子どもをテストで追いつめるな!市民の会の情報です。
10月31日、大阪市に対して「私たちの考え・要望書」を提出しました。そのとき提出した内容です。
吉村市長(当時)の新人事評価制度に関する私的メールの不存在問題
10月21日、吉村知事が行った会見に対する私たちの考え・要望書
2019年10月31日
子どもをテストで追いつめるな!市民の会
【1】吉村-大森メールは、「頭の整理のため」にとどまらず、重要な政策立案メール
(1)隠されたままの「公文書」
吉村洋文氏(前市長)は、私たちが指摘した大森不二雄特別顧問(東北大学)との新人事評価制度に関わる私的メールについて「頭の整理を行うために」行ったもので「公文書ではない」としました。しかし、大森特別顧問が教育委員会に転送した吉村ー大森メールには、2018年9月14日と2019年1月29日の2回の総合教育会議に向けて、二人のメールで方針案が作りあげられていることがわかります。以下、①②で指摘したメール内容は、意思決定に関わる重要なやり取りそのものです。
公文書管理法第4条には「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」も行政文書として作成するように求めています。地方公共団体も法の趣旨は尊重しなければなりません。吉村-大森メールは、「経緯も含めた意思決定に至る過程」そのものであり、公文書に該当することは明白です。
①学テ・給与反映方針は、大森特別顧問が吉村氏とメールで「提案」を作成
2018年8月2日、吉村市長(当時)は、「大阪市の全国学テ結果は政令指定市最下位」として、学テ・給与反映方針を示しました。8月15日には大森特別顧問が吉村氏と面談し、「原案」を示しています。翌日の8月16日、大森特別顧問は「原案」と「市長のご意見を踏まえた修正案」を市教委に送っています。さらに、大森特別顧問は、8月25日から27日まで吉村氏と何度もメールのやり取りをし「最終案」を作成し、27日には市教委に送っています。9月14日の総合教育会議で大森特別顧問が「新たな人事評価制度と学力向上データの利用について(提案)」を提案しますが、それに向けて「原案」→「修正案」→「最終案」と吉村-大森メールで決められていることがわかります。
◆2018年8月16日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「市長との面談結果を踏まえ、私の作成した資料を修正しましたので、添付ファイルします。・・・修正前が市長へお渡しした原案、修正後が市長のご意見を踏まえた修正案です。市長は、私の試案を基本的に了承されたと受け止めています。」
◆2018年8月27日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「25日~27日の市長とのメールやり取りを踏まえた最終案を添付ファイルいたします。」
②大森特別顧問が事務局素案を批判し、吉村氏が大森特別顧問との「メール協議」を受けて修正案を提示
大阪市教委は、総合教育会議での大森提案に沿って、具体的な制度設計を任されていきます。12月18日、大森特別顧問は「事務局素案にはがっかりしました。9月の総合教育会議の議論をひっくり返すものとしか、言いようがありません。」と市教委にメールしています。大森特別顧問の思い通りの案ではなかったのでしょう。すぐさま、吉村氏と大森特別顧問は、事務局案に対して巻き返しを図っていきます。12月28日、吉村氏は市教委から「市長レク」を受け、その後、大森特別顧問と「メール協議」を重ねています。
1月4日、大森特別顧問は山本教育長に「年末に市長とメール協議を重ねた結果、添付ファイルの方針(案)で進めてほしいとのご指示を頂きました。」と新たな方針案をメールで示しています。1月20日、山本教育長は、大森特別顧問に対して「事務局としては教育委員の意見も取り込みながらご相談しているものですが、あくまでも顧問、市長のお考えを伺って判断することになると思います。」とメールし、市長新方針にそって1月29日の総合教育会議に提案する事務局案を修正することになったのです。
◆2018年12月18日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「事務局素案にはがっかりしました。9月の総合教育会議の議論をひっくりがえすものとしか、言いようがありません。」
