映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

MOTHER

2023年04月12日 | 映画(ま行)

母の支配力から逃れられない

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実際に起きた、少年による祖父母殺害事件に着想を得たもの。
さすがに、重いです。

男達と行きずりの関係を持ち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子(長澤まさみ)。
実家にお金をせびりに行っても、あまりにも度重なることなので
すっかり愛想を尽かされ、絶縁すると宣言されてしまいます。
彼女は息子・周平(少年期・奥平大兼)に異様に執着。
自分に忠実であることを強いるのです。
母以外に頼る者のない周平は、なんとか母の要求に応えようともがきます・・・。

秋子は、生活保護などを受けたとしても、
パチンコなどにつぎ込んでしまい、いつもお金がないのです。
なんとか仕事に就こうなどという意欲もゼロ。
従ってなんとか男にすがって生きようとするも、こんな女に付く男はやはりクズ男。
周平の妹の父となる男(阿部サダヲ)は、
秋子の妊娠を知ると去って行って、
その後ようやく秋子の生活が底辺なりに落ち着いた?と思えるときに
またやってくる、どうにもならないヤツなのでした。

母はいきなりいなくなって何日も帰ってこなかったり、
時には住む家もなく、母子3人でホームレス状態ということも。
周平は小学校も不登校で、その後学校へも行っていません。
こんな、ネグレクトそのものの母なのに、彼は彼女のそばを離れません。
ある程度大きくなって、母から離れるという選択肢もあったのですが・・・。
こんな生活なら施設の方がよほどマシとも思えます。
実際そのように勧める福祉関係の職員もいたのです。
それでもなお、周平は母のそばを選んだ。

心理学的に言う「グレートマザー」そのもののような秋子は、
子供を支配し抱え込むあまりに、周平を少しずつ壊していっているようです。

このような厳しい生活状況であればあるほど、周平は母を頼りにするほかない。
それはそろそろ自立を迎える年齢になっても、
心の奥深くに刷り込まれてしまっていたのかも知れません。

そしてやがて、恐ろしい事件に繋がっていく・・・。

このとんでもない「母」役を、長澤まさみさんが素晴らしく演じていました。
そして奥平大兼さんもこれが初出演だったのですね。
私は彼も推しておりますので、皆様、よろしく。

 

「MOTHER」

2020年/日本/126分

監督:大森立嗣

脚本:大森立嗣、港岳彦

出演:長澤まさみ、奥平大兼、阿部サダヲ、夏帆、仲野太賀、土村芳、浅田芭路

 

生活破綻度★★★★★

ネグレクト度★★★★★

満足度★★★★☆



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