映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

想いのこし

2015年08月14日 | 映画(あ行)
“つながっていた”ことを確かめるために



* * * * * * * * * *

毎日を適当に楽しく暮らしていたガジロウ(岡田将生)は、
彼が車道に飛び出したことで、交通事故に巻き込まれてしまいます。
彼自身は奇跡的に無傷だったものの、4人が死亡。
しかし、何かしらこの世に想いのこしのあったこの4人は、
この地上にとどまっています。
他の人々には見えない、触れない、声も聞こえない。
…ところが何故かガジロウにだけは見えて、触れるのでした!!
彼らが残した貯金をもらうことで、
ガジロウは彼らの想いのこしを果たす手助けをすることに・・・。



結婚を目前に控えていたルカ(木南晴夏)、

野球部のマネージャーをしていたケイ(松井愛莉)、

退職した消防のことが気になるジョニー(鹿賀丈史)、

そして小学生の息子を一人残したユウコ(広末涼子)。


やはり、一人息子を残したユウコのところのシーンには泣かされます。
この息子・幸太郎は、
母の生前から何かちょっと心を閉ざしているようなところが感じられるのです。
母の葬儀でも涙も見せない。
父は早くに亡くなっているので身寄りのない幸太郎は施設へ入るべきなのですが、
本人が拒否して、たった一人で暮らしているのです。
一体なぜ・・・?
そんな息子を見守るだけで、何もすることができない母の虚しさ。
けれどここの広末涼子はことさら悲嘆に暮れた表情を見せません。
どこか諦めきったように淡々としている。
いくら泣き叫んだところでもうどうにでもなるわけでなし。
見守ることだけに徹すると悲壮な決意をしたようでもある。
そしてそれはまた、この子ならきっと大丈夫、
ちゃんと生きていけると信じているようでもある。
彼女がオーバーに悲しみの表情を見せないことが、
何故か余計に見ている私の涙を誘います。
「この子を何とかして」と頼んだガジロウは、
ちっとも頼りにならなさそうだし・・・。
けれど、ちゃらんぽらんだったガジロウが、
彼ら一人一人の想いを叶えて行くうちに次第に成長していくわけで・・・。
次第に変わっていくガジロウの心もまた、見どころです。



結局彼ら4人は何かを成し遂げたかったというわけではなくて、
自分が誰かとつながっていたこと、
これからもその誰かの中に残ることを確認したかったのではないでしょうか。
ユウコも、いまいち息子と正面から向き合えたように思えていなかったから、
息子の将来が心配というよりも、
息子にとっての自分の位置を確かめたかったように思います。
何にしても切ない物語でした・・・。

想いのこし [DVD]
岡田将生,広末涼子
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「想いのこし」
2014年/日本/118分
監督:平川雄一朗
原作:岡本貴也
出演:岡田将生、広末涼子、木南晴夏、松井愛莉、巨勢竜也、鹿賀丈史

切なさ★★★★☆
満足度★★★★☆