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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

違国日記

2025年03月29日 | 映画(あ行)

コミュ障女子vs不安定少女

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ヤマシタトモコさん同名漫画の映画化です。

大嫌いで疎遠だった姉をなくした35歳独身の小説家・高代槙生(新垣結衣)。
葬儀の席で、姉の1人娘15歳・朝(早瀬憩)に
無神経な言葉を吐く親族たちの態度に我慢ならず、
勢いで朝を引き取ることにしてしまいます。

そもそも槙生は人とのコミュニケーションが苦手で、
感受性の強い10代少女との同居は、
勢いで決めてしまったものの、不安でしかありません。
しかし、親友の奈々(夏帆)や、元恋人・笠町(瀬戸康史)に支えられて、
なんとか2人の生活が始まります。

一方、この度中学を卒業し、高校生となる朝は、
人なつっこい性格ながら、母親の影響もあるのでしょうか、
自分のやりたいことも周囲を気にして踏み出せないところがあるようです。

性格がまったく異なるこの2人、案の定なかなか理解し合えないのですが、
それでも日々の生活の中でかけがえのない関係を築いていきます。

 

槙生は、昔姉から
「夢みたいなことばかり考えてないで、ちゃんと現実を見なさい」
と常に言われたことで傷ついて、姉を嫌っていたのでした。
それでも槙生は、自分らしさを貫いて、ファンタジー小説を描くようになったわけ。

しかしはじめから姪の朝に、姉が大嫌いだったと宣言するものだから、
当初の2人の関係はいかにもギクシャクしてしまいます。

朝にとっての母、つまり槙生の姉は、ごく普通に優しく愛情深い母親。
ただ少し、「普通」のあり方から外れることを避ける傾向があったくらい。

1人の人間でありながら、槙生から見た「姉」の像と、
朝から見た「母」の図はまったく異なっている。
けれど、2人がそのことを理解し受け入れていく過程こそが本作ということになりましょう。

終盤、槙生が自分の母親から姉妹2人の子どもの頃の話を聞いて、
二人の性格や関係性が今のようになってしまっていたわけが
おぼろげながら浮かび上がる、というところがミソです。
あくまでもおぼろげながらということで正解とは限りませんが。

15歳・朝は、両親を亡くしたばかりというだけではなくて、
その年齢からも、純粋で脆くて危なっかしい。
そういう雰囲気を早瀬憩さんがしっかり演じていました。
えーと、「ブラッシュアップライフ」や「虎に翼」にも出演? 
あらやだ、気づいていませんでした。
今後有望な方だと思います。

 

若干のコミュ障で、片付けも料理も苦手。
自立している35歳ながら、朝よりも子供のようなところがある槙生も、
新垣結衣さんが魅力的に演じています。

 

<WOWOW視聴にて>

「違国日記」

2024年/日本/139分

監督・脚本:瀬田なつき

原作:ヤマシタトモコ

出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、染谷将太、瀬戸康史

年代ギャップ度★★★★☆

満足度★★★★☆