映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

静かな雨

2021年07月13日 | 映画(さ行)

たい焼き食べたい!

* * * * * * * * * * * *

本作は宮下奈都さんデビュー作が原作だったのですね。
仲野太賀さん出演なので見たわけなのですが、エンドロールで見て初めて知りました。

大学で生物考古学研究助手を務める、行助(仲野太賀)。
こよみ(衛藤美彩)という女性が一人で切り盛りしているたい焼き屋に通うようになり、
親しくなっていきます。

そんなある日、こよみは交通事故に遭い、記憶に障害が起こってしまいます。
事故以前の記憶は残っているけれど、
事故の後、意識を取り戻してからの記憶は、一日たつと消えてしまうのです。
こよみのことを案じた行助の提案で、二人は共に暮らし始めますが、
新たな記憶が刻まれることのないこよみに、行助は次第にいらだちを覚えるようになり・・・。

 

事故直前のこよみは、ちょうど行助に好意を覚え始めた頃でした。
だから彼女は、朝、行助の部屋で目を覚ましても、拒否感はないのです。
でも、自分がどうしてここにいるのかわからない。

「ここ、行助の部屋?」
「雨、上がったのね」

こよみは、毎朝毎朝、判で押したようにこの言葉を口にします。
その都度、行助は丁寧に説明し、二人の一日が始まるのです。

けれど、その一日は次の朝には消えてしまう。
夕ご飯にブロッコリーがでて、行助は「これは嫌いだ」とその都度言うのですが、
次の日にはこよみはそのことを忘れているので、またブロッコリーが出てくる・・・。
おいしい焼き芋を仲良く食べた楽しいひとときも、こよみは次の日には忘れている。

そんなとき登場するのが、こよみの元カレ。
こよみは彼とのことはすべて覚えているのに、自分のことはほとんど知らない。
自分との思い出は決して積み重ならず、今以上に愛が育つこともない。
自分から言い始めた同居生活なのに、そのむなしさ、切なさに
自分で傷ついていく行助。
うーむ、なかなかに切ない物語です。
記憶が一日で失われてしまうという物語は他でもありましたけれど、
これもかなりの名作であります。

でも考えようによっては、付き合い始めのほのぼのウキウキした気持ちが
毎日ずっと続くというのは実は幸福なことでもあります。
こんな気持ちはあっという間に過去になって消え失せてしまうのが世の常ではありますから・・・。

河瀬直美監督がこよみの母役でちょい出演。
驚きます。

<WOWOW視聴にて>

「静かな雨」

監督:中川龍太郎

原作:宮下奈都

出演:仲野太賀、衛藤美彩、河瀬直美、古舘寬治、萩原聖人、村上淳、でんでん

切ないラブストーリー度★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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