◆2019年1月4日 大森特別顧問→山本教育長メール
年末に市長とメール協議を重ねた結果、添付ファイルの方針(案)で進めてほしいとのご指示を頂きました。」
◆2019年1月22日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「早速、市長とメールのやり取りさせていただき、ご了承いただきました。」
◆2019年1月20日 山本教育長→大森特別顧問メール
「事務局としては教育委員の意見も取り込みながらご相談しているものですが、あくまでも顧問、市長のお考えを伺って判断することになると思います。」
(2)吉村前市長の「苦しすぎる」弁解
吉村氏は、行政の意思決定過程は、「行政の中でのやりとり」であり、市長が「役所に意思表示」して初めて「公務」となるとし、市長・特別顧問のやり取りと教育委員会内での審議を切り分け、吉村-大森メールは行政としての意思決定過程の外にあると主張しようとしています。
しかし、吉村-大森メールは、吉村氏と大森特別顧問が事実上の方針案を作成し、市教委に露骨に指示を出していることを証明しています。教育委員会の独立性を根幹とする教育委員会制度を無視した政治介入そのものです。吉村-大森メールは、意思決定過程の主導的位置にあったことは間違いありません。
(3)市教委も「公文書」と認めないわけにはいかなかった
闇の中にあった吉村-大森メールの存在が明らかとなったのは、大森特別顧問が、その内容の一部を市教委に転送したからでした。市教委は、このときに初めて、吉村氏が私的メールで「意思決定に関する内容」をやりとりしていることを知り、公文書として管理しました。しかし、大森特別顧問が市教委に転送した内容が、吉村-大森メールの全てかどうか、全く把握していませんでした。大森特別顧問から転送されて初めて公文書として確認するというのは、公文書管理のあり方として極めて杜撰だと言わざるを得ません。
私たちが大阪市教委に大森特別顧問から転送されたメールを公文書公開請求をしたところ、市教委は「審議、検討又は協議に関する情報」だとして、「公にすることにより市民等の間に混乱を生じさせるおそれがある」「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」との理由で「非公開」としました。市民にはすぐに公開できない「意思決定に関わる内容」であることを市教委も認めているのです。
(4)それでも居直る吉村前市長
吉村氏は、吉村-大森メールを「頭の整理を行う」ものとしながらも、記者からメール内容の公開を求められると「全くそのつもりはない」としました。メール内容を公開しない中での吉村氏の主張は、全く説得力を持ちません。吉村氏は、少なくとも上記の①②に関する全てのメールを公開し、自らの主張を行うべきです。
【2】大阪市には市長の私的メールに含まれる公的内容を公文書として管理するルールがない
(1)市長と「特別顧問とのやりとり」は公務そのもの
吉村氏は、「特別顧問とのやりとり」について個人的なもので「公務ではない」としました。これは全くのごまかしです。特別顧問は、「市長が選任」し、「市長の委託」を受けて、「調査及び助言業務」を行うものとされています(「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」)。特別顧問への報酬も大阪市から支払われており、2018年度の大森特別顧問の報酬は45万9000円でした。
吉村氏は、「頭の整理のために」大森特別顧問と相談したと述べていますが、その内容は特別顧問の業務となる「高度の専門的な知識経験」に基づく「助言業務」そのものです。それはれっきとした公務です。当然、公文書として管理する必要があります。
(2)吉村氏による私的メールの使用は脱法行為
吉村氏には、市長として大阪市の公用PCが与えられており、それを活用すれば公文書に該当するメールは公用フォルダに保存することができました。しかし、吉村氏はあえて公用PCを使用せず、私的PCでやりとりをしていました。その結果、吉村市長メールの中で公文書として保管されているものは3件だけでした。
