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大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

小学校道徳教科書 「もうひとつの指導案」~人権を大切にする道徳教育研究会HP開設 

2018-07-07 09:46:01 | 道徳教科書 小学校
今年度から使用が始まっている小学校道徳教科書に関して
「もうひとつの指導案」を提供するHPが立ち上がっています。

ご活用ください。次のURLから見ることができます。

https://www.doutoku.info/


「人権を大切にする道徳教育研究会」HPからの引用

「道徳」が「特別の教科 道徳」となり、小学校では2018年4月から検定教科書を使った授業が始まりました。また教員は何らかの評価をしなければなりません。
小学校の道徳教科書は、基本的に文部科学省の道徳学習指導要領が定めた22の徳目(内容項目)にそって編集されていますが、その多くは戦前の「修身」教育で示されていたものと共通しています。


なぜ、「もうひとつの指導案」が必要なのか?-

発行されている8社の教科書にはそれぞれ特徴はありますが、「人権の視点」から見ていくと、いろいろな問題点が浮かび上がってきます。
まず、具体的な人権問題にかかわる教材が極めて少なく、子どもたちが人権問題について考える機会がほとんどありません。
他方で、「自己犠牲」「公共の精神」の大切さは強調されており、「公」(集団や国家)が優先され、民主主義社会の基礎である「個の尊重」が軽視されています。
また、「伝統文化」「愛国心」にかかわる教材も多く、「日本のすばらしさ」「日本人の優秀さ」が強調されています。そのため、外国や外国人に対する優越感や排外意識を身につけてしまうことも十分に考えられます。
このような教科書を使って、ねらいや設問などの指針通りに授業をしていけば、子どもたちは知らず知らずのうちに、「個」より「全体」、「多様性」より「一元的価値」、「共生」より「排他」という偏った考えに陥ってしまうことも懸念されます。
その結果、「いじめ」や「差別」の解消につながるどころか、「いじめ」や「差別」を助長することにもなりかねません。
また、最初から目指す答えが明らかであるかのような教材、一つの答えを誘導しているかのような教材など、道徳の命である「考え、議論する」教材としてふさわしくないと思われるものも散見します。
そこで私たちは、道徳教科書を使いつつも、それぞれの教材の問題点を明らかにするとともに、その問題点を最小化し、子どもたちがより豊かに考えを深めることのできるような授業展開の方法を研究し、このウェブサイトに提示したいと考えました。

私たちの「もうひとつの指導案」の特徴-

私たちが道徳教育で大切にしたいものは、“人権・平和・共生”です。
世界中のすべての人が大切にされる社会のあり方を考え議論し、共に主権者として育つ道徳教育をめざします。
学習指導要領では「考え、議論する道徳」を推奨し、文部科学省は教科書に限らず広く教材を使用して欲しい、指導方法を抑制的に考える必要はないとも言っています。
そのような意味からも、教員それぞれの工夫が求められています。
この「道徳教科書/もうひとつの指導案-ここが問題・こうしてみたら?」では、各教材の問題点を明らかにし、その改善のヒントを提案し、必要に応じて補充資料を紹介します。
私たちは、現場教員のみなさんが私たちの提案を参考にして、自由に授業展開を考えてくださることが大切だと考えています。
ですから「もうひとつの指導案」と銘打ってはいますが、通常のような細かな授業案にはしていません。
また、「評価」の具体例を示す欄も設けていません。
これは教材に示された「徳目」にそって評価することによって、結局は一定の結論に導くような誘導的な授業になることを防ぐためです。
「評価」は「徳目」のものさしによってではなく、子どもたちが真剣に考えたことそのものへの「評価」であるべきだと私たちは考えます。
このウェブサイトは、「人権を大切にする道徳教育研究会」に集まった元教員や研究者が核となって運営しています。
まだまだ不十分ではありますが、趣旨に賛同してくださったみなさんが積極的に活用してくださり、授業展開の一助となれば幸いです。

なぜ、教育出版に安倍首相の写真?

2018-02-12 06:12:32 | 道徳教科書 小学校
教育出版の小学校道徳教科書には、安倍首相がボブスレーに乗り、「裏ピースサイン」(差別的表現)をしている写真が大々的に掲載されました。私たちは、教材文等は関係のない安倍首相の写真が掲載されているだけでなく、しかもその写真の安倍首相が差別的表現をしていることを問題にしてきました。

安倍首相の写真が掲載されたのは、教育出版5年にある「下町ボブスレー~町工場からのちょう戦」という教材でした。教材文は、東京都太田区の若い経営者が集まり「下町ボブスレー制作プロジェクト」を立ち上げ、ボブスレーを作りあげ、全日本選手権で優勝するまでになりました。その後、平昌オリンピックでジャマイカチームが、そのボブスレーを採用するまでになったというものです。子どもたちに、大田区の町工場の「ネットワーク」「プライド」を読み取らせ「国や郷土を愛する」気持ちを持たせるための教材でした。

オリンピックの直前、ジャマイカチームは下町ボブスレーを不採用にし、ラトビア製を使用することを決めました。これは、ジャマイカチームが「スピードが遅い」「規格違反で失格のリスクがある」などを理由にしたものです。先月に行われた2度の機体検査に不合格になったという事実もありました。

しかし、下町ボブスレーのプロジェクト推進委員会(以下、「下町ボブスレー推進委」)は、6800万円の損害賠償を求めると報道されています。報道では、下町ボブスレーは、日本代表にもオファーを出し続けていたが、ことごとく断られています。具体的な契約内容は明らかになっていませんが、下町ボブスレーの性能に問題があったことが伺えます。

契約問題や性能問題に踏み込む情報を持っていませんので、これ以上のことはわかりません。今回明らかになったことを通じて、なぜ、安倍首相がボブスレーに乗ってる写真が載っていたのか、教育出版道徳教科書にそれが大々的に採用されたのか、少しずつ分かってきました。

安倍首相は、「下町ボブスレー推進委」と、極めて親しい関係にありました。同推進委ゼネラルマネジャーの細貝淳一氏は、安倍首相に最も影響力のある中小企業社長と言われています。それを証明するかのように、2013年2月の国会施政方針演説で細貝氏の名前を挙げて下町ボブスレーをPRしました。安倍首相は実際に下町ボブスレー制作現場の視察にも行っています。

また、政府は「下町ボブスレー推進委」に対して「経産省JAPANブランド育成支援事業」として多額の補助金(2000万円を上限)を出しています。大田区も1000万円の補助金を出しています。さらには、安倍首相が支援したことで、100社以上のスポンサーがつくことになりました。

「下町ボブスレー推進委」の公式ツイッターは、拝外主義的内容に満ちていました。最近こそ、そういった投稿は少ないですが、2015年ぐらいは、韓国のボブスレー-チームを揶揄し、「笑い者」にする投稿があったり、平昌オリンピック準備が遅れているとする「ネトウヨ」投稿を引用するなどしていました。オリンピックを目指す団体の公式ツイッターとしては極めて異様です。

下町ボブスレーは、安倍首相が思想的にも共鳴し、全面的にバックアップするプロジェクトだったと考えられます。教育出版道徳教科書に安倍首相がボブスレーに乗っている写真が掲載されたのは、安倍首相と「下町ボブスレー推進委」との親密な関係が背景にあり、教科書への掲載は教育出版による「忖度」であったと考えられます。