映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕たちのラストステージ

2019年06月07日 | 映画(は行)

伝説的お笑いコンビの物語

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ハリウッドの映画創成期を支えたアメリカの伝説的お笑いコンビ
「ローレル&ハーディ」の晩年を描きます。

ストーリーは1937年、コメディ界の頂点に立っている二人のシーンから。
そしてすぐにその後1950年代に舞台を移します。
その時はすでに彼らの人気も下火。
起死回生をかけて彼らがイギリス巡業に出るのです。
人々は皆彼らのことを知って入るのですが
「もう引退したはず・・・」と言われてしまいます。
客席もスカスカ。
新たな映画出演を目指して頑張ろうとする二人ですが・・・。

まだテレビのない当時、彼らの活躍の場は生の舞台と、そして映画。
結局100本以上の作品に出演したそうで、その映画の力は大きいですね。
ステージで見る人数は限られるけれども、映画は世界中の人が見ることができる。
だからこそ、英国でもアイルランドでも、彼らを知らない人はいない。



作中でも見ることのできるコントが、実によくできています。
実際に行われていたものを再現したそうなのですが、
ボケとツッコミがあって、今でも十分以上に面白い。
当時、日本では二人のことを「極楽コンビ」と呼んでいて、やはり人気があったそうです。



オープニング、楽屋から出たスタンとオリバーがハリウッドのスタジオの区画を横切り、
ハル・ローチと口論を始めるまで6分間ノーカットのシーンがなんとも素敵なのです。
映画のカット割やカメラワークのことなどふだんあまり気にしていない私でも、
ここのシーンの特別さはよくわかりました。
カメラは話をしながら歩いている二人をずっと捉えているわけですが、
もちろん背景もすべて映り込みます。
スタジオの様々なセットや大道具、
そしていろいろな格好をして行き交う出演者や働くスタッフたち。
すべてが息づいていて、まさに映画の創成期。
こんな雰囲気を懐かしむことができる人々は、
すでに他界しているか、かなりのご高齢だろうとは思いますが、
それを知らない世代でも十分に楽めました。



楽しいコントを繰り広げる二人が、必ずしも仲が良いとは限らない。
この二人も実のところそうウマが合うというわけでもなさそうです。
けれど、長くコンビをともにした二人は、互いの思考や呼吸をよく知っている。
実は親友のような存在になっているのだということに、
一番気づかないのが本人たちなのかも知れません。

<シアターキノにて>
「僕たちのラストステージ」
2018年/イギリス・カナダ・アメリカ/98分
監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーブ・クーガン、ジョン・C・ライリー、ニナ・アリアンダ、シャーリー・ヘンダーソン、ダニー・ヒューストン
「古きよき時代」の表現度★★★★☆
友情度★★★★☆
満足度★★★.5