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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「誰がカインを殺したか」 篠田真由美

2015年07月09日 | 本(ミステリ)
京介オジサンと共に・・・

誰がカインを殺したか 桜井京介returns (講談社ノベルス)
篠田 真由美
講談社


* * * * * * * * * *

―俺は、カインだったんだ―
深夜、謎めいた電話を受けた少年が貴船山中の廃墟で見出したのは、
ふたりの兄たちの無惨な死体だった。
アベルを殺したのがカインなら、カインを殺したのは誰なのか。
天才建築家・橘霆の胸中に眠る愛の記憶。
あえかなる水琴窟の音色の彼方に桜井京介がたどり着いた情景とは。
旧約聖書に書かれた人類最古の殺人をモチーフに描く表題作(「誰がカインを殺したか」)ほか、
慈しみに溢れた傑作短編4編を収録。


* * * * * * * * * *

40代、オジサンの桜井京介シリーズ第2弾。
前巻「さくらゆき」では、
ストーリーそっちのけでオジサン京介評をしてしまいました。
そんな中で登場する庄司ゆきのこと。

「本作で、女はあくまでも脇役。
あまり目立つと返って嫌われますよ・・・。」

などと私は書いて(書いてしまって)いたのですが、
その彼女がやはり本巻にも登場します。
でも少し印象が変わってきた。
まだ中学生の彼女は、全然「女」ではないんですね。
いわばこれは大人になってしまった"蒼"の身代わりか。
生きる上では否応なく他者と関わっていかなくてはならない。
ずっと自分の殻にこもっている方が楽ではあるのだけれど。
でもいろいろな人との関わりの中で、
自分の中に「気づき」があったり、
また、大切な友ができたりもする。
ゆきは、そういう成長途上にあるわけです。
特に本巻ラストの「コックリさんと喫煙と十四歳の研究」は、
なかなか興味深かった。
青少年が時々夢中になってしまうコックリさんのこと。
女友達との厄介な付き合いのこと。
毒を飲む賭けのようなもの。
しなやかに強く、そしてまっすぐに伸びていこうとする彼女が
ちょっぴり眩しい。
悪くない感じです。
桜井京介オジサンと共に見守って行きたくなってきました。


そうそう、本巻には待望の深春氏の子どもたちも登場します。
やっぱりやめられないわ~。


「誰がカインを殺したか」篠田真由美 講談社ノベルス
満足度★★★.5