映画と本の『たんぽぽ館』

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神々の山嶺(いただき)

2023年01月19日 | 映画(か行)

納得のアニメ

* * * * * * * * * * * *

夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画化した山岳コミックを
フランスでアニメーション映画化したもの。

私、夢枕獏さんのこの原作に、かつてものすごく心震わせられました。
2016年には「エヴェレスト 神々の山嶺」として実写映画化されています。
このときの主演が岡田准一さんと阿部寛さん。
でも実のところ、それを見たときには「心震える」ほどの感動は得られず、
まあ、こんなものかな・・・と思った記憶が。

そしてこの度は、アニメ作品。
しかも日本ではなくてフランスによるもの、と、なんとも予想外のアニメ化でした。
そんなわけで、本作には結構期待感があったのですが、
劇場公開時には見損ねて、ようやくこの度配信視聴です。

記録上、エヴェレストの初登頂は1953年。
けれどイギリスの登山家ジョージ・マロリーが1924年6月に
エヴェレスト山頂付近で消息を絶っていることから、
マロリーが初登頂だったのかも?と言う説があります。
この話が、本作の下敷きになっています。

さて、ネパールのカトマンズを訪れた雑誌カメラマンの深町。
彼が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に持ち、去って行く男の姿を目撃します。
その男は、長らく消息を絶っていた孤高の登山家・羽生だったのです。

マロリーの謎に興味を持つ深町は、羽生の行方を探すことにします。
そのため、深町は羽生の人生をたどることになりますが、
彼の山への執念に魅了されていきます。

そしてやがて、2人の運命が交差することに・・・。

実写ではなく、アニメであることの必然性がくっきりと浮かび上がりました。

羽生はこのとき、「冬季エヴェレスト南西壁、無酸素単独登頂」を目指していたのです。
ほとんど無謀とも言える挑戦。
なぜそんな危険を冒してまで山に登るのか。
答えのない問いに、羽生は自らの行動で回答を示しているようでもあります。

この広大で厳しく、人を拒絶しようとする山。
これを表現しようとすると、実写ではどうしても難しい。
アニメだからこそできることが確かにあるものですね。
しかしアニメだからといって、超人的な動きになっているわけではなく、
あくまでもリアルです。

そしてまた、山の表現の素晴らしさもさることながら、
日本の街や居酒屋などの光景がまた、すばらしい!! 
空気感そのまま。
やるものですねえ・・・。

実に、納得のアニメ!!

 

<Amazon prime videoにて>

「神々の山嶺(いただき)」

2021年/フランス・ルクセンブルク/94分

監督:パトリック・インバート

原作:夢枕獏、(画)谷口ジロー

出演(声):堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美

 

山の威圧感★★★★☆

孤高の登山家度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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