映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

極道めし

2021年11月10日 | 映画(か行)

獄中のうまいもの自慢

* * * * * * * * * * * *

土山しげるさんのコミックの映画化。

栗原健太(永岡佑)が入所した刑務所のとある獄房が舞台です。
一部屋に5人が収監されています。
お正月の一月ほど前、何やら盛り上がる彼ら。
それは、おせち料理の争奪をかけて、
自らの経験した一番うまいもの自慢のバトルをしようというもの。
各自のこれまでで一番おいしかったと思うものを語り、
その語りにはまってつばを飲み込み、ゴクリと喉を鳴らす者が一番多かった人が勝ち。
そうすると全員からおせち料理を一品ずつもらえるというのです。
まことにささやかで子供じみたやりとりではありますが、
変化のない刑務所暮らしで出来る楽しみといえばこれくらいなのかも知れません。

彼らが語る食べ物は、こんな場所に流されてきた面々ですので、
高級なフレンチなどではなく、ごく一般的な食べ物。
カレーオムライス、卵かけご飯、海鮮バーベキュー、すき焼きなど・・・。

食べることを語ることはすなわち人生を語ること。
一人一人の辛い過去などを浮き彫りにしながら、なんとも食欲をそそる話が満載。
今、自由に食事を選べない彼らにとって、酷な気がするくらいです。

そんななかで一番新米の健太は、この賭けに参加することも拒んでいたのですが、
彼に届いていた手紙が元で喧嘩になってしまった事件を経て、
ついに語り始めます。

それは、ラーメン屋をいつか開きたいと思っている健太の彼女が、
最後に健太に作ってくれたラーメンでした。
インスタントラーメンではありますが、
あり合わせを利用したちょっと変わった仕立てだったのです。

一緒にいるときは、邪険にしてしまった彼女。
でも獄中にあっては、健太のためにいつも尽くしてくれたことが思い出されて身にしみるのです。

食べ物のことのみならず、こうしたストーリーがあるのも興味深いところですね。
結局彼女から来た手紙が、「待っている」というものだったのか、
「さよなら」を告げるものだったのか、
最後の最後まで分からないところがミソでした。

健太には、ちょっとしょっぱいラーメンだったかも・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「極道めし」

2011年/日本/108分

監督:前田哲

原作:土山しげる

出演:永岡佑、勝村政信、落合モトキ、ぎたろー、麿赤兒、木村文乃、田中要次

 

コミカル度★★★★☆

食欲増進度★★★★☆

満足度★★★.5

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