映画と本の『たんぽぽ館』

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イーダ

2021年05月11日 | 映画(あ行)

亡き人への鎮魂の旅

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第87回アカデミー賞(2015年)外国語作品賞受賞作。
歴史の波に翻弄されたポーランドを舞台とした、全編モノクロ作品。

60年代初頭、孤児として修道院で育った少女・アンナ(アガタ・チェシェブホフスカ)。
まもなく修道女となる予定です。
その前に、唯一の肉親である叔母と過ごすようにと言われ、
アンナは叔母の住む町へ。
そしてアンナは初めて会った叔母・ヴァンダから、
自分の名が本当はイーダ・ベルンシュタインで、ユダヤ人であることを明かされます。

両親は何故自分を捨てたのか、そして両親はどうなってしまったのか・・・? 
その秘密を探るため、イーダはヴァンダと共に旅に出ます。

モノクロの映像は、ロードムービーとなる部分でも、
まるで修道院の中であるかのような静謐さを感じさせます。
叔母は実は人に恐れられるほどの敏腕検察官として仕事をしていますが、
酒とたばこ、男に溺れる寂しくすさんだ生活をしていたのでした。
だからイーダを引き取るという選択もあったのですが、
彼女はそれを拒み、イーダに対してもさほどやさしさを見せません。

両親がユダヤ人と言うことで、その末期もおよそ想像が付くわけですが、
ここで彼らに襲いかかったのはドイツ軍ではなく、地元の人々なのです。
人々はそんな過去を忌まわしいものとして忘れ去りたく思っており、
両親のことを尋ねるイーダとヴァンダに対して口が重いのです。
ヴァンダにとっては自分の見てきた出来事であり、今のすさんだ生活の元もここにある。
そしてヴァンダはイーダの両親の行方を捜すことに、
もう一つの目的を秘めていたのです。
今再び封印してきた忌まわしい記憶と向き合い、
そしてもう一つのある事実を確認したとき、
そこで彼女は生きる意味を失ってしまう・・・。

この旅は結局、亡き人への鎮魂の旅。
なんともやりきれない物語です。

けれどそれまでイーダは、他にすべがなく、仕方なく修道女になろうとしていました。
でも今、彼女は流されてそうなるのではなく、自分の意志で道を選び取る。
そこが光り輝いていました。
それはちょっぴり私の期待した方向とは違うのですが、
逆に苦難の道と思えるのです。
本作においてはやはりこれが正解なのかも。

 

<WOWOW視聴にて>

「イーダ」

2013年/ポーランド・デンマーク/80分

監督・脚本:パベウ・パブリコフスキ

出演:アガタ・チェシェブホフスカ、アガタ・クレシャ

歴史発掘度★★★☆☆

静謐度★★★★☆

満足度★★★★☆

 

 



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