大阪市職員は、公務には公用PCを活用し、メールのやりとりは公用フォルダに保管することになっています。さらには大阪市担当部署が定期的に照会をし、保管し忘れがないかチェックをしています。もし、きちんと保管されていなければ指導の対象となります。しかし、同様のことは市長にも適用されて良いはずですが、市長は私的アドレスを使い続けていたのです。大阪市政策企画室もそのことを市長に指摘せず見逃していました。私的アドレスを使うことは、セキュリティー上も大きなリスクがあります。
なぜ、吉村市長は公用アドレスを使わなかったのか。吉村氏は、本来公用PCを使うべきところをあえて私的メールを使い脱法行為を行った疑惑が浮上します。
(3)私的メールの市長による市長の判断での公文書管理は恣意的運用の温床
吉村氏は、会見で「メールが私用か公用かを問わず、内容が役所としての意思決定に関わるものであれば、公文書として保管すべきだ。」と述べています。しかし、吉村氏は、私的メールを一切公用フォルダに残していない中で、どのようにして公文書を特定し管理できるのでしょうか。
現状では、市長私的メールの中のどの部分が公文書情報に当たるか判断できるのは市長だけです。市長は、自分のメールを自分の判断で公文書かどうかを決めることができ、それ自身が公文書判断の恣意的運用を可能にします。市長の私的メールであっても、特別顧問等公務に関わる人物とのメールのやり取りは、恣意的な判断を防ぐ観点から専門的技術的な知見を背景とした第三者的な立場による公文書判断の体制作りが急務です。
(4)だれが市長の私的アドレスにある公的なメールを公文書として適切に管理するのか。
たとえ吉村氏が私的メールを使わざるを得ない状況があったとしても、自分の公用アドレスや大阪市政策企画室のアドレスにメールを転送して、大阪市が文書を管理できるようにできたはずです。それさえも行わなかった吉村氏の行為は、公文書管理に対する怠慢そのものです。
このような現在の公文書管理のあり方そのものが問題です。どのようにして市長の私的メールの中から公文書を作成し、管理していくのか、大阪市は明らかにしなければなりません。
大阪市公文書管理条例第4条3には「本市の機関は、審議又は検討の内容その他の意思決定の過程に関する事項であって意思決定に直接関わるものについては、事案が軽微である場合を除き、公文書を作成しなければならない。」とあり、2011年4月の本条例改定に伴い公文書作成が義務規定となりました。吉村市長と大阪市政策企画室の対応は、明らかに大阪市公文書管理条例に違反する重大な問題です。
【3】学力テスト結果を校長・教員評価、学校予算に反映する新制度の議論をオープンに!
吉村氏が提起した学力テスト結果で校長・教員を評価し、学校予算に差を付ける新制度は、大阪市の教育をますますテスト中心の教育に変えていき、学校を子どもたちにとって息苦しい場所にしていく重大な問題です。
吉村氏は、新制度の議論の過程は、「総合教育会議なり教育委員会議ですればよい」と述べていますが、この問題を議論した12回の教育委員会議は全て非公開となっています。配付資料も肝心な部分は墨塗りの状態です。このままでは、当事者である保護者、子ども、教職員には、結論だけが知らされ、政策立案過程で意見を表明することができません。
吉村氏と市教委は、新制度の審議経過と内容について、保護者、子ども、教職員、市民に公開し、広く議論を呼びかけるべきです。そのためには、吉村-大森メールを全面公開するべきです。
【4】私たちの要求
ここ数年、公文書の隠蔽や改ざんが大きく取り上げられ、行政の公文書の扱いに厳しい目が向けられてきました。しかし大阪市では、市長が私的PCの私的アドレスで「意思決定に関わる内容」のやりとりをしていても、現状ではその内容が公文書として管理されないままです。市長は、後日、行政の意思決定過程が検証されたり、市長の教育行政への介入について追及されたりすることから逃れることができます。これは公文書の隠匿そのものです。
私たちは、松井市長と大阪市、大阪市教育委員会に以下の内容を要求します。早急に検討し、回答を求めます。
(1)松井市長は、吉村氏の私的メールの使用問題について見解を明らかにすること。
(2)大阪市は、市長と特別顧問とのメールやり取りを公務として認定し公文書として管理すること。
(3)大阪市は、新人事評価制度に関する吉村-大森メールを公文書として管理し公開すること。
(4)大阪市教委は、吉村-大森メールの中で「非公開」にしている内容をすべて公開すること。
