映画と本の『たんぽぽ館』

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ONODA 一万夜を越えて

2024年06月07日 | 映画(あ行)

長い孤独な戦争

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太平洋戦争終結後も任務解除の命令を受けられず、
フィリピン、ルバング島で孤独な日々を過ごし、
約30年後1974年51歳で日本に帰還した小野田旧陸軍少尉の物語。

前から見たいと思ってはいたのですが、
全体で174分という長さに怖じ気づいて、これまで見ないでいました。

私くらいの年齢だと小野田さんの帰還は当時リアルタイムでニュースで見ていまして、
実際驚いたものです。
今の若い方なら「小野田さん」と聞いても分らないのでしょうね。
であればなおさら、見る価値がある作品だと思います。

陸軍中野学校二俣分校で秘密戦の特殊訓練を受けた小野田寛郎。
フィリピン、ルバング島で援軍部隊が戻るまで、ゲリラ戦を指揮するようにと命じられます。
彼は出発前に教官から「玉砕は許されない。必ず生き延びなくてはならない。」
と言われたのです。

1945年8月。
終戦となってもこの島でその情報を得ることができず、
島内の日本兵は戦争のゲリラ戦を続けます。

小野田は4人のチームとなり、ジャングルに潜みながら
ときおり島民の畑や民家から必要なものを調達して生き抜き、
しかしおよそ30年後には彼1人となっていたのでした・・・。

本作はフィクションを交えているようですが、
事実に基づいている部分も多いようです。

小野田さんの帰還当時、私はごく一般の兵士と思っていたのですが、
陸軍中野学校と言えばエリートですよね。
その辺も、当時はニュースで伝えられたのでしょうけれど、
私自身にそこまでの理解が足りなかったというか
興味も持っていなかったというのが実のところかも知れません。

作中最後に任務解除の命令書が読み上げられるのですが、
その中で「別班」という言葉があって、おっと思いました。
つまり彼は陸軍「別班」の任務に当たっていた。
だからこその異常なほどの思い込みで仲間を引き連れて「戦争」を続け、
生き抜くことに執着していた・・・。
そうでなければとっくに投降していたのかも知れません。

それにしても、こんなところで「VIVANT」に繋がるとは・・・驚き。

 

結局、この島で生き抜いた30年を表わすのに、
約3時間の長さはやはり必要だったのです。
納得。

 

それとこの作品が日本人ではなくフランス人監督によって作られたというのは、
少し残念な気がするのです。
でも日本人には若干敗戦コンプレックスみたいなところがあって、
なかなか客観的にこの出来事を捉えられない気もします。
だからこれはこれで良しですね。

 

<Amazon prime videoにて>

「ONODA 一万夜を越えて」

2021年/フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本/174分

監督:アルチュール・アラリ

出演:遠藤雄弥、津田寛治、仲野太賀、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井ノ脇海、イッセー尾形

 

歴史発掘度★★★★★

不屈の魂度★★★★☆

満足度★★★★☆



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