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ブラインドスポッティング

2021年02月12日 | 映画(は行)

黒人=悪という思い込みの盲点

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カリフォルニア、オークランドで生まれ育った親友同士の二人、
コリン(ダビード・ディグス)と、マイルズ(ラファエル・カザル)。
コリンは黒人青年で、ある事件で罪を犯し、
服役後、保護観察期間を残り3日としています。
そのための施設で寝泊まりし、夜は11時までに戻らなければなりません。

一方マイルズは白人ですが、こちらもかなりの問題児。

オークランドといえば、米国でも上位に入る治安の悪い都市。
でも近年は再開発で地価高騰。
住人の層が変化すると共に治安の悪さも縮小してきている、というところのようです。

さてその、残り3日間をなんとか無事に過ごさなければならないコリンが、
黒人男性が白人警官に追われ、背後から撃たれる場面を目撃してしまいます。
その時すでに夜11時をやや回っており、コリンはそのまま帰るしかありませんでした。
翌日のニュースでは問題など何もなかったように、
反抗した黒人が警官に射殺されたと報じられたのみ。

これもまたBLACK LIVES MATTERの問題なのでした。

先の事件の時も、コリンとマイルズは共にいて、
いっしょにいざこざを起こしたのに、自分だけが刑務所行き。
白人のマイルズは無事でした。
幼い頃からの友人で何もかも知り尽くしている。
だけれども、口にはできないわだかまりがコリンにはあるようなのです。

もう二度と刑務所には戻りたくないと思うコリンは、
努力して生活改善をし、ジョギングをして青汁を飲み始めたりします。
しかしマイルズは相変わらず悪い仲間とつるんで、
拳銃を買ってみたり、キレやすくてすぐに暴力を振るう。

終盤コリンはマイルズにいいます。
「おまえは、世間が“ニガー”だと思う姿そのものだ」。
この犯罪多発の街では、黒人=悪という思い込み、
つまりはそれがBLACK LIVES MATTERの根源なのでしょう。
しかし実はマイルズにとっては近所の悪ガキたち(ほとんど黒人)となじむために、
“ニガー”的にならざるを得なかった、という事情もありそうな気がしますが・・・。

作中で、ある写真家に言われて
二人が向き合って互いの目を見つめ合うシーンがあります。
ゲイじゃあるまいし・・・と照れながら、しばし見つめ合う。
毎日のように会っているのにこんなことをしたことがない。
互いの心の中に何を見たのか・・・。
もちろんそれを語り合ったりはせず、「バカみたいだ」とおちゃらけて
そのシーンは終わったのですが、すごく象徴的でまた、ドギマギするシーンでした。

互いのアイデンティティ。
見えない壁。

どんなに親しいようでも、それはある。
でもそれを認め合うことが大事なのでしょう。

「ブラインドスポッティング」は「盲点」の意味。
二人が向き合っているようにも、ツボのようにも見える絵をご存じでしょうか。
その絵にどちらの意味を見出すかはその人個人の感覚で、
意識しなかったもう一つの意味は、いわば「盲点」なのですね。
でも意識すれば、どちらも読み取ることはできる。
黒人=悪 という思い込みの、盲点となっている部分にも目を向けよう、
と本作はいっています。

ラップミュージシャンのダビード・ディグス、ラファエル・カザルの二人の脚本で主演。
作中もラップを意識したセリフがたくさんあって、
なんとも心憎い作品なのでした。

 

<WOWOW視聴にて>

「ブラインドスポッティング」

監督:カルロス・ロペス・エストラーダ

脚本:ダビード・ディグス、ラファエル・カザル

出演:ダビード・ディグス、ラファエル・カザル、ジャニナ・ガバンカー、
   ウトカルシュ・アンブドゥカル、ジャスミン・シーファス・ジョーンズ

 

問題提起度★★★★★

満足度★★★★★

 



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