(5)大阪市は、市長の私的メールにある公的なメールを公文書として管理するルールをつくること
10月31日、大阪市に対して「私たちの考え・要望書」を提出しました。そのとき提出した内容です。
吉村市長(当時)の新人事評価制度に関する私的メールの不存在問題
10月21日、吉村知事が行った会見に対する私たちの考え・要望書
2019年10月31日
子どもをテストで追いつめるな!市民の会
【1】吉村-大森メールは、「頭の整理のため」にとどまらず、重要な政策立案メール
(1)隠されたままの「公文書」
吉村洋文氏(前市長)は、私たちが指摘した大森不二雄特別顧問(東北大学)との新人事評価制度に関わる私的メールについて「頭の整理を行うために」行ったもので「公文書ではない」としました。しかし、大森特別顧問が教育委員会に転送した吉村ー大森メールには、2018年9月14日と2019年1月29日の2回の総合教育会議に向けて、二人のメールで方針案が作りあげられていることがわかります。以下、①②で指摘したメール内容は、意思決定に関わる重要なやり取りそのものです。
公文書管理法第4条には「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」も行政文書として作成するように求めています。地方公共団体も法の趣旨は尊重しなければなりません。吉村-大森メールは、「経緯も含めた意思決定に至る過程」そのものであり、公文書に該当することは明白です。
①学テ・給与反映方針は、大森特別顧問が吉村氏とメールで「提案」を作成
2018年8月2日、吉村市長(当時)は、「大阪市の全国学テ結果は政令指定市最下位」として、学テ・給与反映方針を示しました。8月15日には大森特別顧問が吉村氏と面談し、「原案」を示しています。翌日の8月16日、大森特別顧問は「原案」と「市長のご意見を踏まえた修正案」を市教委に送っています。さらに、大森特別顧問は、8月25日から27日まで吉村氏と何度もメールのやり取りをし「最終案」を作成し、27日には市教委に送っています。9月14日の総合教育会議で大森特別顧問が「新たな人事評価制度と学力向上データの利用について(提案)」を提案しますが、それに向けて「原案」→「修正案」→「最終案」と吉村-大森メールで決められていることがわかります。
◆2018年8月16日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「市長との面談結果を踏まえ、私の作成した資料を修正しましたので、添付ファイルします。・・・修正前が市長へお渡しした原案、修正後が市長のご意見を踏まえた修正案です。市長は、私の試案を基本的に了承されたと受け止めています。」
◆2018年8月27日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「25日~27日の市長とのメールやり取りを踏まえた最終案を添付ファイルいたします。」
②大森特別顧問が事務局素案を批判し、吉村氏が大森特別顧問との「メール協議」を受けて修正案を提示
大阪市教委は、総合教育会議での大森提案に沿って、具体的な制度設計を任されていきます。12月18日、大森特別顧問は「事務局素案にはがっかりしました。9月の総合教育会議の議論をひっくり返すものとしか、言いようがありません。」と市教委にメールしています。大森特別顧問の思い通りの案ではなかったのでしょう。すぐさま、吉村氏と大森特別顧問は、事務局案に対して巻き返しを図っていきます。12月28日、吉村氏は市教委から「市長レク」を受け、その後、大森特別顧問と「メール協議」を重ねています。
1月4日、大森特別顧問は山本教育長に「年末に市長とメール協議を重ねた結果、添付ファイルの方針(案)で進めてほしいとのご指示を頂きました。」と新たな方針案をメールで示しています。1月20日、山本教育長は、大森特別顧問に対して「事務局としては教育委員の意見も取り込みながらご相談しているものですが、あくまでも顧問、市長のお考えを伺って判断することになると思います。」とメールし、市長新方針にそって1月29日の総合教育会議に提案する事務局案を修正することになったのです。
◆2018年12月18日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「事務局素案にはがっかりしました。9月の総合教育会議の議論をひっくりがえすものとしか、言いようがありません。」
