7/17(木)に開催した
「第2回 観光力創造塾」(南都銀行主催)の概要を、NPO法人「スマート観光推進機構」理事長の星乃勝さんがまとめて下さった。いただいたメールには、
7/17に南都銀行主催の「観光力創造塾」に参加しました。テーマは”奈良の食”についてでした。感想から書きますが 奈良のシンポジウムは熱心な人が多く、特に「文化」と「観光」に関心が強いようです。今日も学ぶ点が多かったですが、やはり点と点で活動していてもダメで「連携」しかないと感じました。

奈良の食材は生産量が少ないそうです。少なければそれを逆手にとって、奈良でなければ食べられないくらい、奈良の食材を使って美味しい料理を提供するほうがよいと思います。小さな地域ほど、生産者と料理人との交流から新しい町おこしが起こっているように思いました。レポートを書きましたのでお読みいただければ幸いです。
では、以下にレポート全文を紹介する。
当日出席されなかった方でも、全体像を把握していただける好レポートである。
第2回 観光力創造塾
日時:2014年7月17日(木)13:30~16:30
場所:奈良商工会議所5階大ホール
主催:南都銀行(担当:公務・地域活力創造部)
基調講演:「誘客のカギは『食』にあり」門上武司(「あまから手帖」編集顧問)
・料理人は、食材をどのように調理し料理にするかを考えており、編集能力に優れた人材だ。
・お客さまは、味に感動したのか/料理のかたちに感動したのか/その土地に感動したのか?
・料理人と食材生産者がつながることが感動を生む。 1+1=無限大。
・京野菜だって30年の歴史にしか過ぎない。
・京都を繁盛させるためバックアップしたのは料理人である。半分は自分のお店のためだが、半分は京都というブランドのために考え、行動した。
・京都市役所前に屋台を作って、京野菜を展示し、料理人が調理して提供した。
・大阪は「なにわ野菜」を復活させたが、出口としての料理人が求められる。
・山形・庄内にイタリアンのアル・ケッチァーノの奥田シェフが、庄内でしか採れない野菜を使った料理を提供して評判になった。観光地でもない庄内に人を呼び込んだ。

・ここ十数年、スペイン料理がフェラン・アドリアという料理人を通じて世界から注目を受けている。
・料理を美味しいだけにとどまらず、何故このように料理するのだろう? 何故この順番に料理を出すのだろう? 何故このように並べるのだろう? と考えさせた。
・今はレストランでなく、ラボで料理の研究に専念されている。
・セオリーを取り払って新しい料理にトライした結果、こんな料理の仕方があったのかとスペインに世界の料理人が通ってきた。 今、世界の料理人が日本に学びにきている。
・昔、北欧には美味いものなしと言われていたが、nomaの活躍で一変した。今は世界の注目を集めている。

・料理人と生産者がタッグを組むことによって大きな力を生み出すことができる。
・生産者:田鶴農園。よい野菜を工夫して作っている。
・料理人:イル・ギオットーネの笹島シェフ。京野菜を使って京都イタリアンを創作した。
・京都で、何処でも食べられるイタリアンやっていても仕方がない ⇒ そこで京都野菜を使った京都イタリアンを創った。
・和歌山の生産者:宮楠農園。料理人から要望のある野菜を少量多品種生産している。
・料理人:Villa AiDaの小林シェフ。宮楠農園の野菜を使っていたが、自分で野菜づくりを始めた。
・「奈良フードフェスティバル」も5年目になった。メディアがついてくるようになった。
・大阪のなにわ野菜も10数年の歴史。京野菜もたかだか30年の歴史。
・料理人が交流することにより新しい気付きがあり、生産者が交流することで美味しい食材を提供できる。交流が奈良の新しい美味しいを創る。

