映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

暗い日曜日

2008年05月02日 | 映画(か行)

(DVD)

甘く切ない「暗い日曜日」の曲が胸に残ります。
時は1930年代末。
当時実際にこの曲を聞きながらの自殺者が続出。
イギリスでは、放送禁止にまでなったという。
でも、なんだかわかるような気がしてしまいました。
この曲には、けだるくそして甘く・・・、何か不思議な魅力がありますね。

ここに登場するのは、イロナという美しい女性。
彼女はレストランのオーナーであるラズロの恋人。
そして、このレストランのピアニストであり、この曲の作曲者であるアンドラーシュ。
この3人が、3人のまま愛人関係を続けていくことになる。
男性同士の間にもある不思議な友情・・・。
猟奇的な関係ではありながら、なぜかそれが美しく、貴重なもののように思えてしまうのは、この、不思議なイロナという女性の魅力のおかげのようです。
男性二人のどちらも切り捨てられない情熱。魔性。
でありながら、不思議な清楚感さえ漂う。
そして、女性から見ても美しい・・・。
「暗い日曜日」は、まさに、彼女のためにある曲なのです。

それと私が感動してしまったのは、このラズロっていうのが、泣きたくなるほどにいいヒトなんです・・・。
勝手にイロナにいいよっていたいけ好かないドイツ人の命を救う。
恋仇のアンドラーシュにも親身に力になる・・・。
ところで、彼はユダヤ人。
運命の皮肉、彼が命を救ったドイツ人ハンスは、やがて、ナチスの幹部となってブダペストに舞い戻ってくる。
とうぜんハンスは恩義があるので、ラズロを優遇するのですが、
案の定、最後の最後でとんでもない裏切りをする。
ドラマなんですねえ・・・。
この曲、この時代背景、そして、この微妙な男女の愛。
見事にマッチしている。
時代が、ただの舞台背景なのでなはいのです。
この時代だから成り立つストーリー。

そしてまた、最後の最後にある仕掛け。

これは極めて上質でありながら、観客へのサービスをも忘れない、まさに「ドラマ」の真髄であります。

1999/ドイツ=ハンガリー/115分
監督:ロルフ・シューベル
出演:エリカ・マロージャン、ステファノ・ディオニジ、ヨアヒム・クロール、ベン・ベッカー