◆2019年1月4日 大森特別顧問→山本教育長メール
年末に市長とメール協議を重ねた結果、添付ファイルの方針(案)で進めてほしいとのご指示を頂きました。」
◆2019年1月22日 大森特別顧問→川本教育政策課長メール
「早速、市長とメールのやり取りさせていただき、ご了承いただきました。」
◆2019年1月20日 山本教育長→大森特別顧問メール
「事務局としては教育委員の意見も取り込みながらご相談しているものですが、あくまでも顧問、市長のお考えを伺って判断することになると思います。」
(2)吉村前市長の「苦しすぎる」弁解
吉村氏は、行政の意思決定過程は、「行政の中でのやりとり」であり、市長が「役所に意思表示」して初めて「公務」となるとし、市長・特別顧問のやり取りと教育委員会内での審議を切り分け、吉村-大森メールは行政としての意思決定過程の外にあると主張しようとしています。
しかし、吉村-大森メールは、吉村氏と大森特別顧問が事実上の方針案を作成し、市教委に露骨に指示を出していることを証明しています。教育委員会の独立性を根幹とする教育委員会制度を無視した政治介入そのものです。吉村-大森メールは、意思決定過程の主導的位置にあったことは間違いありません。
(3)市教委も「公文書」と認めないわけにはいかなかった
闇の中にあった吉村-大森メールの存在が明らかとなったのは、大森特別顧問が、その内容の一部を市教委に転送したからでした。市教委は、このときに初めて、吉村氏が私的メールで「意思決定に関する内容」をやりとりしていることを知り、公文書として管理しました。しかし、大森特別顧問が市教委に転送した内容が、吉村-大森メールの全てかどうか、全く把握していませんでした。大森特別顧問から転送されて初めて公文書として確認するというのは、公文書管理のあり方として極めて杜撰だと言わざるを得ません。
私たちが大阪市教委に大森特別顧問から転送されたメールを公文書公開請求をしたところ、市教委は「審議、検討又は協議に関する情報」だとして、「公にすることにより市民等の間に混乱を生じさせるおそれがある」「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」との理由で「非公開」としました。市民にはすぐに公開できない「意思決定に関わる内容」であることを市教委も認めているのです。
(4)それでも居直る吉村前市長
吉村氏は、吉村-大森メールを「頭の整理を行う」ものとしながらも、記者からメール内容の公開を求められると「全くそのつもりはない」としました。メール内容を公開しない中での吉村氏の主張は、全く説得力を持ちません。吉村氏は、少なくとも上記の①②に関する全てのメールを公開し、自らの主張を行うべきです。
【2】大阪市には市長の私的メールに含まれる公的内容を公文書として管理するルールがない
(1)市長と「特別顧問とのやりとり」は公務そのもの
吉村氏は、「特別顧問とのやりとり」について個人的なもので「公務ではない」としました。これは全くのごまかしです。特別顧問は、「市長が選任」し、「市長の委託」を受けて、「調査及び助言業務」を行うものとされています(「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」)。特別顧問への報酬も大阪市から支払われており、2018年度の大森特別顧問の報酬は45万9000円でした。
吉村氏は、「頭の整理のために」大森特別顧問と相談したと述べていますが、その内容は特別顧問の業務となる「高度の専門的な知識経験」に基づく「助言業務」そのものです。それはれっきとした公務です。当然、公文書として管理する必要があります。
(2)吉村氏による私的メールの使用は脱法行為
吉村氏には、市長として大阪市の公用PCが与えられており、それを活用すれば公文書に該当するメールは公用フォルダに保存することができました。しかし、吉村氏はあえて公用PCを使用せず、私的PCでやりとりをしていました。その結果、吉村市長メールの中で公文書として保管されているものは3件だけでした。
