映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「パンツの面目ふんどしの沽券」 米原万里

2008年05月03日 | 本(エッセイ)
「パンツの面目ふんどしの沽券」 米原万里 ちくま書房

ユーモアにあふれた米原万理さんのエッセイはとても好きで、何冊か読んでいます。
急逝されてからもう一年以上になりますか・・・。
そのニュースを聞いた時にはとても残念な気がしたものですが。

さて、今回はもちろん、この、なにやら怪しげな題名に、思わず手に取ってしまったもの。
これは、一篇のエッセイがこの題名、というのではなくて、本当に丸々一冊、パンツとか、ふんどしの話なんですよ~。
しかし、あなどるなかれ、これってすごい。
彼女は翻訳家(ロシア語)なのでありますが、
この本は下手な学者も真っ青という感じの、すばらしい文化人類学の本になっています。
古今東西の「下ばき」について考察してある。
何しろ、おおっぴらに語られることのない内容だけに、へ~、とうならされる、まさにトリビアの宝庫でもありますし、
国民性を語る良い材料でもあったりして、非情に奥が深い。

たとえば、十字架にかけられた、キリスト。
絵画では良く見ますが、彼のはいているのは、何ぞや?
・・・パンツ?ふんどし?腰巻?
当時のその近辺の服装史などから、まじめに考察がなされます。
また、アダムとイブが股間を隠したというイチジクの葉。
これも絵画では良くあらわされているけれども、
一枚の葉が、なぜか落ちずに股間にはりついている。
これはなんと、彼女が幼稚園児のときの疑問で、
園児たちはみんなで、糊やらセメダインやら、セロテープで試してみたのだという。
この、自ら学ぶ姿勢が、大切なんですよね!!。
栴檀は双葉よりかんばし、と、これを実証しております。
これには実はちゃんと正解もあって、まあ、それは読んでご確認ください・・・。
(しかし、正解はぜんぜんつまらない。)

また、なかなか信じがたい、こんな話もあるのですが・・・、
ヨーロッパの男性は、かつて、下ばきなど、身に付けていなかったらしい、というのです。
ワイシャツの前身ごろの下端と後ろ身ごろの下端で股を覆う。
だから、今もワイシャツは必要以上に長くて、側面にスリットが入っている。
英国の正装として男性が着用する、チェックのスカート。
あの下は、下ばきをはかないのが正式なので、すっぽんぽんだとか・・・。
いやいや、退屈しません。
彼女は単にウワサでなく、きちんとそれぞれの原文などで確認し考察しているのです。
彼女が言うとうそに聞こえなくもないけど(!)、真実。
何事にも、好奇心をもって、あたるべし。

満足度★★★★★