会社案内はリーフレットよりもっと詳しく、代表取締役社長の武田義輝氏の挨拶と、監修者として白木氏が写真入りで紹介されており、会社概要として所在地、資本金も明記されています。

内容上、一番問題なのは1月24日に配布された「御案内」です。顧問の八木秀次氏と代表取締役社長の武田義輝氏の名前で出されており、次のような文言があります。「市長が主催する総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができるとされています」と、市長が教科書採択に影響を及ぼすことができるとしたうえで、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」とまで要請しています。ここまで露骨なことをしていたとは驚きです。

教育再生首長会議の事務所は日本教育再生機構の事務所に置かれており、首長会議の事務を日本教育再生機構に委託しているので、2名分の社員の賃金を首長会議が負担(年会費2万円)していることが、この間の東大阪市からの公開資料で明らかになっています。そもそも教育再生首長会議は日本教育再生機構が作った教科書を採択することを目的に結成されたともいえるので、癒着は予想されたことではありますが、仮にも「公平・公正な採択」をうたっているのですから、このような癒着を文科省が見逃すのかが厳しく問われます。長期の安倍政権で、緩み切ったお友達優遇が森友・加計問題で明らかになっていますが、今回もその一つです。

現在、採択業務が全国で行われています。内容が人権侵害教科書であるにとどまらず、こんな不正なことまでやっていた会社の教科書が、しかも道徳を教える教科書が、他の7社と並んで堂々と採択候補として扱われているのは断じて許されることではありません。マスコミにもぜひ取り上げていただきたいですし、国会でも追及してもらう必要があるのではないかと思います。この問題が公にならず、日本教科書が採択されるなどということがないように、ただちに各地でも教育委員会に申し入れをしてください。特に、教育再生生首長会議に参加している自治体では「日本教科書」による接触があったかどうか、問うていく必要があります。

フジ住宅による大阪市のアンケート水増しは事後的にしかわからず、大阪市では育鵬社が採択されてしまいました。この轍を踏まないように今回はしたいと思います。








日本教科書HPで晋遊社隠し

2018-06-10 20:15:50 | 道徳教科書 中学校
5月下旬、日本教科書のホームページで、会社代表が武田義輝氏(晋遊舎会長)から、上間淳一氏に変わっていました。

■現在の日本教科書HPの「会社概要」ページ



会社登記を調べてみると、5月28日時点で、新たに5月1日付け(登記は5月22日)で、上間淳一氏が取締役と代表取締役に就任しています。しかし、武田義輝氏は、代表取締役を辞任したのではなく、そのまま代表取締役であることもわかります。(取締役2017年4月21日就任、代表取締役2017年9月1日就任)

■日本教科書の会社登記簿


従って5月28日現在、登記簿上は、代表取締役は、武田氏と上間氏の2人になっています。日本教科書HPで代表が替わったかのような表記になっていますが、これは明らかに晋遊社隠しです。

この間、日本教科書とヘイト本や児童ポルノ本を多数出版している晋遊社との一体性が指摘されたことに対する姑息な行動ではないでしょうか。

日本教科書と晋遊社とんぼ一体性については、以下の詳しく書かれています。

■リテラ記事
児童凌辱のマンガも出版、ヘイト出版社・晋遊舎が“道徳教科書”に参入! 安倍のブレーン・八木秀次がバックか
http://lite-ra.com/2018/02/post-3816_5.html

教科書展示会に行き、市民アンケートにあなたの意見を書いてください

2018-06-06 20:12:33 | 道徳教科書 中学校
教科書展示会に行き、市民アンケートにあなたの意見を書いてください

子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

* 採択してはならない教科書名と、採択してほしい教科書名を、理由と共にはっきり書いてください。
* 道徳教科書は文科省が定めた22の徳目の習得を目的にして作成されているため、どの教科書も問題があります。この資料では、特に問題のある教材と、「人権・平和・共生」の観点から比較的良い教材をあげました。教科書を見る際の参考にしてください。
* 自己評価の問題も含め、ご自分の視点で詳しく吟味し、よりましな教科書を選んでください。

今年の中学校道徳教科書採択に関する大阪府内の教科書展示会の日程表です。

大阪府教科書センターへリンク
http://www.pref.osaka.lg.jp/shochugakko/kyoukasyosenta/index.html

*************************************
   
2019年度使用、中学校道徳教科書の分析

1 特に問題があるのが<日本教科書>と<教育出版>

(1)<日本教科書>
  育鵬社の歴史・公民教科書を作成した日本教育再生機構理事長の八木秀次氏が立ち上げた出
版社で、自ら代表に就任したが、その後、代表は武田義輝氏に交代。武田義輝氏は晋遊舎会長を兼ねており、両社は事実上一体の会社。晋遊舎はヘイトスピーチ本『マンガ嫌韓流』や児童ポルノ本で知られた出版社。道徳教育を語る資格があるのか? 現在、HPでは代表が上間淳一氏になり、晋遊舎隠しがおこなわれているが、武田氏は今も代表のまま。

