映画と本の『たんぽぽ館』

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マイ・エンジェル

2021年02月11日 | 映画(ま行)

育児放棄、その残された子

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南仏コート・ダジュールの美しい海岸の町。
シングルマザーのマルレーヌ(マリオン・コティヤール)は、
8歳の娘エリー(エイリーヌ・アクソイ=エテックス)とその日暮らしをしています。

しかし、自らの失態で結婚が破談となったマルレーヌは、
ますます生活が荒れ、あるときエリーの前から姿を消してしまいました。

一人取り残されたエリーは・・・。

 

何しろマルレーヌは結婚式当日の夜、
他の男とヤッているところを新郎に目撃されてしまった・・・。
それであっという間に破談です。
彼女が身持ちの悪い女であることを初っぱなから突きつけるエピソード。
エリーについては一緒にいればベタ甘。
常に酒浸りでむら気はあるけれど、概ね優しい母なのです。

エリーに「マイ・エンジェル」と呼びかける。
そんなマルレーヌは夜な夜な出歩いて留守にすることはいつものこと。
それでもさすがに、こんなに幾日も帰ってこないことはこれまでなかったのです。

元々お金のない家だから、食べ物もエリーが使えるお金もほとんどない。
どこかに助けを求めれば、たちまち母とは引き離されて施設送りになるだろう。
それがわかっているので、何気ないフリをして学校には通います。
時にはサボってしまうけれど・・・。
というのも、エリーは学校では孤立していて、楽しいことは何もありません。
いじめまでとはいわないけれど、嫌がらせを受けることも・・・。
気丈に孤独に耐えるエリーが、一人の青年に気を引かれます。
それはトレイラーハウスに住む孤独な青年。
なぜか自分と同じ匂いを嗅ぎつけたのでしょうか、
エリーはフリオと徐々に心を通わせていきますが・・・。

是枝裕和監督の「誰も知らない」を思い出しました。
あの母親も、子どもたちといるときは妙に優しいのでした。
まるで「私は本当はいい母親」と自分自身に言い聞かせるかのように。
しかしすぐにそれにも飽きて、また育児放棄していなくなってしまいます。
幼児性丸出し。

しかし、取り残された子どもは、自分が生きるために精神は老成していくのです。

 

エリーについてはその憂さを晴らすためにアルコールに頼ったりもする。
いくら精神が老成していくとはいっても、やはり人のぬくもりは欲しい。
そこで、フリオをまるで父親のように慕い始めます。
エリーは自分の本当の父が誰であるかすら知らないのです。
私、フリオが幼女誘拐とか性犯罪者という疑いを持たれるのでは?と、
若干ハラハラしてしまいましたが、幸いそういう展開にはなりませんでした・・・。
ほっ。

エリーの母親への強い思慕が、絶望へ、
そして拒絶へと変化していく様が見事に描写されています。

この、マルレーヌこそが、どんな育ち方をしたのかが気になるところです。

 

<WOWOW視聴にて>

「マイ・エンジェル」

2018年/フランス/108分

監督:バネッサ・フィロ

出演:マリオン・コティヤール、エイリーヌ・アクソイ=エテックス、
   アルバン・ルノワール、アメリ・ドール

 

育児放棄度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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