映画と本の『たんぽぽ館』

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湖の女たち

2024年05月28日 | 映画(ま行)

世界は美しいのだろうか

* * * * * * * * * * * *

滋賀県、琵琶湖にほど近い介護施設で、100歳の老人が何者かに殺害されます。

捜査に当たった西湖署の若手刑事・濱中(福士蒼汰)とベテラン刑事伊佐(浅野忠信)は、
施設関係者の中から容疑者・松本(財前直見)に狙いを付けて、
執拗に取り調べを行います。

そんな中、濱中は捜査で出会った介護士・豊田佳代(松本まりか)に対して、
ゆがんだ支配欲を抱くように・・・。

また一方、事件を追う週刊誌記者・池田(福地桃子)は、
署が隠蔽してきた薬害事件を追い始めます。

本作、旧満州での731部隊のこと、薬害エイズ事件、人工呼吸器事件、障害者施設殺傷事件など
過去実際にあった事件のこと、そしてほとんど警察の故意と思える冤罪のことを絡めつつ
描かれていますが、なんといってもショッキングなのは濱中と佳代の関係。

 

それはまず冒頭で指し示されるのですが、夜明け前の早朝、
濱中は湖に釣りに出かけ、
佳代は勤務の合間に湖畔へ出て車の中で自慰を始めるのです。
それを濱中が見てしまう。

次に会うのは、施設の殺人事件の関係者への聞き取りの時。
濱中は豊田をあの時の女だとすぐに気づき、
その後、密かに彼女を呼び出してはやたら高圧的な態度に出るのです。

警察官としては普通に正義感も持つ濱中。
どうも松本は犯人とは思えないのですが、
先輩の伊佐は、ただ誰でも良いから犯人を上げたいと思っており(つまりそれが警察の総意)、
それに躊躇する濱中を罵倒する有様・・・。
濱中のどうにもならない上下関係のストレスの矛先は、佳代に向けられます。

不毛でアブノーマルな2人の行為。
しかし佳代はそれで燃えている・・・。

いやあ・・・息をのんでしまいます。
こんなダークな福士蒼汰さんを見たことがないし、
松本まりかさんは「向こうの果て」というドラマですごいとは思っていましたが、
こんな役までもこなしてしまうなんて・・・!

そしてまた、この本筋の殺人事件とは少し離れた場にいるように思われた
週刊誌記者の所から真相が浮かび上がってくるのも、見事でした。

作中で「世界は美しいのだろうか」という問いが何度か投げかけられます。

どこもかしこもイヤな事件だらけ。
美しいものなんかどこにもないと思いたくなるけれど・・・
でも不思議と視聴後感はそんなに悪くない。
したたかに生きようとする湖の女たちは、
琵琶湖の夜明けに馴染んで十分に美しいかも・・・。

 

<TOHOシネマズ札幌にて>

「湖の女たち」

2024年/日本/141分

監督・脚本:大森立嗣

原作:吉田修一

出演:福士蒼汰、松本まりか、福地桃子、浅野忠信、財前直見

 

アブノーマル度★★★★☆

満足度★★★★☆



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