写真には撮る者の心が写る
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名バイブレイヤーとして知られる平泉成さん、80歳にして初の映画主演作。
ちょっと意外な感じですが、そうなんだあ・・・。
気鋭のカメラマンとして活躍する太一(佐野晶哉)。
端からの評価はとても高いのですが、自分では納得していない様子です。
ある時、さびれた写真館を営む鮫島(平泉成)の撮影した一枚の写真に心奪われ、
華々しいキャリアを捨てて、鮫島に弟子入りすることにします。
太一は他人に関心を持たず、淡々と写真をとります。
だから人物を撮るのは苦手。
そんな彼が、写真館を訪れる客1人1人と対話し、
被写体と深く関わっていく鮫島の撮影スタイルに
気づきを得ていきます。
太一には子供の頃見て忘れられない写真がありました。
満開の桜の木の下にたたずむ後ろ姿の女性。
その時、太一には美しい音楽が流れてくるのが聞こえたのです。
誰が撮ったのかも分からない、展覧会で見たその写真が、
彼がカメラマンを目指したきっかけなのでした。
音楽が流れる写真。
太一はそれを目指していたのですが、
自分の撮る写真から音楽が聞こえてきたことはない。
子どもの頃から両親にまともに愛されたことがないと思っている太一は、
自分の生い立ちのせいで、そんな写真を撮ることができないのか、
とも思うのです。
また、鮫島夫妻に温かく迎えられた太一ですが、
実はこの写真館を本来継ぐべきひとり息子は
とうに家を出て、疎遠になっている。
こちらの鮫島と息子の確執も又、問題なのでした。
いずれにしても、対話の不足が根底にあるのです。
ゆっくりと本当の気持ちを話し合うこと。
そうして、ほどけていくものが確かにある。
太一役の佐野晶哉さんは、えーと、“Aえ!group”のメンバーですか。
なかなかいい感じです。
<WOWOW視聴にて>
「明日を綴る写真館」
2024年/日本/104分
監督:秋山純
原作:あるた梨沙
脚本:中井由梨子
出演:平泉成、佐野晶哉、嘉島陸、咲貴、黒木瞳、市毛良枝
家族の対話不足度★★★★☆
満足度★★★☆☆