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TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

巻頭言は寮訓だった

2013年04月23日 | 南に遠く(不知火尞)


「仰げば星斗欄干として…」で始まる旧制佐高の不知火寮寮歌「南に遠く」の巻頭言は、同校初代校長生駒萬治氏が作成した寮訓の抜粋だった。


(不知火寮)


-寮訓-
仰げば星斗欄干として永久の心理を囁き、頭を廻らせば不知火炎々として若人の熱を語る。自然の恵豊かなる此の筑紫野の一角天地の精気凝りて立てるもの実に吾が佐高不知火寮なり。抑抑(そもそも)吾が不知火寮の使命たるや吾人が学道練磨の一大道場となると共に又まさに吾が校風淵源たるに在り。されば此の寮に学ばんものは深く吾が寮生活の意義を省み各自誘掖切磋以て学道の純熱を力め毅然卓立混濁の世俗に超越して質実剛健の精神を把握して以て若き日の完成を此處に期せざるべからず。
   昭和戍春日
                紀堂 (生駒萬治:佐賀高校初代校長の雅号)




ファイヤーストーム


寮でのウォーターストーム

寮歌「南に遠く」の巻頭言は佐賀大学に受け継がれた。

おりゃ おりゃ おりゃ~
仰げば星斗欄干として
永久の心理を囁く
頭を廻らせば不知火炎々として
若人の熱を語る
自然の恵豊かなる此の筑紫野の一角
天地の精気凝りて立てるもの
実に吾が佐大不知火寮なる
いざや歌わんかな我らが木訥の歌
「南に遠く」
いざや踊り狂わんかな我らが熱血の舞
「南に遠く」


なお、この生駒萬治氏作成の寮訓から生まれた巻頭言は、他校の寮歌の巻頭言にも地名などを変えて使われている。


生駒氏の寮訓は、「不知火熾る 佐賀高校史」というに記載されていた。
この本は、滝口康彦氏の作品を求めて佐賀の古本屋を廻っていて偶然見つけたものだ。旧制佐高30年の歩みをまとめた貴重な資料だが、その推薦の辞がまたよかった。(推薦文は菊葉同窓会理事長 田中誠一氏によるもの)

「本書は、菊葉のもとに集い寄った過ぎし日の青春賦であり、その熱烈たる操守に支えられ、歴史のなかに永遠の記念塔を残した熱情と感激の対抗戦など、豊富な題材に富み、真に佐高精神の本流に棹さす書であり、加うるに、教育文献としても格好の書であると信じ、広く同窓諸賢の瞥見をお薦めする次第である。」 

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「南に遠く」

2013年03月27日 | 南に遠く(不知火尞)


高校の頃、北杜夫氏の「ドクトルマンボウ青春記」に傾倒していた。
旧制高校生のバンカラで、現実離れした寮生活に憧れていた。
しかし、自分は寮には入らなかった。
ワンゲルの同期のTは不知火寮だったので、寮のいろいろな話を聞かせてもらっていた。
中でも、寮歌の特訓は印象的だった。
1つ上の先輩が、1週間かけて、マンツーマンで教え込んだという。
巻頭言のあげ方から、節まわしまで。
そのTが私の部屋に遊びに来たとき、寮歌を教えてくれた。
それが「南に遠く」だった。
あるとき、私がTの不知火寮の部屋に遊びに行っていたとき、突如としてウォーターストームが始まった。
Tはあわてて、私を押し入れの中に隠してくれた。
音だけだったが、勇ましいストームの様子が押し入れのふすま越しに伝わってきた。
ストームは裸、ふんどしが許されるのは2年生以上で、1年生は真っ裸でやるという。
巻頭言をあげ、意気揚々と廊下を踊りまくるストームの首謀者に、他の者はバケツにくんだ水を浴びせかける。
あの時私は、嵐がおさまるのを、じっと押し入れの中で待っていた。



4年生の冬だった。
生協の食堂横の広場に、枕木が組んであった。一見してファイヤー用と分かった。
不知火寮最後の日である。
羽織袴姿や学生服という出で立ちで歴代の寮OBが集まり、終止符を打つべく閉寮の式が始まろうとしていた。

しーんと静まりかえった中、寮の玄関にはしごが掛けられ、玄関上の看板(?)が外された。
みんなの視線がその一点に集まり、諸処に嗚咽が漏れていた。
そして始まった巻頭言。
「仰げば星斗爛煥として 永久の真理を囁く…」
夜空を切り裂く魂の叫びにも似て、遠くで見ていた私の心にも突き刺さる。
ましてや、青春を寮で過ごしてた彼らには…

  仰げば星斗爛煥として 永久の真理を囁く
  頭を巡らせば不知火 炎炎として 若人の熱を語る
  自然の恵み豊かなる この筑紫野の一角 天地の精気凝りて立てるもの
  実に吾が佐大不知火寮なり
  いざや歌わんかな 我らが朴訥の歌 南に遠く
  いざや踊り狂わんかな 我らが熱血の舞 南に遠く

そして始まった「南に遠く」の大合唱。
寮生でもなく、ことの成り行きを遠くで見ていた私も胸が熱くなり涙が流れた。
いわんや…

  南に遠く振古より
  ゆゑ知らぬ火の熾りたち
  あけくれ若き血に煮ゆる
  男の子の鴻図うながせば
  健児つどへるこの野辺を
  人あがめたり「火の国」と

  ああ青春よ我にまた
  胸に燃え立つ火のありて
  ゆくてはるけき人の世の
  旅のしるべを求めてぞ
  伝へも奇しき不知火を
  名に負ふ寮にこもりたり

  山抜かんとて持つ力
  世を覆はんとて抱く意気
  生火となりて血は湧けど
  「三年不飛又不鳴」
  雲雨を待ちて筑紫野の
  月を仰ぎて觴咏す

  
この「南に遠く」をTの壮行会で一緒に歌った。
その後、このブログのコメントで、Uのお父さんが、かって不知火寮の寮長であったこと、
また、Uも、この不知火寮最後のファイヤーストームを見ていたということが分かった。
Uは今回の壮行会の横の連絡を取ってくれた一人だ。
人の縁の不思議さに驚いた。

山の歌もいいが、「南に遠く」をまた一緒に歌いたいな…






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