映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ライオンは今夜死ぬ

2019年07月26日 | 映画(ら行)

70~80歳が人生最良のとき

* * * * * * * * * *


周防敦彦監督によるフランスが舞台の作品という異色作。


老齢の俳優ジャン(ジャン・ピエール・レオ)は、
映画のロケのために南フランスに来ています。
しかし、ある事情で撮影がしばらく休止となってしまったため、
近くのかつて愛した人のいた屋敷を訪ねることにしました。
屋敷は住む者もおらず荒れ果てていましたが、
ジャンはそこで若くして亡くなったはずの、若き元の妻と出会うのです。
また、近所の子どもたちがこの屋敷で映画の撮影をさせてほしいと、やって来ます。
子どもたちに協力して出演まですることになったジャンですが・・・。

老人の昔日の思いを綴る陰鬱な作品・・・?と思ったら、
子どもたちの登場で作品は一気に色づきます。
社会の生産活動から外れた子供と老人は、ウマが合うことになっているのです。
この取り合わせがなんともいいですよねえ。

「70~80歳が人生最良のときだ」というジャンはまた、
「死」は「出会い」であるとも言います。
最も「死」に近い彼だから、亡き妻とも出会えたのでしょうか。
妻は亡き人ではありますが、幽霊の怖さは全然ありません。



そしてまた、本作ではその「死」とは最も遠い子どもたちを配置してあります。
ジャンに比べると、なんと生命力に満ちて多くの未来を内包していることか。
なんだか眩しいくらいです。

でも、そんな中で父親の死を体験した一人の少年とジャンは、
いっとき心がつながるところがあるのです。
死という運命を、少年は見たような気がする。
それがあのライオンだったのかどうか・・・、
解釈は私たち一人ひとりに委ねられます。
あるいは、少年の亡き父親かもしれないし、
またあるいは、死に一番近いけれど恐れずに進んでいこうとする老人の姿なのかもしれない。
私には、ナルニア国の「アスラン」のようにも見えました・・・。

ユニークな作品だったな。

ライオンは今夜死ぬ [DVD]
ジャン=ピエール・レオー,ポーリーヌ・エチエンヌ,イザベル・ヴェンガルテン,アルチュール・アラリ
紀伊國屋書店

<WOWOW視聴にて>
「ライオンは今夜死ぬ」
2017年/フランス・日本/103分
監督・脚本:周防敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオ、ポーリーヌ・エチェンヌ、モード・ワイラー、アルチュール・アラリ、イザベル・ベンガルテン

死を考える度★★★★☆
満足度★★★★☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