(2)<教育出版>
  小学校道徳教科書同様、日本会議系の道徳学者として知られる貝塚茂樹氏、柳沼良太氏が中
心で作成している。貝塚茂樹氏は育鵬社の道徳教科書パイロット版で、戦前の教育勅語教育
を全面賛美している人物。

2 各社の問題のある教材

<日本教科書> 人権侵害が顕著。
1年P.92「永久欠番42」 黒人初の大リーガーとなったロビンソンの契約条件は、差別をうけても「やり返さない勇気」を持つことだった。差別する側のことは問わず、差別される側が努力して自分の価値を認めさせることによってしか差別はなくならないと教えている。人種差別撤廃条約の理念を真っ向から否定。
1年P.141「銅像が教えてくれたこと」 日清戦争・朝鮮侵略の中心人物であった陸奥宗光を郷土の偉人として教える。
2年P.8 「14歳の責任」 14歳からは刑事責任能力が問われると罰則を強調。イジメで被害生徒を自殺させた場合、少年院送り、地元では針のむしろ、賠償金の支払いは一生続くと脅しつける。これが“心を育てる道徳教育”といえるのか?
2年 P.54「雨の日のレストラン」 長時間労働の肯定。忙しいのは自分だけではないと知り、友人たちとの会食のあと、また会社へもどって働く若者の話。
2年 P.92「キスからもらった勇気」 1919年、シベリアのポーランド孤児を日本で治療したという美談。同じころ、日本軍はシベリアのイワノフカ村で民間人を虐殺していたが、都合の悪いことは書かない。
2年 P.152「込められた想い 和解の力」 安倍首相のホノルル演説(2016.12.27)。日
米ともに謝罪のないきれいごとの演説を美化。現職首相の演説を載せているのは日本教
科書だけ。森友・加計問題で関与を疑われている現職政治家を載せるのは不適切。
3年 P.78 「自分が好きですか」 統計を見せて、外国に比べて日本の若者の自己肯定感が
低いのはなぜかと問う。保守派の場合は、日本に誇りを持たせる教育が行われていないせいだと強引に結論付けるために利用する。
3年 P.100「ライフ・ロール」 結婚した女性は、たとえ仕事をもっても家庭を優先すべき
と教える男女の役割分業・女性差別の教材。

<教育出版> 偉人伝が多く、日本自慢の教材が多いのは小学校と同じ。
(1)各学年の巻末に47都道府県にゆかりのある偉人とその言葉を紹介。戦国武将、勤王の志
士など、子どもたちのロールモデルにはふさわしくない人物が多い。
・戦国武将―伊達政宗、大友宗麟、上杉謙信、武田信玄、織田信長、徳川家康、毛利元成、前田利家、石田三成、加藤清正、真田幸村
・勤王の志士―吉田松陰、橋本左内、高杉晋作、坂本龍馬、西郷隆盛、大隈重信
  戦国武将は下剋上と戦争・殺戮・略奪にあけくれ、勤王の志士はテロを辞さなかった。子どもたちに最も伝えなければならない「命の大切さ」とは縁遠い人物たち。

(2)特に西郷隆盛を美化―これは小学校道徳教科書も同じ
3年P.164「徳の交わり~西郷どんと菅はん」 もともと武力討幕のために、西郷隆盛が幕府側の庄内藩を挑発したことには触れず、平和的で寛容な政治家として美化。

(3)在日外国人の子どもたちへの配慮がまったくない“自国中心主義・排外主義”の教材。
3年 P.70「外国人から見た日本人」 日本人のすばらしさを強調。東日本大震災の時の日本
 人の行動に対する外国人の高い評価(「我慢する精神」「秩序を守る気高い姿」など)を
紹介し、最後に「あなたは世界の人たちに胸を張れるどんな人になりたいですか?」と子どもたちに問いかけている。無言のうちに「立派な日本人になれ」と同調圧力をかける教材。こんな教科書は教室では使えない。
3年 P.150「それでも僕は桃を買う」福島県産の桃を避けるのは差別と決めつける。福島原
発事故による放射能の危険性についてはいろいろな意見があり、大阪には福島から避難してきている子どももいるのに配慮に欠ける。いじめの原因にもなる。

<学校図書>
全学年で「日本人としての自覚」を強調。愛国主義的傾向が強い。

<東京書籍>
1年 P.17「権利と義務を考えて」 個人の権利より義務の押しつけ。
2年 P.182「郷土のことを考える」 山形県は軍人の工藤俊作
3年 P.113「差別や偏見をなくすために」 第五福竜丸のことを取り上げている。平和教材ではあるが、アメリカの水爆実験による被害ということが明確でなく、差別の問題にされている。

