悲劇と喜劇は裏表
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本作はちょっとショッキングなシーンから始まります。
引きこもりだった鈴木家の長男・浩一(加瀬亮)が、自室で自殺するのです。
それを見た母(原日出子)は後追い自殺しようとしたらしいのですが、
命は取り留め、しかし、病院のベッドで昏睡状態が続いています・・・。
その母が、長男の四十九日の日に突然目を覚ます。
しかし、長男の自殺のことはショックのせいか記憶が飛んでいるのです。
母をまたショックに晒したくない夫(岸部一徳)と、長女・富美(木竜麻生)は、
浩一は部屋を出て、今はアルゼンチンで仕事をしていると、
とっさに言いつくろうのですが・・・。
浩一が引きこもっていた理由、死んだ理由は結局のところ作中ではわからないままです。
けれども家族一人一人が、自分に何かもっとできたことがあるのではないか、
自分の何気ない一言が彼を追い詰めたのではないか・・・
という思いに囚われているのです。
だからとても重いストーリーのはずなのですが、
浩一の叔父・叔母も含めて、
家族皆で嘘を取り繕おうとするところが、なんともおかしいのです。
悲劇と喜劇は裏表のものなのかもしれません。
ずっと無表情に沈んでいて、兄の死については悲しみよりも怒っているように見受けられる富美。
彼女も、何かしら自責の念に駆られているわけですが、
本作、彼女が兄の死を本当に受け入れ、悲しむことができて、
そして次に踏み出すまでの物語と言えるかもしれません。
悲しみを乗り越えるためには、大声で泣く事って大事なのですよね。
重く、もの悲しくも、からっと笑える、奇跡的一作。
<Amazonプライムビデオにて>
「鈴木家の嘘」
2018年/日本/133分
監督・脚本:野尻克己
出演:岸部一徳、原日出子、木竜麻生、加瀬亮、岸本加世子、大森南朋
悲喜劇度★★★★☆
満足度★★★★★
本作、ウォッチリストに入れてあります。
楽しみ~♪
意外なものが意外と胸を打つということがありますね。
その時の自分自身のコンディションによるのかもしれませんが。
最近私は、大がかりなアクション大作があまり楽しめなくなったのも、自分の年のせいもあるかと思いますが、多くの映画などを見て、胸を打つのはアクションじゃない、心のドラマだ・・・と、今さら思うようになったもので・・・。
それでもやはり、時には痛快アクションドラマも悪くないですけどね。
あまりにも重い話もちょっといやなのですが、本作のようにユーモアも交えてあるのが、やっぱり好きです。