映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フェイブルマンズ

2023年03月31日 | 映画(は行)

映画を通して成長する

* * * * * * * * * * * *

巨匠、スティーブン・スピルバーグ監督が、
映画監督になるという夢をかなえた自身の原体験を映画化した、自伝的作品です。

サミー・フェイブルマン少年は、初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になってしまいます。
母親から8ミリカメラをプレゼントされ、
おもちゃの汽車が車と激突するところや、家族の様子を撮影。
将来、映画に関わる仕事をしたいと夢見るようになります。

ピアニストである母(ミシェル・ウィリアムズ)は、サミーの夢を応援しますが、
エンジニアである父(ポール・ダノ)は、現実的で、
サミーの映画への思いを単に趣味としか見なしません。

他にも妹が3人という家族の中で、少年期から映画界へ身を投じるまでの
サミーを描いているわけですが、これはそれと同時に「家族」の物語でもあるのです。

自由闊達で、竜巻が近づいてくれば「見に行こう!」と
車に皆を乗せて竜巻に近づいて行ってしまうような母。
実はこういう性格はサミーに受け継がれているわけです。

父は、当時の開発最先端のコンピューターの仕事をしていて、
優秀で、のちに、IBMに勤めるようになるという、いわばエリート。
そんな家族ととても親しくしていたのが父の親友であるベニー(セス・ローゲン)。
彼はいつも彼ら家族とともにいました。

高校生になったサミーは、家族のキャンプのフィルム編集をしていて、
気づいてしまうのです。
母の心中を・・・。

ここのシーンが秀逸だと思いました。
彼に映画の志がなければそんなことには気づかなかったのかも知れないのに・・・。
思春期の男子が、母親の真の気持ちがどこにあるか知ってしまうというのは、
まさにショッキングなことですよね・・・。

そして彼らユダヤ系の移民家族は、カリフォルニアではいささか差別を受け、
サミーもいじめを受けるようになってしまいます。
そんな中で、学校のレクリエーション行事の記録をサミーが撮ることになり・・・。

サミーは、彼をいじめる相手をすごくかっこよく、ヒーローのように写し撮ります。
それは、別に皮肉でもなく、彼におもねる気持ちからでもなく、
単に客観的に事実カッコ良かったからなのでしょう。

ところが、その相手の反応が意外だった。
人の気持ちというのは分からなくて、面白いなあ・・・と思った次第。

映像は、単にカッコ良くおもしろいだけではダメで、
そこに人の心も映しこまなければダメなのだ・・・と、
サミーはそこで悟ったのかも知れないし、
本作でそういうことを言いたかったのかもしれませんね。

デビッド・リンチ監督が、ジョン・フォード監督役で登場するのがご愛敬。

なんだかそれやこれやで、本作はすっかり私の心に染み入りまして、
何でこれがアカデミー賞でなかったのか、と疑問に思うくらいです。

私的には、最近見た洋画の中では一番のオススメ。

 

<シネマフロンティアにて>

「フェイブルマンズ」

2022年/アメリカ/151分

監督:スティーブン・スピルバーグ

出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル、デビッド・リンチ

 

映画愛度★★★★★

知られざるスピルバーグ度★★★★☆

満足度★★★★★



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