<日本文教出版>
2年 P.120「いじめをなくすために」 罰則を持ち出して子どもを脅す。
<学研教育みらい>
2年 P.83「あなたへの質問」 日本の若者の自己肯定感の低さを強調。
2年 P.44「ヨコスカネイビーパーカー」 軍港横須賀には触れずに、地域起こしを美化。
2年 P.178「声援を力に 第72代横綱稀勢の里」 久々の日本人横綱を強調。現在の相撲界は外国人力士の活躍によって成り立っていることが明確でない。

<廣済堂あかつき>
全体として保守的。文章が長く、1時間内に消化しきれない教材が多い。

3 子どもに数値で自己評価させることの問題

中学校道徳教科書は8社すべてが子どもに自己評価させている。評価については議論があったものの、文科省は最終的には「道徳に数値評価はなじまない」として文章表記とした。ところが中学校の学習指導要領・解説では「生徒自身による自己評価」が奨励されているため、日本教科書をはじめとして5社は子どもによる自己評価を数値でさせている。

<第1のパターン>22の徳目ごとに数値評価―日本教科書、教育出版、廣済堂あかつき
<第2のパターン>一定の観点を数値評価―東京書籍、日本文教出版
<第3のパターン>文章で振り返る―光村図書、学研教育みらい、学校図書
 
 日本教科書は特に悪質。各学年の教科書の最後に「心の成長を振り返りましょう」というページを設けて、22の徳目それぞれをどの程度達成できたか、レベル1からレベル4まで「態度や行動」を自己評価させている。「愛国心」をどのレベルまで「態度と行動」に現わすことができたかを子どもに問えば、「日の丸」に敬意を表し、「君が代」をしっかり歌うように、目に見える形で表現するように強制することにしかならない。
さらに日本教科書は「理想の人物はだれか、その人物に何パーセント近づいたか」まで書かせている。特定の人物の特定の側面だけを美化した教材を学習させ、その人物をロールモデルにさせるのは、子どもたちの視野をせばめ、一面的な価値観のもとに行動させることにしかならない。

4 各社の「人権・平和・共生」教材は?

<光村図書> 小学校同様、人権教材がもっとも多い。
1年 P.42「私の話を聞いてね」 手に障害を持つアメリカの少女
1年 P.46「ユニバーサルデザイン―誰もが使いやすいものを」
1年 P.143「異文化の人々と共に生きる」
1年 P.148「考えの違いを乗り越える」
1年 P.183「親友」 男らしさ・女らしさ
2年 P.90「アダプテッド・スポーツって何だろう」 個人の条件に合わせたスポーツ
2年 P.135「明日、みんなで着よう」 いじめの被害者への連帯
2年 P.140「アンネのバラ」
2年 P.146「国際人道支援―どんな仕事があるのだろう」 国境なき医師団
2年 P.164「桃太郎の鬼退治」 鬼の立場からも考える
3年 P.60「ぼくの物語 あなたの物語」 人種差別
3年 P.68「世界の子どもたちの状況」
3年 P.94「一票を投じることの意味」 18歳選挙権
3年 P.100「社会の一員として」 年齢ごとに関係してくる権利・法律
3年 P.150「希望の義足」 ルワンダ内戦
3年 P.156「本当に意味のある国際協力とは」 

<日本文教出版>
1年 P.62「花火に込めた平和への願い」 ホノルル市と長岡市の交流
2年 P.20「最後のパートナー」 引退盲導犬 
2年 P.42「リスペクト アザーズ」 他者の尊重
2年 P.46「人権課題への取り組み」 
2年 P.48「戦争を取材する」 戦場カメラマン山本美香
3年 P.122「自分・相手・周りの人」 マタニティマークなど
3年 P.145「さまざまな性」

<東京書籍>
3年 P.144「その子の世界、私の世界」 少年兵、児童労働など
3年 P.151「子どもの権利条約」
3年 P.172「命見つめて」 第二次大戦の被害者の憎しみと許し

<学校図書>
1年 P.6「誰も知らない」 障がい児への偏見
2年 P.172「自分らしい多様な生き方を共に実現させるためにできること」 セクシュアル・マイノリティ
3年 P.36「豊かなれ阿賀の流れよ―新潟水俣病の苦悩をこえて―」

<学研教育みらい>
1年 P.65「ノーマライゼーション」
2年 P.128「ものづくり」 障がい者が使いやすいスプーン

<廣済堂あかつき>
3年 P.96「虹の国―ネルソン・マンデラ―」 アパルトヘイト

*ここにあげた教材はごく一部です。多様な観点から教材を読み、ぜひあなたの意見を教育委員会に届けてください。