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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

おしょりん

2025年04月26日 | 映画(あ行)

メガネ作りの始まりの物語

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作家・藤岡陽子が史実を元につづった同名小説を映画化したもの。

明治37年、福井県足羽郡麻生津村。
庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)のもとに、
むめ(北乃きい)が嫁いできます。

ある日、大阪で働いていた五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が帰郷し、
村を挙げてメガネ作りに取り組まないかと提案します。
当時、メガネはまだ人々に知られていなかったのですが、
今後活字文化の普及により、必需品になっていくだろうと、幸八は見込んだのです。
はじめのうち反対していた五左衛門ですが、
やがて挑戦を決めて、村の人々を集め、工場を立ち上げます。

福井県の福井市、鯖江市で、日本製メガネフレームの95%を生産しているといいます。
鯖江市は世界最高水準の技術を有する世界的メガネ産地。
つまりここまでに成長したメガネ作りの始まりの物語。

まずは、時代を読んだ幸八さんの先見の明が功を奏します。
でもこの村ではメガネをかけている人など誰もいない。
そもそも、メガネってなんだ?という話。
雪深いこの村を豊かするためには、農業だけではないなにかが必要だと、
幸八は常々考えていたのです。

そして、それに挑戦をすると決めた五左衛門さんがまたすごい。
まずは金属加工のところから始めなければならず、職人を育てなければなりません。
ようやくまともな物をつくることができるようになるまで数年。
そんなうちにも、メガネフレームの素材の主流が変わっていく。
元は豊かだった五左衛門の家も田畑を手放し借金をして、
どんどん生活が苦しくなっていきます。
そんな中でも全責任を背負って前進する彼の姿勢はもう、尊敬するしかありません。
どこかであきらめ、投げ出してもおかしくはなかった・・・。

そうした頑張りが、今の福井のメガネ作りの元になったというのは、
いかにも感慨深いですね。
拍手!!!

そして本作、ほんのりとむめと幸八のロマンスが描かれているところが、ステキなのです。

いえ、実際には何もない。
けれど、互いの中に淡い思いがあったという物語性を入れたところが、良いなあ・・・。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「おしょりん」

2023年/日本/120分

監督:児玉宣久

原作:藤岡陽子

出演:北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎、かたせ梨乃、佐野史郎

歴史発掘度★★★★☆

ロマンス度★★★★☆

満足度★★★.5