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子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

【山口県教委】日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する

2024-10-06 17:34:51 | 2024中学校教科書採択
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまの山口県教育委員会への抗議文です。


日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する

山口県教育委員会が、2025年度から4年間使用する中学校公民教科書に育鵬社版を採択したことにつき、育鵬社版公民教科書の問題点を以下具体的に列挙して、問題の根拠を踏まえて不当採択に抗議する。

1.日本国憲法の基本原則を中心に置かず例外的な内容を大きく取り上げているため、生徒が基本原則の学習に混乱をきたすおそれがあること

(例1)国民主権の原則の説明の場面で、例外的な天皇制を大きく取り上げているために、憲法に即して国民主権を理解正しく理解できない。
(例2)平和主義の原則の説明の場面で、例外的な自衛隊、日米安保条約を大きく取り上げているために、憲法に即して平和主義を正しく理解できない。
(例3)基本的人権の尊重の説明の場面で、例外的な公共の福祉を大きく取り上げているために、憲法に即して基本的人権を正しく理解できない。

2.育鵬社独自の「一面的・一方的」な記述が、学術研究に基づく「多面的・多角的」
な学習内容の理解を妨げるために、生徒の社会認識をゆがめるおそれがあること

(例1)学習指導要領に「核兵器などの脅威に着目させ」とあるが、核兵器の脅威について具体的に記述されていない。
(例2)平和主義を学習する場面で、戦後憲法が果たしてきた役割に触れず、平和維持手段は防衛力だと一面的・一方的な記述をしている。
軍事的緊張を緩和する方法として軍事力の重要性を一面的・一方的に記述しているので、平和主義を多面的・多角的に学ぶことはできない。

3.育鵬社版教科書は日本国憲法が重視している「個人の尊重」を軽視しているので、生徒は日本国憲法に即して「個人の尊重」を正しく理解できないこと

(例1)「個人の尊重」を学ぶ場面で、古代ギリシャのポリス市民が防衛義務を負っていた事例を例外的に大きく取り上げることで、「個人の尊重」を犠牲にして「戦場に行く義務がある」かのような理解に導く記述は日本国憲法13条24条に違反する内容である。


4.育鵬社版教科書では教科書内容の配列が日本国憲法を正しく理解できない構成になっているので、なぜ憲法が3原則を重視しているのかを理解できないこと

(例1) 大日本帝国憲法を高く評価した後に日本国憲法がGHQによって押し付けられた問題があると否定する記述をしているので、生徒は憲法を否定的にとらえる。
(例2) 国民主権を学習するページの冒頭で「国民主権」を「国民としての自覚」と言い換え、天皇を尊重することが重要だとの内容が記述されているので、国民主権の前提が天皇尊重だと誤って理解する危険性がある。
(例3) 人権を学習するページでは、人権を「古くから民を大切にする伝統」と言い換え、人権の意味を誤解する危険性がある。
(例4) 平和主義の説明に自衛隊や安保体制、国防の重要性が大量に記述されているので、平和主義を武力による自衛ととらえる危険性がある。

5.育鵬社版公民教科書は立憲主義の理解を妨げ、意図的に憲法改正に強引に誘導することで、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている教育公務員に99条違反を強いるおそれがあること

(例1) 育鵬社、自由社以外の公民教科書は「憲法に基づく政治を行うことで権力の濫用を防ぐ考え方を立憲主義という」と適切に説明する。しかし、育鵬社は「憲法にのっとって国を運営することを立憲主義という」説明だけなので、「立憲主義」と「権力の濫用防止」との関係が正しく理解できない不適正な説明である。

(例2) 育鵬社版は各国の改正手続きや厳密さには整合性がないことを説明せずに、憲法を改正しないことが異例だから改正が必要だと強引に憲法改正に導く内容である。

(例3) 単元の終わりに「今後は、各院に設置された憲法審査会で憲法改正原案の審査が行われ、国会の議決を経て、国民投票による改正の是非が諮られる」と記述している。しかし、現実の政治の中では憲法改正原案が提出される見込みはない。育鵬社版の記述は生徒に誤った理解をさせる内容の教科書である。

6.まとめ
 育鵬社版公民教科書は以上指摘した以外にも「基本的人権より義務を重視する」「国民としての自覚を押し付ける」「国民の具体的な権力行使を軽視する」「権利よりも公共の福祉、義務を重視する」「子どもの権利を制限する必要」「家族の役割を押し付ける」「性別役割分担を肯定する」「LGBT、SOGI、性の多様性、性的指向、性自認の説明がない」「外国人に人権がないと誤解しかねない記述」「障害者差別解消法、合理的配慮の説明がない」など、「一面的、一方的」な記述が多く、生徒の「多角的・多面的な」理解を阻害する内容が多数ある。

