映画と本の『たんぽぽ館』

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「坂の上の雲 三」司馬遼太郎

2019年06月01日 | 本(その他)

日露戦争に突入

坂の上の雲 三 新装版
司馬 遼太郎
文藝春秋

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旅順の港とその大要塞は、日本の陸海軍にとっての最大の痛点であり、ありつづけている。
―日清戦争から10年後の明治37年(1904)2月10日、日露戦争開戦。
軍事力も財政力もロシアに劣る日本は、戦局の長期化を避けたい。
しかし、満州を主戦場とする陸軍にとっても、一日も早く制海権を握りたい海軍にとっても、
旅順の大要塞が大きく立ち塞がった。
「日本人とは何か」を問う畢生の大作。

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いよいよ本巻、日露戦争突入です。
戦闘態勢に突入はしたものの、日本の陸海軍は、旅順の港と要塞を攻めあぐむ・・・。
様々な局面から日本軍の日露戦争の動きを検証していきます。
・・・ということから、ここでは秋山好古・真之兄弟の個人的動きはさほど語られません。
それで実のところ私の興味からは大きくそれてしまい、
読むスピードががっくり落ちました・・・。
そもそも、戦争の作戦だの陣営だのの話にはさほど興味がない、
というか読んでもあまりピンとこない。
多分殿方はこういうの好きなんだろうなあ・・・などと思いつつ・・・。


それでも、この戦争で日本軍の非常にまずかった部分は押さえたつもり。
予算不足からもあるのでしょうけれど、
食糧や武器など、とにかく物資の補給が乏しかった。
「補給の欠乏は、戦闘の勇敢さを持ってカバーせよ」
と本気で思われていたようです。
こういう精神論、馬鹿げていますよね。
ただしこれは陸軍の話。
海軍はさほどではなかったとのこと。
砲弾などはそもそも補給したくとも、
国内での生産量そのものがあまりにも少ないという事情もあったようです。


そしてもう一つの問題は、司令官クラスに、無能な人が多かった・・・。
というのも当時戊辰戦争の生き残り、
長州、薩摩出身というだけで能力と関係なく大きな役についた人が多かった
ということなのです。
そんなわけなので、本部からの司令が全く無視されてみたり、
多大な犠牲者を出してもなお頑迷に同じやり方を続けるだけ・・・
というような悲惨な状況を生んだ・・・と。
ははあ・・・、でもこれは今でもありそうなことですね。
全く無能な人が政治家になったり・・・。

とにかく著者は、時間の経過をときに前後したり、
同じ内容を別の立場から繰り返してみたり、
膨大な資料からこの本を書いているのがよくわかります。
頭が下がります。
それにしても日本はよくぞこんなことで日露戦争を勝ったものだと思うわけですが、
それについてはまた続巻で描かれていくことでしょう。

図書館蔵書にて
「坂の上の雲 三」司馬遼太郎 文藝春秋
満足度★★★☆☆