(厳冬・地鉄の深奥へ@横江駅)
岩峅寺から先、アルペンルートが閉ざされた時期の冬の立山線は、僅かながらの沿線住民の利用と、これも僅かながらの立山山麓スキー場の利用客を運ぶだけの静かな車内となります。静かに雪の降る午後の横江の駅。鋳物師沢では一瞬の晴れ間があったけれど、岩峅寺で曇り始めて、横江では小雪。だんだんと山深くなっていく立山線、一駅ごとに気象条件が変わって行くのは黒部線と同じ。何年か前に補修工事をしていたかと思うのだが、その効果はあまり続かずまた草臥れた雰囲気の色濃くなってきた横江の駅。床には枯葉が吹き込み、ベンチに土埃がそのままになっていて、待合室の中とかも荒れ気味。うーん、管理状態が悪くなっているのは気がかりですね。たまたまなら仕方ないのだけど。山行きの電車は60形のカターレ富山号。草臥れ状態の駅に似つかわしくないと言っては失礼か、鮮やかな青い差し色が雪に映えた。
雪は降ったりやんだり、目まぐるしい横江の駅の午後。積もった雪が、差してきた薄日に輝いて美しい。横江の集落は、北アルプスの前山に当たる尖山(標高559m)の麓にあって、駅前には駅の利用者向けと登山客向けの共同の駐車場が整備されています。小さく静かな集落で、あまり人が歩いているところを見たことはありません。横江の駅から立山方面へ500mほど行った場所に上横江という駅があり、開業当時はそちらが横江駅を名乗っていましたが、昭和になって現在の場所に駅が開設されると、こちらが横江駅を名乗るようになります。上横江はススキの草むらの中にポツンと棒線のホームが残るだけの駅となり、末期の頃は富山行きが朝に2本、立山行きが夕に2本止まるだけで、ほとんどの列車が通過していました。
雪の立山から、音もなく降りて来る60形。ひたすらに人待ち顔の雪をかぶったホームの待合室には寒風をしのぐ引き戸もないのだが、上滝線から立山線の岩峅寺から先にはこのスタイルの待合室が多い。かつてこの区間を建設した富山県営鉄道スタイルということなのだろう。電制を効かせて山を下りて来た60形、床下だけでなく車体の側面にも雪がこびり付いていて、立山線奥部の積雪の高さを物語るようだ。横から眺めてみても、電鉄富山行きの乗客は片手で余るほどの姿しか見えなかったのだが、冬の立山線はいつもこうだから・・・なんて思いながら撮影してたんですよね。
危機はいつでも、音もなく忍び寄る。
この「いつもこうだから・・・」に、どうやら大ナタが振るわれてしまうことなど、この時は知る由もなかったのでありました。
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