このように育鵬社版公民教科書は内容が不正確であったり、一方的な考えに基づく一面的な記述であったりして、生徒の学習権を保障する教科書として著しくバランスに欠けている。私たちはこのような不適切な教科書を採択したことに対して強く抗議をし、改めて採択をやり直して、育鵬社版公民教科書を採択しないよう求める。


【岩国市・和木町】日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版歴史教科書の採択に強く抗議する

2024-10-06 17:30:56 | 2024中学校教科書採択
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまから岩国市・和木町・山口県教育委員会への抗議文です。

日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版歴史教科書の採択に強く抗議する
 
岩国市教育委員会が、2025年度から管内市立中学校において4年間使用する中学校歴史教科書に育鵬社版を採択したことにつき、この教科書の問題点を具体的に列挙して根拠を示し、採択に抗議する。とりわけ、近代史についての育鵬社版歴史教科書の問題点を以下に示す。
・忠君愛国の説明がなく教育勅語を肯定している。
・南京事件と記述し、虐殺を否定する記述。   
・戦前のプロパガンダ「大東亜戦争は自存自衛のため」を無批判的に記述している。
・戦時下の植民地支配の説明がわずか2行しかない。
・「天皇の聖断で戦争が終わった」と一方的な見解を押し付けている。
・日本国憲法はGHQの一方的な押し付けと主張する記述となっている。
・沖縄の基地問題の記述がない。
・アジア太平洋戦争に関わるアジア諸国への戦後補償についての記述がない。
以上のように例示しただけでも育鵬社版歴史教科書は、日本国憲法及び民主主義の理念に反する歪んだ歴史認識を育てる教科書であることがわかる。このことを理解している教育委員会なら、育鵬社版歴史教科書を採択できないはずである。教育委員会が生徒に、日本の侵略戦争の事実を否定し、国際問題の平和的な解決を軽視するような教科書による学習を強いることは、生徒に間違った歴史認識を育てるので、生徒にとっても日本の将来にとっても重大な問題である。国際社会から厳しい批判を受けても、その理由を理解できない市民を育てるからである。

私たちは岩国市教育委員会が、教科書採択において生徒の学習権を保障する立場に立ち、このような問題の多い教科書からより適切な教科書に変更することを要望する。
 私たちは、岩国市教育委員会の今回の育鵬社版歴史教科書の採択に対し強く抗議するとともに、改めて採択をやり直し、育鵬社版歴史教科書を採択しないよう求める。





加賀市の育鵬社歴史・公民教科書、日本教科書道徳教科書の再々採択に抗議する

2024-09-28 15:20:57 | 2024中学校教科書採択
いしかわ教育総合研究所所長の抗議声明です。

加賀市の育鵬社歴史・公民教科書、日本教科書道徳教科書の再々採択に抗議する

 加賀市教育長 島谷千春殿
 加賀市教育委員会 委員各位

 いしかわ教育総合研究所は2015年以来加賀市に対し、育鵬社の中学校歴史・公民教科書、日本教科書株式会社の中学校道徳教科書の問題点を指摘し、3教科書の採択停止を求めてきた。しかるに加賀市は2020年度採択において、これら問題3教科書を再採択し、さらに本2024年採択では同3教科書を再々採択した。いしかわ教育総合研究所は加賀市の子どもたちがこれら問題の多い教科書で学ばされている状況を深く憂慮している。

 良く知られているように、前回中学校教科書採択2020年において、横浜市や大阪府下諸都市など大手採択区のほとんどが育鵬社教科書の再採択を見送り、同社教科書の約10%あった全国採択率は約1%まで激減した。これは育鵬社教科書の問題点が広く知られるようになった結果と思われる。それにもかかわらず金沢・小松・加賀の石川県3市が育鵬社教科書を再採択した異様さに、全国から不審の眼差しが向けられた。本2024年、育鵬社教科書の凋落はさらに進行し、2011年以来の採択区だった石垣市・与那国町、大阪府下で唯一再採択していた泉佐野市、また金沢市までが採択を停止した。その中で再々採択を断行した小松市と加賀市の突出が、一段と全国の耳目を集めている。

