孤高の犬
* * * * * * * * * *
太刀川要が深夜に遭遇した異様な大きさの黒犬は、
半死半生の状態だった。
動物病院へ駆け込むと、不可解なことに判別不能の犬種で獣医も戸惑うばかり。
やがて始まった共同生活は、かたくなに孤独を貫く男の見慣れた風景を変えていく。
そして湧き起こる、ある疑惑の真相とは―。
ジョンの眼差しを通じて見つめる人の営み、滑稽さ、哀しみ。
淡く胸に迫る大人のファンタジー。
* * * * * * * * * *
本作はややジャンル分けに困りますが、
まあ、やはりファンタジーなのでしょうね。
太刀川は深夜半死半生の巨大な黒犬に遭遇し、
動物病院に駆け込むことになる。
犬種も、飼い犬か否かもわからないまま、自宅で療養させることになります。
非常に無愛想な犬ですが、状況の理解は抜群で、
本来獰猛そうに見えるのですが至っておとなしい。
この犬のいる状況にようやく慣れてきた頃、
太刀川は少し古い週刊誌である記事を見て愕然とします。
高校生3人が巨大な犬に襲われ、2人が死亡。
もう一人が重傷を負ったという。
その犬は現在逃走中。
場所はまさしく太刀川がこの犬を拾った辺りだったのです・・・。
数百年を神社の境内で過ごした狛犬が、ある事件を契機に実体化。
だからこそファンタジーなのですが、
時折この犬自身が人間を観察した独白が入っていまして、
そこがユニークです。
独身の太刀川のこと。
付き合っている女性のこと。
そこはちょっぴりユーモラスですが、
それにしてもこの犬の絶対的な孤独はまた、心をひんやりさせます。
太刀川自身のこれまでのことにも触れられていますが、
言ってみれば彼も孤独な一匹狼。
どこか似たような魂が引き寄せ合ったのかもしれません。
太刀川は付き合った女性は多いですが、結婚は考えられなかった。
けれどこの犬と彼女と公園へ散歩に行き、木陰でくつろぐ時・・・
むくむくと結婚したいという気持ちが湧き上がってきます。
本当にこんな日々がずっと続けば良かったのに・・・。
本作は犬好きの方にはたまりませんよ。
大型の無愛想な犬。
一見怖いくらいなのですが、でもおとなしくて頭がいい。
こんな犬と暮らしてみたいなあ・・・と思っていまします。
犬を飼ったことのある人でなければ描けない描写多々。
「狛犬ジョンの軌跡」垣根涼介 光文社文庫
満足度★★★★☆
狛犬ジョンの軌跡 (光文社文庫) | |
垣根 涼介 | |
光文社 |
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太刀川要が深夜に遭遇した異様な大きさの黒犬は、
半死半生の状態だった。
動物病院へ駆け込むと、不可解なことに判別不能の犬種で獣医も戸惑うばかり。
やがて始まった共同生活は、かたくなに孤独を貫く男の見慣れた風景を変えていく。
そして湧き起こる、ある疑惑の真相とは―。
ジョンの眼差しを通じて見つめる人の営み、滑稽さ、哀しみ。
淡く胸に迫る大人のファンタジー。
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本作はややジャンル分けに困りますが、
まあ、やはりファンタジーなのでしょうね。
太刀川は深夜半死半生の巨大な黒犬に遭遇し、
動物病院に駆け込むことになる。
犬種も、飼い犬か否かもわからないまま、自宅で療養させることになります。
非常に無愛想な犬ですが、状況の理解は抜群で、
本来獰猛そうに見えるのですが至っておとなしい。
この犬のいる状況にようやく慣れてきた頃、
太刀川は少し古い週刊誌である記事を見て愕然とします。
高校生3人が巨大な犬に襲われ、2人が死亡。
もう一人が重傷を負ったという。
その犬は現在逃走中。
場所はまさしく太刀川がこの犬を拾った辺りだったのです・・・。
数百年を神社の境内で過ごした狛犬が、ある事件を契機に実体化。
だからこそファンタジーなのですが、
時折この犬自身が人間を観察した独白が入っていまして、
そこがユニークです。
独身の太刀川のこと。
付き合っている女性のこと。
そこはちょっぴりユーモラスですが、
それにしてもこの犬の絶対的な孤独はまた、心をひんやりさせます。
太刀川自身のこれまでのことにも触れられていますが、
言ってみれば彼も孤独な一匹狼。
どこか似たような魂が引き寄せ合ったのかもしれません。
太刀川は付き合った女性は多いですが、結婚は考えられなかった。
けれどこの犬と彼女と公園へ散歩に行き、木陰でくつろぐ時・・・
むくむくと結婚したいという気持ちが湧き上がってきます。
本当にこんな日々がずっと続けば良かったのに・・・。
本作は犬好きの方にはたまりませんよ。
大型の無愛想な犬。
一見怖いくらいなのですが、でもおとなしくて頭がいい。
こんな犬と暮らしてみたいなあ・・・と思っていまします。
犬を飼ったことのある人でなければ描けない描写多々。
「狛犬ジョンの軌跡」垣根涼介 光文社文庫
満足度★★★★☆