映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

島守の塔

2023年10月09日 | 映画(さ行)

人々の安全を優先に・・・という意志も空しく

* * * * * * * * * * * *

太平洋戦争末期の沖縄が舞台です。

激しい空襲と艦砲射撃、そして上陸戦で、20万人が犠牲となりました。
本作は、絶望の淵に立たされながら、「命こそ宝」を訴え、後世に希望を託した二人、
沖縄県知事・島田叡(萩原聖人)と、警察部長・荒井退造(村上淳)を描きます。

県知事・島田が赴任したのは、すでに那覇が空襲で焼かれ、ほとんど廃墟となっている時期。
島田は、他に誰も来たがらないだろう・・・ということで、
自ら泥をかぶる覚悟で赴任してきたのです。

警察部長・荒井も当時想像されるような高圧的な人物ではなく、
なんとか沖縄の人々の力になりたいということでは、
二人とも意見は一致します。

実際はどうか分かりませんが(?)二人ともリベラルな思想の持ち主。
野球が好きで、野球の話になるとつい、敵性語が飛び出してしまうのもご愛敬。
この二人の当面の敵は、もちろん米軍ではありますが、日本の陸軍でもあります。
彼らは沖縄県人をゲリラに仕立て、
まさに、全員を盾にして米軍と戦わせようと目論んでおり、
現にそうしたわけで・・・。

そんな中でも島田と荒井は、なんとか人々を巻き込まず安全に暮らさせてやりたいと、
彼らのできる精一杯のことをするのですが、
でも事態は悪くなるばかり・・・。

そして本作で女性代表として登場するのは、県知事の世話役となる
県職員・比嘉凜(吉岡里帆)。
彼女はこれまで教えられた通り、もし米軍が責めてくれば、命をかけて闘う心づもり。
というのも、米軍が来れば、男は八つ裂き、女は犯されると聞かされていたから・・・。
万が一の時には、辱めを受ける前に自決せよと言い渡されていたことを、
当然のように受け入れているのです。
しかし、彼女の親しい人々も血まみれになって死んでいく・・・。

県庁もとうに無く、知事は洞窟の暗がりで指示をするという始末・・・。

ガチで戦争を考える作品。
二度とこんなことはあってほしくないですが、
世界のどこかでは普通に起こっている・・・。
しんどいですね。

<WOWOW視聴にて>

「島守の塔」

2022年/日本/130分

監督:五十嵐匠

出演:萩原聖人、村上淳、吉岡里帆、池間夏海、榎本孝明

 

歴史発掘度★★★★☆

戦争の非道さ★★★★★

満足度★★★★☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