育鵬社歴史教科書の問題点は、執筆者の学識欠如による間違いの多さと、客観的批判に耐えない偏狭な国家主義的叙述にある。前回2020年採択のとき、いしかわ教育総合研究所が加賀市への抗議声明で指摘した、神武天皇を天孫ニニギの3代目(実は4代目)とする過ちなどは今回の新版で直されたが(抗議声明の影響?)、高句麗の3世紀領域図(実は4世紀)やフェノロサと岡倉天心による法隆寺救世観音開扉1884年(実は1886年)とする記事など間違いは他にも多数残っている。また、ネルーや孫文が日露戦争における日本の勝利に喜んだことのみ取り上げ、その後彼らが日本のそれからの動きに失望したことを記さない(他社教科書は記している)など、偏狭な国家主義的叙述は変わっていない。

育鵬社公民教科書の問題点は、偏狭な国家主義的社会観と人権意識の低さにある。前回採択のとき、いしかわ教育総研が加賀市への抗議声明で指摘した曽野綾子氏の冒頭エッセイは今回の新版では削除された(これも抗議声明の影響?)。同エッセイの「地球市民など幻想で国際人になる前に日本人であれ」という主張が、新型コロナ・パンデミック下での医療従事者闘病者支援オンラインコンサートにおけるレディ・ガガさんの「私はアメリカ人であると同時に地球市民」という発言が共感を呼んでいる世界で、いかに時代錯誤なものかを抗議声明は指摘した。しかし時代錯誤のエッセイがはずされても、天皇の専制支配を定めた大日本帝国憲法を美化し、主権在民・男女の平等・基本的人権を初めてもたらした日本国憲法を、「押し付け」のみを強調し貶める記述など、偏狭な国家主義は変わっていない。また人権について云えば、子どもの権利条約の説明に同条約の核心である「子どもの意見表明権」への言及がないなど、その見識の低さは際立っている。

 日本教科書道徳教科書は2020年の旧版において、「差別に抵抗しない勇気」が讃えられ、いじめをしてはいけない理由に法律的・社会的制裁のみが列挙されるといった異様さに、採択区が栃木県大田原市と加賀市のみという散々な状況だった。本2024年も東大阪市がなぜか採択に踏み切ったが、その状況は大して変わっていない。

日本教科書道徳教科書の問題点も、偏狭な国家主義と人権意識の低さにある。2024年度新版では上記の異様な記事は消去され(これも抗議声明の影響?)LGBT問題が取り上げられるなど見かけ上の「現代化」の跡も見られる。しかしアジアへの侵略思想を鼓舞した吉田松陰の讃美に紙幅を費やし、阿賀野川水俣病訴訟で企業の責任を問わずそれを個人と自然の一般論とするなど、本質的なものは何も変わっていない。

今日の教科書問題は、1993年の河野談話、1995年の村山談話に危機感を抱いた国家主義者たちが、1997年「新しい歴史教科書をつくる会」を立ち上げたことに端を発する。「新しい歴史教科書をつくる会」は2006年に分裂し、そのうちの一派が故・安倍晋三氏の口利きで育鵬社を造った。日本教科書株式会社もそういった流れの中にある。その退行的で不毛な動きと今日の日本の閉塞状況は決して無関係ではないであろう。

加賀市の昨今の小中学校教育は、人文社会科目を極小化した職能教育であるSTEAM教育を、学習指導要領との整合性や人的リソースの供給に疑問のもたれるまま標榜するなど、自然体を失しているように感じられる。問題のある3教科書を、全国からの不審の眼差しを無視し再々採択したことにも、同様の感をぬぐいきれない。豊かな自然と文化資産に恵まれ、高名な温泉を多数擁し世界に開かれた観光地でもある加賀市の子どもたちに必要なのは、国際的に通用する歴史認識と、高い人権意識が学べる教科書ではないのか。加賀市採択3教科書がそういう教科書でないことは、3教科書自らが語っているのではないか。

 いしかわ教育総合研究所は以上のような考えにもとづき、育鵬社歴史・公民教科書と日本教科書道徳教科書を再々採択した加賀市に抗議し、その見直しと採択のやり直しを強く求める。

