映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

黒いオルフェ

2019年03月10日 | 映画(か行)

今も斬新な名作

* * * * * * * * * *

1959年。かなり年代物の作品です。
しかしこの内容は今見ても斬新に思えました。

 

田舎から従姉妹セラフィーヌを訪ね、リオにやってきた少女ユリディス。
リオの街は明日のカーニバルを前に、すでに人々が踊りだし喧騒に満ちています。
ユリディスはセラフィーヌの隣人であるオルフェと出会い、恋に落ちます。
しかしオルフェはモテまくりの色男で、彼を慕う女性が山ほどいます。
特に婚約者をきどるミラはユリディスに嫉妬の炎を燃やします。
さてところで、ユリディスは彼女を追う謎の男から逃げてリオへやって来たのですが、
この地までその男が彼女を追ってきていました。
いよいよカーニバルの夜、謎の男の影がユリディスに迫る・・・。

オルフェとユリディス。
ギリシャ神話から由来した物語なのですね。
ユリディスを追う謎の男というのは、終始仮面をかぶっていて、素顔は表しません。
つまりこれは単にストーカーではなくて(当時はストーカーなんて言葉もなかったですね)、
死や病苦の災いそのものを象徴しているのでしょう。
人々が激しいリズムを刻み踊り狂うカーニバルの夜に、襲いかかる死神。
何という斬新なイメージの世界。
そして、ギリシャ神話にならってユリディスは命を失い、
オルフェが黄泉の国へ彼女を探しに行く・・・という運びになっていきます。
そこで彼は、「決して振り返ってはいけない」と言われますが・・・。

カーニバルのために有り金をはたいて衣装を買ったり、
少しでもリズムを刻むものがあれば集まって踊りだす。
リオの人々の貧しいけれども生命力に満ちた有様が描かれていて素敵です。
オルフェとユリディスに味方しようとする悪ガキたちもまた、元気で頼もしい。
土地の持つエネルギーと、斬新な着想がこの上なくマッチして、
素晴らしい作品になっていると感じました。
こうしてみると確かに映画の技術的な面は信じられないほどに進歩しましたが、
映画づくりの情熱は変わらないものですね。

黒いオルフェ [HDマスター] [DVD]
ブレノ・メロ,マルペッサ・ドーン,ルールデス・デ・オリヴェイラ,レア・ガルシア
IVC,Ltd.(VC)(D)

<WOWOW視聴にて>
「黒いオルフェ」
1959年/フランス/
監督:マルセル・カミュ
出演:ブレノ・メロ、マルベッサ・ドーン、ルールディス・デ・オリベイラ、レア・ガルシア、アデマール・ダ・シルバ
生命力と死の対比★★★★★
満足度★★★★☆