パネルディスカッション:「『食』で奈良を盛り上げよう!」
自己紹介
■「アルコドウ」オーナーシェフ 川島 宙氏
・料理人になって25年目を迎える。今、教えること、広げることに力を入れている
・奈良には美味しい食材があるが、流通がうまくいってない。もったいない。
■手作りハム&農業レストラン「ばあく」 泉澤 ちゑ子氏
・平城遷都1300年祭をめざした県の「奈良のうまいものづくり部会」に参加する機会を得て、生産者以外の方との交流が生まれた。
・この活動を「一般社団法人 奈良のうまいもの会」で継続していかないかと声を掛けていただいた。
・今年、JR奈良駅構内に「奈良のうまいものプラザ」ができた。
■奈良県農林部次長 角山 美穂氏
・農村女性の自立普及員の仕事が財産になっている。
・おばあちゃんから聞き取りをしているなかで、家庭で育まれた食への思いが高まった。
・2002年に「奈良のうまいものづくり部会」がスタートした。それが「一般社団法人 奈良のうまいもの会」に発展した。
■南都経済研究所 参与研究員 井阪 英夫氏
・奈良は、海産物の食材に乏しい。これが「奈良に美味いモノ無し」の根拠にもなっている。
■南都銀行 公務・地域活力創造部 鉄田 憲男氏(コーディネーター)
・京都市から若狭湾までの距離と、奈良市から伊勢湾までの距離は同じ。「海がないからうまいものがない」とは言えない。
■門上氏
・関西に来たら「美味いもの食べたい」という人が多いので、連れ歩いているうちにこの立場になった。
・「食」は、いかにその時間を楽しく過ごすか。人と人を結びつけるかが大切である。
・奈良の料理人の人が頑張り始めている。マグマのように燃え始めている。
■質問Ⅰ.奈良を訪れる観光客にお勧めしたい料理
・「茶粥」を勧めたい。奈良のなかでは日常食だが、季節ものを入れて作っている。奈良では茶粥を「おかいさん」と呼ぶが、この呼び方がふさわしい。
・立ち食い蕎麦のように「茶粥」や「柿の葉寿司」が食べられるようになればよいのだが。
・奈良といえば「三輪そうめん」が代表的。
・初夏の青葉や秋の紅葉の柿の葉で包んだ「柿の葉寿司」など季節感を出せばよい。
・お酒の相性にも優れた蕎麦屋の「玄」がある。奈良市内の蕎麦が美味しいのは、「玄」さんがあるから全体レベルが上がっている。
・お勧めする理由を明確にすることが大切である。

■質問Ⅱ.奈良の人は、奈良のうまいものを知らないのでは
・「流通」のさせ方と「プロモーション」のさせ方の二つの問題がある。
・良い素材があっても、良い料理が提供できなければ、消費者に伝わらない。
・まだまだ拘った生産者が少ない。
・奈良の農産物の生産量は少ない。そのため流通量も少ない。
・農産物を入手するため膨大な労力と、送料負担が伴う。農産物の流通の仕組みができればよいのだが。
■質問Ⅲ.京都や大阪と差別化するために、どのような「奈良の食」をアピールすれば良いか
・かつては奈良県民としての意識は持ち合わせてなかったが、奈良に来た人から「奈良は素晴らしい、転がっている石にさえ歴史を感じる」といわれて、認識が変わってきた。
・奈良県民は奈良以外の所のほうが美味しいと思っているのだろうか?
・県民に対して「どうすれば奈良へ来る観光客を増やすことができるか」のアンケートに、40%以上の方が「美味しい食べ物を作ればよい」と答えた。奈良の食の情報が県民に伝わってない。
・食品売り場で「奈良の食材」に「奈良のレシピ」をつけてはどうか。
・志賀直哉が「奈良に美味いものなし」と書いたというが、原文を読んでみると、奈良の自然や建物の美しさを褒めちぎっている。「美味いものがない」と書いているのではない。
・10年前に「あまから手帖」が奈良特集を始めてやった。そして爆発的に売れた。特に地元で売れている。
■質問Ⅳ.これから「奈良にうまいものあり」をどのようにPRしていけば良いか
・奈良県は、人口当たりの飲食店数は日本一少ない。
・食材をうまく集めて来る人が現れてくると、生産者にも料理人にも喜ばれる。
・県民が謙遜で言った「つまらないもの」や「美味しいものがありませんので…」の言葉が、「奈良に美味いものなし」を広めた。これからは、むしろ自慢していくほうがよい。
・「食」も文化。日本の食文化の始まりは、奈良にある。
・素材を当たり前と思っているが、観点を変えて発信する必要がある。
・京都・大阪と比較しても仕方がない。
・奈良県に拘らず、100km圏内で食材調達を考えたほうがよい。

和田悟氏(南都銀行 公務・地域活力創造部長)の閉会挨拶
■最後に一言
・北欧に美味しいものなしといわれた所がトップを走っている。スペインのバスク地方も、優れた歴史と素材を再構築して取り組み、国をあげてPRした結果、世界に認められた。
・食材、流通、調理、PRなど「トータルコーディネート」する組織や、「コーディネート役」を置いてもらいたい。
・「料理」は風俗の範疇になっているので、人間国宝はいない。京都は特区を作って料理人を無形文化財にしている。
・東京に奈良の食材を直送しており、認知されるようになっている。
・奈良県南部地域産業復興推進大会(なんゆう祭)で「村弁当コンテスト」を行った。コンテストに出すような料理がないと村のおばあちゃんは言ったが、素晴らしい弁当ができた。
レポートは以上です。星乃さん、力作を有難うございました!