会社の先輩(OB)たちが作る「京都食べ歩き同好会」という会があり、私も過去に何度か参加させていただいた(「野むら山荘 鳥亭」や「西陣 魚新」など)。そこで酒宴になったとき、必ず飛び出すのが「いもぼうは美味しかったなぁ」という話だ。口火を切る人は特定の1人なので、その人だけの意見かも知れないが、皆さんうなずいているので、あながち間違いではなさそうだ。名古屋からの帰りには(2020.10.5)、ランチは京都で食べることにしよう、と決心した。

四条通りはこんな状態!月曜日の午前とはいえ、これには驚いた

八坂神社西門前にも、人影はない

こちらは南門
しかし困ったことに円山公園には「平野家本家」と「平野家本店」の2つの店があり、どちらに行けば良いのか分からない。ルーツは1つのようなので大差ないのだろうが、何か事前に情報を得ておきたい。そこで本棚から取り出したのが國分綾子著『京都味しるべ』(駸々堂出版刊)という本だ。私が持っているのは昭和52年に出た改訂版である。店の選定も文章もシッカリしているので、私はバイブルのようにしている。果たしてこの本に出ていたのは、「平野家西店」だった。写真を見るとこれは明らかに「本家」の方だった。文章を引用すると、

境内ではハギが咲いていた。万葉集で、最もたくさん詠まれた花だ

海に遠い山国京都では、生(なま)の魚をふんだんに使えない代わりに乾物、塩ものといった食品の料理が発達した。芋と棒だらの料理「いもぼう」はその代表的な京の料理である。唐の芋またはえび芋を、北海道の棒だらと合わせてたくには特殊な技術がいる。もともといもぼうは京の人々が台所でたく、月々のごちそうであった。

円山公園も、こんなありさまだ


こちらは平野家「本店」

私が入った平野家「本家」の店内
平野家は初代平野権太夫という人が粟田口の青蓮(しょうれん)院に仕え、そこの宮が九州から持ち帰られた唐の芋を拝領して、栽培したところ、すぐれたものがとれた。そこでそれをたらとたき、食べさせたところ評判をとってついに店を出し、名物にしたといういわれがある。享保年間のことで以来約300年。そのふっくりとした棒だら、やわらかく味のしみた芋などの家伝の味はさすがで、多くの人々から愛され親しまれている。

このえび芋と棒だらのたき合わせ――いもぼうの他、梅椀、おしたし、香の物、季節ご飯(えんどうまたは栗ご飯)などでワンセットになっており、お好みで2、3の皿もつく。故吉川英治氏はじめ東京からの愛好者も多く、若い人たちからも好まれている。近くに同じ系統の平野家本店の店もある。

私は「雪御膳」(いもぼう、とろろ海苔巻、小鉢、梅椀=吸物、ごはん、香の物)2,500円(税別)を注文。これが吉川英治も愛したという「いもぼう」だ。唐の芋(とうのいも)もえび芋も、要はサトイモの仲間である。私はスーパーで売っている冷凍の皮むきサトイモのようなものと思っていたが、もっと大きくて柔らかくて、中まで味がしみ込んでいる。おでんで言えば、ジャガイモというより、よく味のしみた大根のような趣きである。

お茶に小菓子がついてきた
雅び(都の美)を尊ぶ京都らしからぬ俚(さとび=山里の美)の料理だ。そういえば「にしんそば」もこのカテゴリーに入る(=山の幸+海の幸)。棒鱈もサトイモも、クラシックなおせち料理の定番なのでシニアには「懐かしの味」だが、これが今の若い人に受け入れられるだろうか、と少し心配になった。
しかしこのような料理に仕立てるワザには舌を巻く。みなさんも、いちどお訪ねください!
※平野家本家の公式HPは、こちら

四条通りはこんな状態!月曜日の午前とはいえ、これには驚いた

八坂神社西門前にも、人影はない

こちらは南門
しかし困ったことに円山公園には「平野家本家」と「平野家本店」の2つの店があり、どちらに行けば良いのか分からない。ルーツは1つのようなので大差ないのだろうが、何か事前に情報を得ておきたい。そこで本棚から取り出したのが國分綾子著『京都味しるべ』(駸々堂出版刊)という本だ。私が持っているのは昭和52年に出た改訂版である。店の選定も文章もシッカリしているので、私はバイブルのようにしている。果たしてこの本に出ていたのは、「平野家西店」だった。写真を見るとこれは明らかに「本家」の方だった。文章を引用すると、

境内ではハギが咲いていた。万葉集で、最もたくさん詠まれた花だ

海に遠い山国京都では、生(なま)の魚をふんだんに使えない代わりに乾物、塩ものといった食品の料理が発達した。芋と棒だらの料理「いもぼう」はその代表的な京の料理である。唐の芋またはえび芋を、北海道の棒だらと合わせてたくには特殊な技術がいる。もともといもぼうは京の人々が台所でたく、月々のごちそうであった。

円山公園も、こんなありさまだ


こちらは平野家「本店」

私が入った平野家「本家」の店内
平野家は初代平野権太夫という人が粟田口の青蓮(しょうれん)院に仕え、そこの宮が九州から持ち帰られた唐の芋を拝領して、栽培したところ、すぐれたものがとれた。そこでそれをたらとたき、食べさせたところ評判をとってついに店を出し、名物にしたといういわれがある。享保年間のことで以来約300年。そのふっくりとした棒だら、やわらかく味のしみた芋などの家伝の味はさすがで、多くの人々から愛され親しまれている。

このえび芋と棒だらのたき合わせ――いもぼうの他、梅椀、おしたし、香の物、季節ご飯(えんどうまたは栗ご飯)などでワンセットになっており、お好みで2、3の皿もつく。故吉川英治氏はじめ東京からの愛好者も多く、若い人たちからも好まれている。近くに同じ系統の平野家本店の店もある。

私は「雪御膳」(いもぼう、とろろ海苔巻、小鉢、梅椀=吸物、ごはん、香の物)2,500円(税別)を注文。これが吉川英治も愛したという「いもぼう」だ。唐の芋(とうのいも)もえび芋も、要はサトイモの仲間である。私はスーパーで売っている冷凍の皮むきサトイモのようなものと思っていたが、もっと大きくて柔らかくて、中まで味がしみ込んでいる。おでんで言えば、ジャガイモというより、よく味のしみた大根のような趣きである。

お茶に小菓子がついてきた
雅び(都の美)を尊ぶ京都らしからぬ俚(さとび=山里の美)の料理だ。そういえば「にしんそば」もこのカテゴリーに入る(=山の幸+海の幸)。棒鱈もサトイモも、クラシックなおせち料理の定番なのでシニアには「懐かしの味」だが、これが今の若い人に受け入れられるだろうか、と少し心配になった。
しかしこのような料理に仕立てるワザには舌を巻く。みなさんも、いちどお訪ねください!
※平野家本家の公式HPは、こちら