青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

盛夏に描く、天空の大アーチ。

2024年08月04日 22時00分00秒 | 富山地方鉄道

(冷たい流れに素足を浸して@富山地方鉄道立山線・千垣橋梁)

6月に津軽で1泊2日の鉄活動をしてから、特に燃え尽き・・・みたいなことでもないんですが、7月にかけて全くカメラを持って線路端に立つことはありませんでした。しかも7月の週末のうち2週は都市対抗野球で東京ドームに通い詰めてしまうという変わった風の吹き回し。いや、都市対抗は来年も見に行きたいなってくらい面白かったからその決断に別に後悔はないんですけど、年末のカレンダー企画を続けるために「毎月一枚くらい、カレンダーにしてもいいような季節モノの写真を撮る!」というものを一応の年間テーマにしておるのですよね。だから何なんだ、という話なんですけど。ようはあんまり「暑いから外出たくない」なんてグダグダと文句を言ってるうちに、季節ばかりどんどん過ぎて行ってしまうという焦りもあり、一念発起して久し振りに富山に行ってきました。2023年の6月に行ったっきりだから、かれこれ1年2か月ぶりのことになる。特に理由はないんだけど、色々とタイミングを失ったままになっていたのですよ。でもまあ富山も暑かったよねえ。日中は平野部で普通に35℃を超えていたので・・・ということで、立山線の撮影名所である千垣の鉄橋を、常願寺川の中に入って撮影するという真夏の撮り鉄ライフハック。深いV字の谷の底から見上げる優美なアーチ橋。

立山線の千垣の鉄橋、並行して常願寺川に架かる県道の芳見橋から撮影するのが定番のスタイルではあるのだが、この橋を下から(常願寺川の川面から)撮影したカットがあることは知っていた。県道の橋から見るとこの辺りの常願寺川の谷は深く切れ込んでいて、斜面を伝って降りるなんてことは到底出来そうにない。「おそらくここだろう」という少し離れた位置からアプローチの見当を付け、長靴に履き替えて川沿いを降りて行く。アプローチ自体の斜度はそうないが、一部擁壁を伝って降りて行くなどのアトラクションはあったりする。そして、この時期の川沿いの植生は灌木や下草が伸び放題に伸びて行く手を阻み、いわゆる「藪漕ぎ」をカマして進む羽目になってしまった。何とか藪を抜けて河原に降り、千垣の橋梁を川面から仰ぎ見るアングルに三脚を突き立てる。藪漕ぎでぬかるみに足を取られて汚れてしまった長靴と靴下を脱いで裸足になり、足元を立山連峰の清らかな冷たい水に浸しながら列車の到着を待つ。夏だからこそ楽しめる入水撮影、この時期の撮り鉄の醍醐味である。

足元の流れに、持ってきたペットボトルの麦茶を放り込む。欲を言えばビールが良かったが、クルマの旅ではそうも行かぬ。手足をジャブジャブと水につけ、暑くなってくれば川の水で顔を洗い、タオルを川の水に浸して首に巻けばだいぶ違う。炎天下だと、三脚に据えているカメラも焼けて熱を持ってしまうから、列車が通過する時間までは濡らした手ぬぐいを固く絞って巻き付けてたよね。頃よく川の水で冷えた麦茶をガブガブと飲み干して、時計とダイヤを都度確かめて列車の接近を待つ。沢音が大きすぎて、列車が接近する音などはほとんど聞こえてこないのだが、千垣と有峰口の停車時間からスタンバイしておけばいいから気は楽だ。

常願寺川の川面から見上げる千垣の鉄橋は、鉄骨で編まれた優美な天空の大アーチ。
千垣方から14760形が舞台へ現れて、止まりそうなほどゆっくりと、慎重に橋を渡って行く。主役の登場に、我を忘れてシャッターの回数が弾んでしまう。
雷鳥カラーの電車は、窓を開ければ届きそうな夏雲を追い掛けて、橋の向こうへ消えて行きました。


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