教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまの山口県教育委員会への抗議文です。
日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する
山口県教育委員会が、2025年度から4年間使用する中学校公民教科書に育鵬社版を採択したことにつき、育鵬社版公民教科書の問題点を以下具体的に列挙して、問題の根拠を踏まえて不当採択に抗議する。
1.日本国憲法の基本原則を中心に置かず例外的な内容を大きく取り上げているため、生徒が基本原則の学習に混乱をきたすおそれがあること
(例1)国民主権の原則の説明の場面で、例外的な天皇制を大きく取り上げているために、憲法に即して国民主権を理解正しく理解できない。
(例2)平和主義の原則の説明の場面で、例外的な自衛隊、日米安保条約を大きく取り上げているために、憲法に即して平和主義を正しく理解できない。
(例3)基本的人権の尊重の説明の場面で、例外的な公共の福祉を大きく取り上げているために、憲法に即して基本的人権を正しく理解できない。
2.育鵬社独自の「一面的・一方的」な記述が、学術研究に基づく「多面的・多角的」
な学習内容の理解を妨げるために、生徒の社会認識をゆがめるおそれがあること
(例1)学習指導要領に「核兵器などの脅威に着目させ」とあるが、核兵器の脅威について具体的に記述されていない。
(例2)平和主義を学習する場面で、戦後憲法が果たしてきた役割に触れず、平和維持手段は防衛力だと一面的・一方的な記述をしている。
軍事的緊張を緩和する方法として軍事力の重要性を一面的・一方的に記述しているので、平和主義を多面的・多角的に学ぶことはできない。
3.育鵬社版教科書は日本国憲法が重視している「個人の尊重」を軽視しているので、生徒は日本国憲法に即して「個人の尊重」を正しく理解できないこと
(例1)「個人の尊重」を学ぶ場面で、古代ギリシャのポリス市民が防衛義務を負っていた事例を例外的に大きく取り上げることで、「個人の尊重」を犠牲にして「戦場に行く義務がある」かのような理解に導く記述は日本国憲法13条24条に違反する内容である。
4.育鵬社版教科書では教科書内容の配列が日本国憲法を正しく理解できない構成になっているので、なぜ憲法が3原則を重視しているのかを理解できないこと
(例1) 大日本帝国憲法を高く評価した後に日本国憲法がGHQによって押し付けられた問題があると否定する記述をしているので、生徒は憲法を否定的にとらえる。
(例2) 国民主権を学習するページの冒頭で「国民主権」を「国民としての自覚」と言い換え、天皇を尊重することが重要だとの内容が記述されているので、国民主権の前提が天皇尊重だと誤って理解する危険性がある。
(例3) 人権を学習するページでは、人権を「古くから民を大切にする伝統」と言い換え、人権の意味を誤解する危険性がある。
(例4) 平和主義の説明に自衛隊や安保体制、国防の重要性が大量に記述されているので、平和主義を武力による自衛ととらえる危険性がある。
5.育鵬社版公民教科書は立憲主義の理解を妨げ、意図的に憲法改正に強引に誘導することで、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている教育公務員に99条違反を強いるおそれがあること
(例1) 育鵬社、自由社以外の公民教科書は「憲法に基づく政治を行うことで権力の濫用を防ぐ考え方を立憲主義という」と適切に説明する。しかし、育鵬社は「憲法にのっとって国を運営することを立憲主義という」説明だけなので、「立憲主義」と「権力の濫用防止」との関係が正しく理解できない不適正な説明である。
(例2) 育鵬社版は各国の改正手続きや厳密さには整合性がないことを説明せずに、憲法を改正しないことが異例だから改正が必要だと強引に憲法改正に導く内容である。
(例3) 単元の終わりに「今後は、各院に設置された憲法審査会で憲法改正原案の審査が行われ、国会の議決を経て、国民投票による改正の是非が諮られる」と記述している。しかし、現実の政治の中では憲法改正原案が提出される見込みはない。育鵬社版の記述は生徒に誤った理解をさせる内容の教科書である。
6.まとめ
育鵬社版公民教科書は以上指摘した以外にも「基本的人権より義務を重視する」「国民としての自覚を押し付ける」「国民の具体的な権力行使を軽視する」「権利よりも公共の福祉、義務を重視する」「子どもの権利を制限する必要」「家族の役割を押し付ける」「性別役割分担を肯定する」「LGBT、SOGI、性の多様性、性的指向、性自認の説明がない」「外国人に人権がないと誤解しかねない記述」「障害者差別解消法、合理的配慮の説明がない」など、「一面的、一方的」な記述が多く、生徒の「多角的・多面的な」理解を阻害する内容が多数ある。
このように育鵬社版公民教科書は内容が不正確であったり、一方的な考えに基づく一面的な記述であったりして、生徒の学習権を保障する教科書として著しくバランスに欠けている。私たちはこのような不適切な教科書を採択したことに対して強く抗議をし、改めて採択をやり直して、育鵬社版公民教科書を採択しないよう求める。
