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2棟の本殿を覆い屋根で直結、海の神を祭る海(かい)神社(宇陀市)/毎日新聞「やまとの神さま」第47回

2023年06月15日 | やまとの神さま(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「やまとの神さま」を連載している。先週(2023.6.8)掲載されたのは〈県文化財の「三間社流造」/海神社(宇陀市)〉、執筆されたのは同会会員で宇陀市在住の石川雅司さんだった。この神社は謎の多い神社だが、私なりの解釈を先に書いておく。
※トップ写真は、三間社流造の海神社本殿。内部では独立した2棟の建物が並び、これらを覆う屋根が架けられている=宇陀市室生大野で

1.なぜ、海のない奈良県に「海神社」か
もとの神社名は「善女龍王社」で、主祭神は室生の龍神(善女龍王)だったが、明治維新の王政復古で、記紀以外の神さまが否定された。それで主祭神が豊玉姫命(神武天皇の父方の祖母・母方の伯母)に入れ替わった。豊玉姫命は海神(わたつみ=豊玉彦命)の娘で、正体は八尋和邇(やひろわに=サメ or ワニ)とされるので、それにちなんで神社名が「海神社」となった。まあ、和邇神社でも良かったのだろうが。

2.「三間社流造」とは
三間社と聞くと、3棟の本殿が並んでいるように誤解されると思うが、実は本殿は春日造の2棟(一間社×2棟)で、中央に一間の空間がある。これに、わざわざ流造の覆い屋根をかけた。



ドローンで撮影された本殿、中央の空間が見える。この写真はこちらの動画サイトから拝借した

以上を念頭に置いて、以下の記事をお読みいただきたい。

海神社(宇陀市)
海(かい)神社は、同じ宇陀市室生(むろう)地区の室生龍穴(りゅうけつ)神社から祈雨(きう)の神、農耕の神の龍神を勧請(かんじょう)したとの伝承があります。主祭神は海の神、水の神とされる豊玉姫命(とよたまひめのみこと)。沿革は不詳ですが、明治の神仏分離で善女龍王社(ぜんにょりゅうおうしゃ)から海神社と改称されました。

本殿は、江戸時代前期に造られ、檜皮葺(ひわだぶき)。一見すると、切妻屋根を持ち、正面の柱が4本で、間口が三つある「三間社流造(さんげんしゃながれづくり)」(一間は約1・8㍍)に見えます。しかし、よく見ると、平面的には独立した2棟の建物が並列しています。

それぞれが春日大社(奈良市)に代表される建築様式で、間口が一つの「一間社春日造(いっけんしゃかすがづくり)」であり、これらを覆う流造の屋根を架けているのです。2棟それぞれの上に三角形の千鳥破風(ちどりはふ)を設けており、建物と屋根の間は吹き抜けです。このような構造は全国的に珍しく、県指定文化財となっています。

境内に能舞台にもなる舞殿が残され、能面8つは奈良国立博物館が保管中。本殿、拝殿、舞殿、祓殿(はらいでん)、恵比須神社などには鎌倉時代を含め、多くの狛犬(こまいぬ)が奉納され、地域に大切にされています。

近くの深谷龍鎮(ふかやりゅうちん)渓谷にある境外(けいがい)社の龍鎮神社は近年、「空気感が違い、神聖さを感じるパワースポット」として人気となっています。(奈良まほろばソムリエの会会員 石川雅司)

(住 所)宇陀市室生大野1655
(主祭神)豊玉姫命
(交 通)近鉄室生口大野駅から徒歩約5分
(文化財)本殿が県指定文化財
(拝 観)境内自由
(駐車場)無
(電 話)無


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