映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

その土曜日、7時58分

2009年09月01日 | 映画(さ行)
その土曜日、7時58分 コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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破滅に向かって転がりだす男たち

* * * * * * * *

この作品は、まず決定的事件のシーンから始まって、
時間が前後しながらその抜き差しならない状況を描写していきます。

中心となるのはまず会計士のアンディ。
彼は自らの不正の発覚におびえ、
何とかお金を工面して穴を埋めたいと思っている。
そこで弟ハンクに声を掛けるのです。
両親の宝石店に強盗に入るようにと。
店は保険金が入るから大丈夫。
奪った宝石を売りさばいて分けよう・・・と。

ハンクは自分だけで強盗をするのが怖くて、知人に実行を頼みます。
土曜日朝、7時58分の出来事。
ところが悪い偶然が重なって、結局彼らの母親が死んでしまう。
この事件を振り出しに、
次々に状況は悪化していき、
もがけばもがくほど抜き差しならない状況に陥ってゆく二人。
その焦燥感が、ひしひしと伝わってきます。

この事件で、彼ら家族の心の闇の部分が明るみに出てくるのですが、
それはこの事件が起きたからではない。
もともと巣くっていた病巣が、
これをきっかけに吹き出してきただけにすぎないのです。

アンディはずっと、家族の中で弟ばかりがかわいがられていると思っています。
だから父親を憎んでいる。
両親の宝石店を標的にしたのも、結局はこういう心理が働いたのでしょう。
そして、弟を巻き込んだことも。
更にまた、彼の妻が弟とできていると知った時・・・、
周りの誰も彼もが自分ではなく弟を選ぶ、
そういう絶望に打ちのめされるのです。

ハンクは逆に、甘やかされすぎたかのようです。
弱気で甲斐性がない。
別れた妻からは絶えず娘の養育費を催促され、ののしられる。

家族間のボタンの掛け違えが、
もうそれぞれ独立し立派な大人になったはずの今になって
一気に結果となって吹き出してくる。
でも、こういう家族の関係って、
実はどこにでもありそうな話ではないですか・・・。
いつどこで吹き出してもおかしくはない
・・・そういう怖さ、虚しさがずっしりと胸に応えます。
緊迫感、閉塞感・・・、重厚な作品です。

2007年/アメリカ・イギリス/117分

監督:シドニー・ルメット
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、アルバート・フィニー



Before the Devil Knows You're Dead - Japanese trailer