TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

吉井勇と平戸の関係

2022年04月25日 | 吉井勇
平戸の川内峠には立派な吉井勇の歌碑が建っています。


山きよく海うるわしとたたえつつ旅人われや平戸よくみむ

碑のあまりの大きさに「空前絶後」と、吉井は絶賛したそうです。

その大きさが分かる別の写真

(人間が小さく見えます)

碑の説明板には


これらの写真を撮ったのは2年前のことでした。(→「平戸・生月へ」)

あのとき、すぐにでも吉井勇の平戸詠についてまとめようと思っていましたが、ある疑問が解決できなかったのでそのままになっていました。

その疑問とは、説明板に書かれていた次の一文です。
「この歌は、この川内峠から望む風景をこよなく愛した晩年の吉井勇が、感動の中で詠んだもので西海国立公園のすばらしさが表現されています。」

川内峠からの景観のすばらしさは万人が認めるものですが、吉井はいったい何時この川内峠を訪ねたのだろうかという疑問です。
吉井勇が初めて平戸を旅したのは明治40年の九州旅行ですが、このときには半日だけの滞在だったので川内峠には行っていないはずです。それは紀行文「五足の靴」を読めば明らかです。
では川内峠を訪れたのは何時なのか?
歌碑が建ったのが昭和32年で、その前年、吉井は九州旅行の折に平戸に行っています。そのときに川内峠を訪ねたのだろうと思われるのですが、それを具体的に示すものを見つけられずにいました。

ネット、吉井の書籍、平戸史など、どれを調べても出てきませんでした。

そこで、現地に行けば何か手がかりがつかめるかも、というのが今回の平戸行きだったのです。


平戸の図書館(未来創造館)


カウンターで尋ねたら、とても親切にいろいろと調べてくださいました。
資料を数点持ってきてくださいましたが、それらは既に調べていたことでした。
郷土コーナーに「吉井勇」の棚がありましたが、それは主に「五足の靴」に関するものでした。
ただ、その中に混じって吉井勇全集の第3巻が立ててあったのです。
「なぜ3巻だけ?」
吉井勇の全集は8巻(出版社によっては9巻)あるはずなのに…
そのことも係の人に尋ねたら
「ここには郷土に関係ある本を集めています」とのことでした。
半信半疑で目次を見ると、「玄冬」から「形影抄」までの歌集が収められていました。「なんだ、これらは読んでいる」と落胆しかけたそのとき、「『形影抄』以後」という項目が目に飛び込んできました。
「形影抄」は吉井が出した最後の歌集ですが、それ以降に詠んだ歌がまとめてあることは知りませんでした。
「さすがは全集!」と、心を踊らせながらページをめくると、
「あった!」
思わず声を上げそうになりました。

それは昭和31年のところに「平戸遊草」として7首
 
 川内峠のぼり来れば夏日照薊の花はここかしこ

 見はるかす玄界灘に照り満つる海の光はまばゆかるかも

 このあたり對馬も見ゆと示すなり山鹿市長は太指をもて



さらに、昭和32年の「洛東新春」の中には
 この春は筑紫平戸に歌碑建つと思ひうれしく年むかへすも

図書館では撮影禁止でしたので、一生懸命メモしました。

「足で稼ぐ」などといいますが、現地に行ったからこそ解決できたことです。現地の図書館に1冊だけ立ててあった吉井勇全集の第3巻、そこに解決の糸口がありました。
「足で稼ぐ」ことは、情報化の時代と言われる今日でも大切なことだと実感しました。
今回の平戸行きの一番の目的が達成され大満足です。

余談になりますが、急激に「吉井勇全集」が欲しくなり、平戸から帰るとすぐにネットで検索しました。するとメルカリにとんでもなく安い値段で出品されていました。
全8巻、送料込みで2600円。一般的な古書の1/4です。
メルカリは初めてで、購入に不安もありましたが、あに図らんや、注文した翌日には宅配便で届きました。





吉井勇の研究をすることもセカンドライフの夢の一つです。


※ 追記 
  この全集のおかげでさらに吉井勇と平戸の関係が詳しく分かりました。
  → 「ついに解決、吉井勇と平戸の関係」 2022/08/21 アップ
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2 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2022-05-18 15:09:43
ずいぶん熱心に調べられているんですね。

私も吉井勇のダイナミックな歌は好きです。
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Unknown (tenzanbokka78)
2022-05-18 15:33:38
1948219suisenさん、コメントありがとうございます。
歌人吉井勇の歌が好きでいろいろと調べています。歌の背景が分かると、より深く吉井勇を知ることができ楽しいです。
ブログにも書いていましたが、吉井勇研究は私のセカンドライフの柱の一つです。
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