青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

郷愁のボックスシート

2016年10月11日 23時42分05秒 | 東武鉄道

(秋の盛りの築堤で@東武日光線某所)

三連休で一番天気がマトモだと思われた月曜日、一日おヒマをいただいて出掛けてみる。夏の富山以来めぼしいところに行ってなかったもんで、どこがいいかなあなんて情報を収集。秋の行楽シーズンに差し掛かる三連休ですし、10月14日の「鉄道の日」に合わせて鉄道会社も臨時列車やイベントがお盛ん。そう遠くに行かなくてもそこそこ楽しめそうな感じで思わず目移りしてしまうのではありますが、今回は関東の大手私鉄の中でもあまり撮影した事のない東武線沿線に出掛けてみる事にしました。

  

クルマで行っても良かったんだけど、帰りの渋滞が面倒くさそうなので電車で。横浜から北千住へ出る途中の上野で常磐線に乗り換えたのだが、上野駅のホームで三脚を持った連中が朝からウロウロしている。そういやこの日は「カシオペア紀行」の運行日だったね。3層構造になった東武電車の北千住の駅、本当は浅草から乗りたかった(浅草だと家から始発でも間に合わんのよ)快速の東武日光・会津田島行きを待つ。朝6時半の電車なのにまあ結構な乗車客がいるもんだ。ハイキング姿の中高年や、携行バッグを持ったチャリダーの姿が目立ちます。

 

浅草6:20発の快速東武日光・会津田島行きに使用される車両は、日光線系統の快速列車に使われる6050系。朝一番の日光方面優等列車なので赤いモケットのボックスシートは埋まり、めいめいが既に朝メシの弁当や飲み物、持ち込んだお菓子を広げて寛いでいる。車内に漂う雑多な匂いが混じり合って決して良い匂いではないんだけど、この匂いにも郷愁が感じられるというか、古き良き急行列車の旅らしい息遣いが残っているような気が。車内にもある方向幕は、分割併合する列車に充当される本形式らしい「この車両がどこへ行くのか」が一目で分かる誤乗防止用アイテム。

 

快速は複々線区間を突っ走り、東武動物公園から先は徐々に北関東らしい田園地帯の茫漠たる風景の中。終点の会津田島まで乗り通せば3時間半弱の長丁場、同じボックスシートにはどうやら栃木方面に冠婚葬祭のあるっぽい70代の母親と50代の息子が乗り合わせたんだけど、「〇〇ちゃんはどうしてる?」的な親子の膝つき合わせての会話をうつらうつらしながらぼんやりと聞いているのもやはり古き良き時代の急行列車の旅らしい。これで冷凍ミカンでも剥き始めたら最高なんだけどな…な~んて思いながら外を眺めていたら、大きな築堤をカーブして渡る利根川の眺めの雄大なこと!さすがの坂東太郎である。

 

私の目的地は会津田島行きのこの快速が止まらない駅なので、新栃木で接続する普通列車にお乗り換え。北千住から1時間10分は表定速度で言えば70km/hくらいなのでなかなかの快速ランナーである。北千住から春日部まで止まらないのがいい。まあ同席したおっちゃんは「越谷とか止まらないのに板倉東洋大前なんてこんな駅に止まるんだなあ」「俺が前に乗った時はこんな駅なかったのになあ」とか言ってましたが。ちなみに板倉東洋大前駅が出来たのは平成9年ですから、結構久し振りの日光線だったのね、おっちゃん。


新栃木駅の中線で宇都宮線の8000系更新車と並ぶ東武日光行き6050系。8000系が現行のデザインになる修繕工事が開始されたのが昭和61年、この6050系が製造されたのが昭和60年とほぼ同時期のせいか箱型二灯のヘッドライトに額縁型の張り上げブラックマスクの表情はよく似ていますね。ちなみに東武の8000系は私鉄の単独形式では最大の700両以上が製造された形式のため、車番が整理しきれなくなってご覧のような5ケタ(81106)のインフレナンバー編成がいるのはマニアには有名な話。

 

先ほどの快速とはうって変わって閑散とした東武日光行きの車内。2ドアの車体に並ぶボックスシート。リクライニングのない座席ですが座り心地はフカフカして悪くなく、背摺りについた立ち客用の持ち手と、ひじ掛けの整然とした並びにクラシック感がありますね。特別料金不要の車両で折り畳み用のテーブルが付いていたりと、しつらえも長距離向き。2両ユニットの編成ですが、各ユニットのクハ側にはトイレがあるので長時間乗車でも大丈夫です。


新栃木駅のホームを覆う木造の柱とトタン屋根と6050系。部屋とYシャツと私的な。なんか旅情を感じる一枚だな。駅員氏がフライ旗を持ってホームに立っているのって最近あまり見なくなったような気がするが、気のせいだろうか。写真に写っている6173号車はよく見ると運転台側にパンタグラフを付けてますね。たぶん冬季の霜取り用なんでしょうが、このスタイルで前パン上がったらかなりカッコいいんではないでしょうか。
コメント
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