映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パターソン

2018年11月28日 | 映画(は行)

何気ない日常が美しい

* * * * * * * * * *

ニュージャージー州パターソン市で暮らす、バス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。
朝起きると妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして仕事にでかけ、一日路線バスの運転。
帰宅すると愛犬マービンを連れて散歩。
その途中にバーへ寄ってビールを一杯。
単調な毎日が繰り返されていきます。



何気ない日常をじっくり映し出すのは、ジム・ジャームッシュ監督なので覚悟してました。
でも全然退屈しません。
日々は同じように見えて決して同じではありません。
ましてやここに登場するパターソンはバス運転手にして詩人。
いえ、決してプロではありません。
自分の気に入った言葉を、自分だけの秘密のノートに書き留めているだけ。
けれど、彼の目には毎日がみずみずしく美しい。

また、彼の妻がユニークなんですよ。
専業主婦で、自分でカーテンを作ったり、教本付きのギターを買って練習してみたり。
目下手作りのカップケーキを市場で売ってみようと計画中。
彼女自身が自由な芸術家。
だから夫の詩作にも理解を示していて、すばらしいから公表すべきだという。
退屈というものを知らない風の彼女。
確かに見ているだけのこちらも退屈しない。





さて、それでいて小さな“事件”らしきこともいくつか起こるのですが、
最後の“事件”は、さすがにパターソンにとってダメージが大きかった。
しかしそこに何故か日本人(永瀬正敏)がフラリと登場して、重要な役割を果たします。
同じような日々の繰り返しに見えて、世の中はなんて奇跡に満ちているのだろう・・・。
なんだか生きていくことも悪くないって気がしてきますね。



そうそう、本作中パターソンは幾度も双子を目撃します。
始めは妻が「二人の子供」の夢を見たと話をして、
その後、子供だけはなくて成人やお年寄りも含めて幾組かの双子と遭遇することになる。
このことに何の意味があったのか、作中では答えは出ていないのですが、私は勝手に想像する。
後にこの夫婦に双子が誕生するのかも・・・なんて。
通俗的すぎかな。



ともあれ、まさに一つの詩篇のように美しい作品でした。

パターソン [DVD]
アダム・ドライバー,ゴルシフテ・ファラハニ,永瀬正敏
バップ



<WOWOW視聴にて>
「パターソン」
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、クリフ・スミス、チャステン・ハーモン、永瀬正敏
日常度★★★★★
満足度★★★★★



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アダム・ドライバー (こに)
2018-11-29 08:12:01
沈黙ーサイレンンス、あなたを見送る七日間、が印象的な役者さんです。
探してみますね!
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地味な作品にハマる (たんぽぽ)
2018-11-29 15:35:32
こにさま
近頃つくづく思うのですが、映画の興行成績ランキングに入るような派手な作品がどんどん苦手になっていきます。実のところ先日のファンタスティック・ビーストも少し居眠りしたし・・・。
でもこんなふうに静かな作品では全然眠くなりません。
歳のせいでしょうかねえ・・・。
したがって、映画ブログ記事はあまり訪問者数は上がりませんワ・・・^^;
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Unknown (風子)
2018-12-01 22:19:47
何気ない日常だけど、幸せを感じる映画で好きです。
ラストの永瀬さんと二人のシーンも、とっても面白くてかわいらしさも感じられました。
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ワンちゃん (たんぽぽ)
2018-12-02 11:32:38
風子さま
ここに登場したワンちゃんも、いい味出てました。
ワンちゃんが最後にやらかすわけですが、パターソンは「お前なんかきらいだ」というだけなんですよね。
そんなところに人柄もにじみ出て、いいなあ・・・と思います。
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