大阪市職員は、公務には公用PCを活用し、メールのやりとりは公用フォルダに保管することになっています。さらには大阪市担当部署が定期的に照会をし、保管し忘れがないかチェックをしています。もし、きちんと保管されていなければ指導の対象となります。しかし、同様のことは市長にも適用されて良いはずですが、市長は私的アドレスを使い続けていたのです。大阪市政策企画室もそのことを市長に指摘せず見逃していました。私的アドレスを使うことは、セキュリティー上も大きなリスクがあります。
なぜ、吉村市長は公用アドレスを使わなかったのか。吉村氏は、本来公用PCを使うべきところをあえて私的メールを使い脱法行為を行った疑惑が浮上します。
(3)私的メールの市長による市長の判断での公文書管理は恣意的運用の温床
吉村氏は、会見で「メールが私用か公用かを問わず、内容が役所としての意思決定に関わるものであれば、公文書として保管すべきだ。」と述べています。しかし、吉村氏は、私的メールを一切公用フォルダに残していない中で、どのようにして公文書を特定し管理できるのでしょうか。
現状では、市長私的メールの中のどの部分が公文書情報に当たるか判断できるのは市長だけです。市長は、自分のメールを自分の判断で公文書かどうかを決めることができ、それ自身が公文書判断の恣意的運用を可能にします。市長の私的メールであっても、特別顧問等公務に関わる人物とのメールのやり取りは、恣意的な判断を防ぐ観点から専門的技術的な知見を背景とした第三者的な立場による公文書判断の体制作りが急務です。
(4)だれが市長の私的アドレスにある公的なメールを公文書として適切に管理するのか。
たとえ吉村氏が私的メールを使わざるを得ない状況があったとしても、自分の公用アドレスや大阪市政策企画室のアドレスにメールを転送して、大阪市が文書を管理できるようにできたはずです。それさえも行わなかった吉村氏の行為は、公文書管理に対する怠慢そのものです。
このような現在の公文書管理のあり方そのものが問題です。どのようにして市長の私的メールの中から公文書を作成し、管理していくのか、大阪市は明らかにしなければなりません。
大阪市公文書管理条例第4条3には「本市の機関は、審議又は検討の内容その他の意思決定の過程に関する事項であって意思決定に直接関わるものについては、事案が軽微である場合を除き、公文書を作成しなければならない。」とあり、2011年4月の本条例改定に伴い公文書作成が義務規定となりました。吉村市長と大阪市政策企画室の対応は、明らかに大阪市公文書管理条例に違反する重大な問題です。
【3】学力テスト結果を校長・教員評価、学校予算に反映する新制度の議論をオープンに!
吉村氏が提起した学力テスト結果で校長・教員を評価し、学校予算に差を付ける新制度は、大阪市の教育をますますテスト中心の教育に変えていき、学校を子どもたちにとって息苦しい場所にしていく重大な問題です。
吉村氏は、新制度の議論の過程は、「総合教育会議なり教育委員会議ですればよい」と述べていますが、この問題を議論した12回の教育委員会議は全て非公開となっています。配付資料も肝心な部分は墨塗りの状態です。このままでは、当事者である保護者、子ども、教職員には、結論だけが知らされ、政策立案過程で意見を表明することができません。
吉村氏と市教委は、新制度の審議経過と内容について、保護者、子ども、教職員、市民に公開し、広く議論を呼びかけるべきです。そのためには、吉村-大森メールを全面公開するべきです。
【4】私たちの要求
ここ数年、公文書の隠蔽や改ざんが大きく取り上げられ、行政の公文書の扱いに厳しい目が向けられてきました。しかし大阪市では、市長が私的PCの私的アドレスで「意思決定に関わる内容」のやりとりをしていても、現状ではその内容が公文書として管理されないままです。市長は、後日、行政の意思決定過程が検証されたり、市長の教育行政への介入について追及されたりすることから逃れることができます。これは公文書の隠匿そのものです。
私たちは、松井市長と大阪市、大阪市教育委員会に以下の内容を要求します。早急に検討し、回答を求めます。
(1)松井市長は、吉村氏の私的メールの使用問題について見解を明らかにすること。
(2)大阪市は、市長と特別顧問とのメールやり取りを公務として認定し公文書として管理すること。
(3)大阪市は、新人事評価制度に関する吉村-大森メールを公文書として管理し公開すること。
(4)大阪市教委は、吉村-大森メールの中で「非公開」にしている内容をすべて公開すること。
(5)大阪市は、市長の私的メールにある公的なメールを公文書として管理するルールをつくること