日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する
山口県教育委員会が、2025年度から4年間使用する中学校公民教科書に育鵬社版を採択したことにつき、育鵬社版公民教科書の問題点を以下具体的に列挙して、問題の根拠を踏まえて不当採択に抗議する。
1.日本国憲法の基本原則を中心に置かず例外的な内容を大きく取り上げているため、生徒が基本原則の学習に混乱をきたすおそれがあること
(例1)国民主権の原則の説明の場面で、例外的な天皇制を大きく取り上げているために、憲法に即して国民主権を理解正しく理解できない。
(例2)平和主義の原則の説明の場面で、例外的な自衛隊、日米安保条約を大きく取り上げているために、憲法に即して平和主義を正しく理解できない。
(例3)基本的人権の尊重の説明の場面で、例外的な公共の福祉を大きく取り上げているために、憲法に即して基本的人権を正しく理解できない。
2.育鵬社独自の「一面的・一方的」な記述が、学術研究に基づく「多面的・多角的」
な学習内容の理解を妨げるために、生徒の社会認識をゆがめるおそれがあること
(例1)学習指導要領に「核兵器などの脅威に着目させ」とあるが、核兵器の脅威について具体的に記述されていない。
(例2)平和主義を学習する場面で、戦後憲法が果たしてきた役割に触れず、平和維持手段は防衛力だと一面的・一方的な記述をしている。
軍事的緊張を緩和する方法として軍事力の重要性を一面的・一方的に記述しているので、平和主義を多面的・多角的に学ぶことはできない。
3.育鵬社版教科書は日本国憲法が重視している「個人の尊重」を軽視しているので、生徒は日本国憲法に即して「個人の尊重」を正しく理解できないこと
(例1)「個人の尊重」を学ぶ場面で、古代ギリシャのポリス市民が防衛義務を負っていた事例を例外的に大きく取り上げることで、「個人の尊重」を犠牲にして「戦場に行く義務がある」かのような理解に導く記述は日本国憲法13条24条に違反する内容である。
4.育鵬社版教科書では教科書内容の配列が日本国憲法を正しく理解できない構成になっているので、なぜ憲法が3原則を重視しているのかを理解できないこと
(例1) 大日本帝国憲法を高く評価した後に日本国憲法がGHQによって押し付けられた問題があると否定する記述をしているので、生徒は憲法を否定的にとらえる。
(例2) 国民主権を学習するページの冒頭で「国民主権」を「国民としての自覚」と言い換え、天皇を尊重することが重要だとの内容が記述されているので、国民主権の前提が天皇尊重だと誤って理解する危険性がある。
(例3) 人権を学習するページでは、人権を「古くから民を大切にする伝統」と言い換え、人権の意味を誤解する危険性がある。
(例4) 平和主義の説明に自衛隊や安保体制、国防の重要性が大量に記述されているので、平和主義を武力による自衛ととらえる危険性がある。
5.育鵬社版公民教科書は立憲主義の理解を妨げ、意図的に憲法改正に強引に誘導することで、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている教育公務員に99条違反を強いるおそれがあること
(例1) 育鵬社、自由社以外の公民教科書は「憲法に基づく政治を行うことで権力の濫用を防ぐ考え方を立憲主義という」と適切に説明する。しかし、育鵬社は「憲法にのっとって国を運営することを立憲主義という」説明だけなので、「立憲主義」と「権力の濫用防止」との関係が正しく理解できない不適正な説明である。
(例2) 育鵬社版は各国の改正手続きや厳密さには整合性がないことを説明せずに、憲法を改正しないことが異例だから改正が必要だと強引に憲法改正に導く内容である。
(例3) 単元の終わりに「今後は、各院に設置された憲法審査会で憲法改正原案の審査が行われ、国会の議決を経て、国民投票による改正の是非が諮られる」と記述している。しかし、現実の政治の中では憲法改正原案が提出される見込みはない。育鵬社版の記述は生徒に誤った理解をさせる内容の教科書である。
6.まとめ
育鵬社版公民教科書は以上指摘した以外にも「基本的人権より義務を重視する」「国民としての自覚を押し付ける」「国民の具体的な権力行使を軽視する」「権利よりも公共の福祉、義務を重視する」「子どもの権利を制限する必要」「家族の役割を押し付ける」「性別役割分担を肯定する」「LGBT、SOGI、性の多様性、性的指向、性自認の説明がない」「外国人に人権がないと誤解しかねない記述」「障害者差別解消法、合理的配慮の説明がない」など、「一面的、一方的」な記述が多く、生徒の「多角的・多面的な」理解を阻害する内容が多数ある。
このように育鵬社版公民教科書は内容が不正確であったり、一方的な考えに基づく一面的な記述であったりして、生徒の学習権を保障する教科書として著しくバランスに欠けている。私たちはこのような不適切な教科書を採択したことに対して強く抗議をし、改めて採択をやり直して、育鵬社版公民教科書を採択しないよう求める。