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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

2014年06月09日 | 映画(あ行)
ギターとネコを抱えて彷徨う男



* * * * * * * * * *

コーエン兄弟が2013年第66回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。


1960年代ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジ。
売れないフォークシンガー、ルーウィン・デイヴィスの一週間を描いたストーリーです。
この人物は、ボブ・ディランに影響を与えたという実在のミュージシャン、
デイブ・バン・ロンクをモデルにしています。



冬。
ライブハウスで歌い、そこそこ人気はあるものの、
レコードは売れず、友人の家を泊まり歩くその日暮らしのルーウィン(オスカー・アイザック)。
寒いのにコートも買えません。
戯れに手を出した友人ジーン(キャリー・マリガン)に妊娠を告げられ、
その処置のお金が必要になる・・・。
今夜の寝床、当面のお生活費、そして将来の生活の建て方を探し求めて
ルーウィンは彷徨うのです。
なんと、おかしな二人連れと車でシカゴまでも。
ギターと何故かネコを抱えて、
行き詰まった男の悲哀に満ちた一週間。
しかしそこはコーエン兄弟なので、
そこはかとないユーモアも漂い、いい味が出ています。



そしてなんといっても、ネコ。
癒されますねえ。
本作にこのネコがいなければ単なるビンボー男の物語だ・・・。
車に取り残される時のネコの表情がなんともいえない。

「イヤ、ちょっとアンタ、ウソでしょ。
アタシを見捨てるつもり? 
よしてよー。ちょっと~。」

と、まさに聞こえる感じでした。
ネコが登場する作品は多々ありますが、
こんなにネコの柔らかな肌合いまでもが感じられるものは珍しい。
オスカー・アイザックの素晴らしい歌声と共に、
ネコにも惚れ惚れしてしまった、素敵な作品。

 

ラストで、ルーウィンの後ろで歌い始めたのが、ボブ・ディランという想定のようですが、
スターダムにのし上がるのはこんな風に、ほんの一握り。
多くはルーウィンのように実力はありながら、あとひと押しの「何か」が足らず、
夢を抱きながら叶わず、もがき続けるのでしょう。
今も、昔も。
そんな全ての人に、本作のネコのような癒やしがありますように。



キャリー・マリガン演じるところのジーンが良かったなあ。
思い切りハスッパで、口汚く、威勢がいい。
それでも、どこか憎めない。
ナイスです。



「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」
2013年/アメリカ/104分
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジョン・グッドマン、ギャレット・ヘドランド、ジャスティン・ティンバーレイク

音楽性★★★★★
惨め度★★★★☆
満足度★★★★★