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さらば愛しきアウトロー

2019年07月25日 | 映画(さ行)

さらば愛しきロバート・レッドフォード

* * * * * * * * * *

ロバート・レッドフォードが俳優引退宣言をしたという作品。
1980年代初頭~アメリカ各地で銀行強盗をし、
逮捕・脱獄を繰り返した実在の人物フォレスト・タッカーをモデルとしたストーリー。

刑事ジョン・ハント(ケイシー・アフレック)は、
たまたま私用で訪れた銀行で銀行強盗事件に遭遇するのですが、
なんと強盗がまんまと現金を手にして銀行から逃げ去るまで、
そのことに気づかなかったのです。
悔しい思いをしたジョンはその事件の捜査を進めるうちに、
同様の事件が各地で数十箇所も起こっていることに気が付きます。
一つ一つは小さな事件なので、新聞などに取り上げられることも少なく、
その全体像に気づく人が他にいなかったのです。

その強盗フォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)は、
銃口を行員に突きつけながらも、発砲はなし。暴力もなし。
物腰が柔らかで紳士的。
「幸せそうに見えた」などという証言も。
ジョンはこの犯人を追いながらも、
次第に友情に似た親近感を覚えるようになっていきます・・・。

本ストーリー上はひたすら強盗を繰り返すことが主眼となっているのですが、
終盤で明かされるフォレストのもう一つの驚くべき過去、
これにも唸らされてしまいます。
こんな生活で、あそこまで「紳士的」な振る舞いができるというのが、やはりすごい!



しかしなんというかもう、ここまで来るとビョーキとしか言いようがないのかもしれません。
その息づまる緊張感、スリル、そして成し遂げた時の達成感。
そうしたものが麻薬のように彼を虜にしてしまったに違いありません。
だから平穏な生活の中では生きられないのです。
だとすると悲劇のようでもあり、
しかし本人がそれで「幸せそう」に見えたのであればやはり幸福なのでしょう。



それだから私は思うのです。
ロバート・レッドフォード氏が本作で「引退」を宣言したとしても、
彼は映画づくりという緊張感のない生活には馴染めないのではないか。
いつかまた「やっぱりやめるのや~めた」と言って戻ってきても、私は歓迎します。


まあそれにしても、若き日のロバート・レッドフォードを知っていれば
今の彼の姿には若干ため息を付きたくなってしまうのは事実。
このへんで線引をするのは英断ではありますが、
それでもなお、だからこそできる役もあるわけで、
引き続き頑張ってみるというのも貴重な決断だと思う次第。
今回の宣言にこだわらず、やってみたい作品があればやってみればよいのでは・・・?


<シアターキノにて>
「さらば愛しきアウトロー」
2018年/アメリカ/93分
監督:デビッド・ロウリー
出演:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、ダニー・グローバー、チカ・サンプター、トム・ウェイツ、シシー・スペイセク

ロバート・レッドフォードの魅力度★★★★☆
満足度★★★.5



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