2024年9月26日 いしかわ教育総合研究所所長 半沢英一

令和書籍中学校歴史教科書の「検定合格」に対する抗議声明

2024-06-30 08:47:25 | 2024中学校教科書採択
令和書籍中学校歴史教科書の「検定合格」に対する抗議声明

2024年6月1日   
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

 4月22日、文部科学省は「決定未了」にしていた令和書籍の中学校歴史教科書を「検定合格」させた。令和書籍は毎年のように検定申請し、その都度「不合格」になった申請本を「不合格教科書」として市販していたが、とうとう「合格」したのである。令和書籍歴史は戦前の軍国主義時代の国定教科書「国史」にそっくりで、大日本帝国の皇国史観にもとづいて書かれている。侵略戦争への反省もまったくない時代錯誤で不誠実な歴史教科書である。このような「天皇の活躍物語」を子どもたちが学ぶ教科書として「合格」させた文科省の責任は重大であり、私たちは強く抗議する。私たちが抗議する理由はいくつもあるが、短くまとめると以下のとおりである。

(1)皇国史観
・神話と歴史を直結している。天皇を神の子孫とし、実在しない天皇も含めて、歴史を天皇の活躍物語
 にしている。皇統はずっと男系と強調。
・明治天皇と昭和天皇を特に偉大な天皇として美化。これらの天皇はアジアへの侵略戦争を進めた天皇であるにもかかわらず、平和を望んだ天皇と描く。
・教育勅語を賛美。「特攻死」を国民のもっとも美しい自己犠牲の姿として「散華」と呼ぶ。
(2)侵略戦争と植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどない
 ・韓国の植民地化は韓国の皇帝から依頼されたから。近代化は日本のおかげと説明。
 ・南京大虐殺を否定。日本軍「慰安婦」が性奴隷だったことも否定。

 このような歴史教科書たりえない「物語」を「検定合格」させたことに、検定官の質の劣化が如実にあらわれている。そもそも検定基準「1 基本的条件(5)」では、内容は「児童又は生徒の心身の発達段階に適応」していることが求められている。令和書籍歴史は縦書きで他社の倍近くのページ数があり、一般には知られていない天皇のことまで記述しているため難解で、中学生の「発達段階」にはまったくふさわしくない。内容の是非以前にこれだけでも不合格になるべき教科書なのである。
また「社会科の検定基準(6)」には「近隣諸国条項」があり、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」が明記されている。これにもとづくなら令和書籍の戦争・植民地記述は絶対に認められないはずである。ところが安倍政権によって「近隣諸国条項」が棚上げ、さらには完全無視されることが続き、検定官自身がアジア諸国のことなどどうでもよいかのような傲慢な感覚に陥っているのである。
 しかし、問題の深刻さはそれだけではない。「事前に内容が漏れていた」ことにより「決定未了」となっていた令和書籍歴史を「合格」させた文科省の最終判断は、岸田政権の判断でもあるということだ。岸田首相は4月の日米会談で今後はアメリカのグローバルな戦争に全面的に協力することを表明した。兵器の爆買いだけでなく、世界各地でのアメリカの戦闘に自衛隊が参加する可能性を表明したのである。しかし、自衛隊が実際に戦死もありうる戦闘行為に参加するには、自衛官の数が圧倒的に不足しており、国民感情としても容易に受け入れられるものではない。災害救助で作られた人々の自衛隊への肯定的評価を利用して、自衛官募集を一生懸命やっても、自衛隊内のパワハラやセクハラは後をたたず、自殺者も出ている状況では応募者はなかなか増えない。このようななかで、岸田政権にとっては教育を通じた「愛国兵士」づくりは喫緊の課題である。そのためには育鵬社・自由社だけでなく、令和書籍のような極端な歴史教科書すら利用しようとしているのである。
 しかし、私たちはこのような子どもたちを戦争に導く「軍国主義礼賛・愛国主義礼賛」の教科書を絶対に許さない。すでに各地の教科書センターには採択にかけられる令和書籍の見本本が届いている。私たちは教科書展示会で意見を書いて教育委員会に届けることをはじめ、採択会議の傍聴などできることはすべてやるつもりである。あぶない教科書の採択を阻止し、「平和・人権・共生」という日本国憲法の理念にのっとった教科書を子どもたちに届けるために努力することを表明する。
以上

賛同団体(7月15日現在)

オール東大阪市民の会、教科書問題を考える北摂市民ネットワーク、 (アイ)女性会議・京都、子どもと教科書 市民・保護者の会、子どもに『教育への権利』を!大阪教育研究会、香川の子どもと教科書ネット、高槻タチソ戦跡保存の会、ざざまる会、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、アイ女性会議ひょうご、「慰安婦」問題を考える会・神戸、サポートユニオンwithYOU、「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット、教職員なかまユニオン、全国労働組合連絡協議会大阪府協議会(大阪全労協)、子どもの教科書を読む会・北九州、「キリスト者・9条の会」北九州、草の根の会・中津、教科書問題を考える会・豊中