映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あなたを抱きしめる日まで

2015年08月10日 | 映画(あ行)
真実は小説よりも・・・



* * * * * * * * * *

実話を元にした物語。
1952年アイルランド。
18歳で未婚の母となったフィロミナは、
親から強制的に修道院に入れられ、
3歳になった息子のアンソニーは養子に出され、離れ離れになってしまいます。



100年も昔の話ではないのですが、カトリックでは私生児を生むことが罪。
まるで罪人のように修道院に閉じ込められて、監視され、強制労働。
今では考えられませんが・・・。
そのためフェロミナはその後修道院を出て別の人生を歩むのですが、
そのことはずっと胸の奥に秘めていたのです。

さて50年後。
フィロミナ(ジュディ・デンチ)は老境に入り、
幼いころに別れたきりの息子のことが気になって仕方ありません。
あれからどうなったのだろう。
元気で暮らしているのだろうか。
少しは生みの母のことを覚えていてくれるだろうか・・・。
彼女は初めてこのことを自分の娘に打ち明けます。
そして、ジャーナリスト、マーティン・シックススミス(スティーブ・クーガン)が
息子探しの手助けをすることになるのです。



フィロミナとマーティンはまず、あの忌まわしい記憶のある修道院を訪ねるのですが、
昔の記録は火事で消失した、と素っ気ない。
しかし、移民の記録から、なんと修道院の子供たちはアメリカへ養子として
お金で売られていたことが判明。
二人は、今度ははるばるアメリカへ渡ることに。
そうしてたどり着いた真実とは・・・!
成長したアンソニーの人物像というのが実に意外で、
また、その運命が劇的でもあります。
そして、またラストで更なる驚きに包まれることになる・・・。



いやはや、“事実”というのはなんと不思議で重いのか・・と思います。
宗教があるがゆえにフィロミナは苦しみを受けたのですが、
でもなおかつ信仰を持ち続けている。
こうして強く深い信仰心は、今の日本人にはちょっと理解し難い部分もありますね。
しかし最後の最後に辿り着いた真相には
やはりどこか神の配財を思わせるところもあり・・・。
素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
一見の価値ありです。



あなたを抱きしめる日まで [DVD]
ジュディ・デンチ,スティーヴ・クーガン
Happinet(SB)(D)


「あなたを抱きしめる日まで」
2013年/イギリス・アメリカ・フランス/98分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチ、スティーブ・クーガン、ソフィ・ケネディ・クラーク、アンナ・マックスウェル・マーティン、ミシェル・フェアリー

隠された歴史度★★★★☆
満足度★★★★☆